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 悪役令嬢たちをその場に残してリリィさんと医務局へ行くと、フェラリーデさんが心配そうに出迎えてくれた。

 どうやらアニスさんが私達と別れた後、イグアナの一族が来たことを知らせてくれていたらしい。



「大変でしたね。」



 フェラリーデさんが眉を下げて気遣ってくれる。ごほっ。

 その麗しいお顔にダメージを受けつつ、首を振って否定する。



 どうしてフェラリーデさんは憂い顔の方が色っぽいんだろう。

 麗しさが増してる気がする。



「い、いいえ。リリィさんが庇ってくださいましたし。あっ。リリィさん。リリィさんこそ大丈夫なんですかっ?何か手に持っていたんじゃ。」



「私は何とも。後ろも無事です。たとえ何か持ってたとしても、この隊服に傷をつけるなんて出来ませんよ。」



 悪役令嬢が何か持っていたのを思い出して、慌ててリリィさんに確認を取ると背中を見せて大丈夫だと答えてくれた。

 守備隊の隊服は特殊素材で出来ていて、ちょっとした刃物くらいなら通さないらしい。



 異世界すごい。地球でもありそうだけど、この隊服みたいに薄くて軽くはないだろう。

 シャンプーもどきやバスタオルでも思ったけど、便利なものがたくさんあるんだよね。しかもエコ。



「良かった。すごいんですね、その隊服。」



「長が作られた特別な生地を使っているのですよ。ああ。クルビスが来ましたね。」



 私が防刃隊服に感心していると、フェラリーデさんがクルビスさんの来訪を告げる。

 防刃の布はメルバさんの開発かあ。何でも作ってるなあ。



 元ネタはあー兄ちゃんかなあ?なんて思ってるとやや乱暴にノックがされる。



 カカカッ



「どうぞ。クルビス。」



「ハルカっ。…無事か。」



 入室の許可が出ると急いでクルビスさんが入ってくる。

 私の無事な姿を見て、ホッとして肩の力が抜けたらしく、ゆっくりした足取りで私の所に来た。



 無事を確かめるように頬を撫でられると、安堵の中に恐れが混じった魔素が感じ取れる。

 最近、こんなことばかりだから、気が気じゃなかっただろう。



 巻き込まれてばかりで申し訳ない。

 これから、やっかいごとに突っ込んでいくのはやめよう。反省。



「おー。無事みたいだな。良かった。良かった。ま、リリィが一緒なら無事だよな。なら、俺は捕まえたやつらに話聞きにいくわ。クルビスは会わねえ方がいいだろ。」



 クルビスさんの後ろからシードさんが顔を出す。

 私とクルビスさんの様子を見ると、そのままリリィさんの様子を見てお互いに笑っていた。



 信頼してるんだなあ。

 お互いがお互いの仕事と実力を良くわかってるって顔だ。



「そうですね。その方がいいでしょう。クルビス。この後、ハルカさんに着ける護衛の数を増やします。式まであと2日。まだ狙われる可能性はあります。」



「ああ。ハルカ。もう誰が来ても会わなくていい。2日続けて襲われたんだ。後は、アニスやリリィに任せた方がいい。ドレスの合わせも終わったんだろう?」



「はい。後は式の段取りの確認くらいです。」



 クルビスさんの確認にリリィさんと共に頷く。

 護衛が増えることになるなんて思わなかったけど、こうなったら仕方ない。



 私が襲われたのは2回目だし、カメレオンの一族のこともある。

 イグアナの一族がしかけてきた以上、向こうも何もないとは思えない。



 悪役令嬢の父親だってこの知らせを受けたら乗り込んでくるかもしれないし、念には念をいれておくべきだ。

 悪役令嬢が直接乗り込んできたみたいに、思いもよらない方法で来るかもしれないしね。



 雨季が後に控えている以上、式の延期も難しいし、ケガには気をつけないと。

 せっかくいろんなひと達の協力で準備している式だ。成功させたい。



「ああ。もう昼だな。何か取ってこよう。奥で食べるといい。」



 クルビスさんがそのまま部屋を出て行こうとする。

 それを思わず裾を掴んで引き留めた。



「?ハルカ?」



 不思議そうにクルビスさんが聞いてくる。

 いや、私も自分にビックリしてるんだけど、つい掴んじゃった。



「えっと。すみません…。」



 何やってんだろ。

 ご飯を取りにいくなら早い方がいいのに。



 自分でも首をひねりながら手を離す。

 それを見ていたリリィさんが一つ提案をしてくれた。



「私が取りに行きましょう。せっかくですから、クルビス隊長もご一緒に昼食を取られてはいかがでしょうか?リード隊長、奥の部屋空いてますよね?」



 え。奥って、ベッドのある部屋?

 そっか、ルシン君がお家に帰ってるから、今は使ってるひとはいないんだっけ。



「ええ。その方がいいでしょう。ハルカさん、あなたは襲われたばかりです。伴侶に傍にいて欲しいと思うのは当然のことですよ。」



 ふわりと微笑まれ、その穏やかな笑顔と言葉に後押しされて、私は素直にクルビスさんと昼食を取ることにした。

 クルビスさんが嬉しそうに目を細めているのを見て、ようやく身体から力が抜ける。



 どうやらずっと緊張していたらしい。

 それなら、お言葉に甘えてクルビスさんとお昼を食べさせてもらおう。



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