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 可哀そうにイグアナの一族の長の弟さんは顔色を悪くして小刻みに震えている。

 そりゃそうだよね。ドラゴンに匹敵するくらい、もしくは同等の黒の魔素持ちの脅しだもん。



 893の脅しより怖そうだ。やり過ぎないうちに止めとこう。

 クルビスさんの腕を取って魔素で宥め始める。



 圧力は半分くらいになった。

 もうちょっと抑えて下さいよ。まだ震えてるでしょう。



「どうか、それくらいで。…お嬢さんのしたことは犯罪です。それはきちんとわかってもらって下さい。」



 クルビスさんを魔素で宥めながらイグアナの長の弟さん…ううん、悪役令嬢のお父さんに声をかける。

 私としては自分のしたことをちゃんと認識して、彼女の言ったように「立場に見合った振る舞い」をしてくれれば文句は無い。



 甘いって言われそうだけど、彼女はまだ未成年だ。

 彼女からの悪意も最初は感じなかったくらいだし、掴みかかられた時も怖くはなかったしなあ。



 正直、スタグノ族の密談を聞いた時やクレイさんに連れて行かれそうになった時の方が怖かった。

 あれと比べたらいけない気がするけど、彼女が武器を出しさえしなければ不問にしてたくらいだ。



 まあ、その武器を持ってたっていうのが問題なんだけどね。

 それは親の教育の問題だろう。さすがにしかるよね?…ね?



「はい。己が何をしたのか、必ず理解させます。」



「それだけじゃねえ~。彼女自身に謝らせるのが先じゃない~?」



 緊張した場にのんきな声が紛れ込む。

 振り替えるとメルバさんが悪役令嬢を伴って階段の横に来ていた。



 そういえば、階段の奥って取調室兼独房みたいな部屋もあるんだっけ。行ったことないけど。

 どうやらメルバさんはそこから悪役令嬢を連れてきたらしい。



 彼女は下を向いて震えている。

 さっきの、いや、今も十分怖いクルビスさんの魔素に怯えているんだろう。



「あ~。クルビス君、もうちょっと魔素抑えてもらえる~?動けないみたい~。」



 メルバさんの言葉にクルビスさんがやっと息が出来るくらいに魔素を抑える。

 ホッとしながら悪役令嬢を見ると、何とか顔を上げられたようだった。



 メルバさんに促されて、そろそろと進み出る。

 そしてその場に膝をついて、謝罪の礼をした。



「…申し訳ありませんでした。今後二度とあのようなことはいたしません。…ごめんなさい。」



 小さくつぶやくような声で付け足された最後の言葉は彼女の本心からの者だった。

 泣いているような、怯えている魔素が伝わってくる。



 態度が違い過ぎるなあ。共鳴がすごいからってここまで変わる?

 そう思ってメルバさんを見ると、にっこりと笑い返された。ブルルっ。



 背筋に悪寒が走ったんですけど。

 何言ったんだろう。たまに思うけど、メルバさんって結構怖いタイプだよね?



「さっきの言葉も聞いていただろう。次は無い。俺の伴侶に手を出した者は消えてもらう。俺からは以上だ。…ハルカ、彼女は個立ち前だ。償いの機会を与えられる権利がある。だが、彼女のしたことは重罪だ。この場合、ハルカの意志が尊重される。」



 ええっ。専門のひとがやってくれるんじゃないの?

 そんな重たいこと…いや、当事者ですけどね。



「…この子はもうしないと思うよ~。ねえ?」



 メルバさんの言葉にコクコク頷く令嬢。もう悪役って感じじゃない。

 年頃になったばかりのお嬢さんだ。目もうるうるしてるし。



 まあ、私の心は決まってる。

 未成年相手に重罪を一生負わせようとは思ってませんよ。私も周りも無傷だし。



「私が望むのは、あなたが自分のしたことを犯罪だと理解し、もう二度と誰かを傷つけるようなことをしないこと。肉体的にも精神的にもです。…言葉も凶器と同じですから。あなたはイグアナの一族を代表する立場になる方です。ご自分の立場にふさわしい振る舞いをなさって下さい。」



 誠心誠意心を込めて伝える。

 彼女の振る舞いは一族の中でしか通じないものだ。



 将来一族をしょって立つひとがそれじゃあ不味いだろう。

 これからもイグアナの一族との付き合いは続いていくし、遺恨は残さない方向で、でも、しっかり見てますよってことも含めて伝える。



 それがわかったのか、イグアナのお嬢さんは今までで一番きれいな顔でしっかりと私を見て頷いた。

 …素直な子だっていうのは本当みたい。どうかいい方に変わって欲しいと願うばかりだ。

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