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 しばらく懐かしい間取りを楽しんだ後、3階に行くことになった。

 立ちっぱなしだから、ちょっと疲れてきた。いったいどこまで登るんだろう。



 ミネオさんに聞いたら、あー兄ちゃんが作ったのは10階までで、緊急時には当時里にいたエルフ達が全員避難できるように作ったそうだ。

 まさか世界樹が避難場所とは思わなかった。



 10階って、全部のぼるの?足が持つかな。

 そんな心配をしてると、階段の上に(さく)のようなものが見えてきた。



「柵?ですか?」



「そうだ。里の子供たちを預かっていたからな。落ちないように柵をつけた。」



 柵を開けながらミネオさんが教えてくれる。

 転落防止の柵ですか。完全に託児所だな。



 でも、柵の向こうに草のようなのが見えるんだけど?

 あれって…床からじかに生えてるよね?



「草が生えてる…。」



「異世界にはこんな技術もあるのか。変わった色の草だな。」



 階段を上った先には一面の芝生が広がっていた。

 懐かしい黄緑の芝生だ。クルビスさんには違和感があったみたいで、首を傾げている。



 こっちの芝生は青緑だからなあ。

 微妙な違いがまた違和感を与えるんだよねえ。



「これはアタルの魔術で作ったものだ。子供が転んでケガをしないように柔らかい草を生やした。『カーペット』とアタルは呼んでいた。」



 成る程。この草もチートの産物かあ。

 触ってみると柔らかくてふわふわしてる。これなら小さな子供が転んでも大丈夫そうだ。



 本当に託児所してたんだなあ。あー兄ちゃん、子供と遊ぶの好きだから。

 おもちゃとか作ってないのかな?



 私とクルビスさんが芝生のふかふかさを堪能していると、ミネオさんが隅から何か取り出してきた。

 丸い球体で白地にところどころ黒い部分がある。



「サッカーボールまであるんですか。」



「やはり知ってたか。」



「変わった模様のボールだな。」



 サッカーボールをミネオさんから受け取ると、クルビスさんが不思議そうに覗き込んでくる。

 試しに軽く蹴ってみた。子供用だから軽い。



「故郷ではこうやって蹴って遊ぶんです。ホントは外で遊ぶもので、手は使っちゃだめなんですよ。」



「ボールがどこかにいかないか?屋根の上とか。」



 私が壁で跳ね返ってきたボールを拾うと、クルビスさんが妙にずれた質問をしてくる。

 屋根まで蹴り上ることなんてまず無いけどなあ。それともこっちの子の脚力じゃありえるのかな?



 クルビスさんの身体能力から考えるとありえそうだ。

 うーん。どうやって説明しようか。



「それを加減するのも遊びの内です。陣地を決めて遊ぶので、あまり強くは蹴れません。

 11でひとつのチームを作って、2つのチームで足を使ってボールを奪い合います。沢山の子が一度に遊べるので人気があるんですよ。」



「面白そうだな。」



 クルビスさんはサッカーに興味を持ったようだ。

 私からボールを借りて、軽く壁に蹴っては受けるのを繰り返す。



 上手いなあ。最初はあちこち行ってたけど、しばらくしたら同じ場所にだけボールを当てれるようになった。

 ボールも自分に跳ね返ってくるように調整して蹴ってる。コントロール抜群じゃない?



 そんな私たちのやりとりをミネオさんは黙って見守っていた。

 説明のときには頷いてたから、あー兄ちゃんはサッカーをエルフの子供たちに教えたんだろう。



「…アタルはこの家に来てからいろいろ作った。故郷の料理も下のキッチンでよく作ったし、ショーユやミソも作るようになった。

 どれも楽しくて美味しかった。…だが、ときどき寂しそうだった。

 それを見て長はアタルを返す方法を探し始めた。」



 クルビスさんがボールを蹴るのを見ながら、ぽつりぽつりとミネオさんがあー兄ちゃんのことを語ってくれる。

 ミネオさんの話は異世界でのあー兄ちゃんの様子がわかって面白い。

 


 メルバさんの話はどちらかというとあー兄ちゃんと何かを発明した話が多くて、他の異世界での様子はあまり話してくれない。

 決まって遠い目をするから何とも聞きづらいし、聞くのが怖いからだけど。



 まあ、それで興味深々で聞いてるんだけど、一番意外だったのは、あー兄ちゃんがホームシックになったみたいだってことだった。

 それを見てメルバさんは返そうと思ったみたいだけど、そんなにひどかったんだろうか。



 基本的に現実主義者だから、帰れないならそこで覚悟を決めてると思うんだけど。

 実家と同じ間取りで生活して恋しくなったのかな?

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