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 しっかり朝食を堪能した後、朝食の席で、アクセサリーの選び直しが今日の予定に加わったことを伝えられる。

 昨日落としたのがまずかったらしい。



 グレゴリーさんが代わりの品を持ってくるそうなので、話は後日伺うから、今日のところは何ともないように対応するようにとクルビスさんに言われた。



 どういう意図で言われたのかは魔素で感じ取ったのですぐに頷いて、話が済んだらクルビスさん達とは別れて早速私とアニスさんは会議室へ。

 さっき言われたアクセサリーの選び直しのためだ。



 昨日とは違う会議室の前にはリリィさんがいた。

 アニスさんは今日は休むことになってるので、代わりにリリィさんがずっと付いてくれるそうだ。



 リリィさんは昨日席を外したことをとても気に病んでいた。

 副隊長さんなんだから忙しくて当然だとフォローしたら、それでも自分がついていれば長の危険な作戦に乗らせたりしなかったのにと肩を落とされた。



 すみません。メルバさんの提案に喜々として乗り、さらに調子に乗ってフェラリーデさんを魔王化させたのは私です。

 アニスさんといいリリィさんといい、おふたりが私のことの方を心配してくれるものだから、非常に居たたまれない思いを味わいました。自業自得って言葉が頭に突き刺さる…。



 そんなやり取りを終えると、アクセサリーが選び直しの話になる。

 やっぱりというか、床に落とした時にひびがいってしまっていた。



 遠目ではわからないと思うのだけど、術の媒体に使われたのもあって、身につけない方がいいだろうということになったそうだ。

 そのため、マルシェさんには申し訳ないけど、再度ご足労願ってドレスを再び身につけることになった。



 マルシェさんも事情を聞いていて、会議室の中で顔色を悪くして出迎えてくれた。

 そして、私にケガがないのを喜んでくれ、作戦を立てたメルバさんに怒りを示していた。



 苦労してドレスを縫ってくれた彼女にしてみたら、式直前に私を危ない目に合わせたメルバさんは許せないのだろう。

 手に持ってたハサミがとっても怖かったです。ううっ。



 アニスさんはこの間に昨日汚してしまったドレスの復元を頼みに行ってくれた。

 お休みなのに申し訳ないと思ったけど、動いてる方がアニスさん的には楽みたいだったから笑顔でお願いしておいた。



 そして、着替え終えて隣の部屋に移ると、グレゴリーさんが座って礼の姿勢を取ったまま待ち構えていた。

 部屋のテーブルの上には、知らせを受けたグレゴリーさんが慌ててご自分のお店から持ってきて下さったアクセサリーが並んでいる。



「ハルカ様。申し訳ございません。このたびはこちらの不始末でご迷惑を…。」



 グレゴリーさんは顔色を悪くして出迎えてくれた。

 きっと昨日知らせを受けてから、寝られなかっただろう。



 知らせてくれたのはメルバさんだ。

 このままでは黄の一族は式に協力どころか泥を塗ったことになる。



 だから、代わりのものを黄の一族が用意するように、そして、この事実を知る者が最低限で済むようにと、事情聴取の前にグレゴリーさんとオルファさんに直接知らせに行ってくれたらしい。



 本当なら黄の一族の長のオルファさんが来たかっただろうけど、それでは大ごとになってしまうため、グレゴリーさんが名代という形で来てくれたそうだ。

 そんなこと、なんて言えなかった。クレイさんはやってはいけないことをやってしまったから。



「お詫びは確かに受け取りました。お顔を上げていただけますか?」



 私が声をかけると、ドレス姿の私に目を見張り、先程までの悲壮感が少しマシになった。

 そのことにホッとしつつもクルビスさんの声に出さなかった伝言を伝える。



「アクセサリーが壊れたのはとても残念です。でも、急なお話なのにこれほどのお品を用意して頂いて、本当にありがとうございます。式が終わりましたら、黄の一族の当代様に伴侶と共にご挨拶に伺いますので、お話はその時に。」



 つまり、対外的には、グレゴリーさんの用事は「アクセサリーの替えを届けに来ただけ」なのだ。

 それが伝わったのか、グレゴリーさんはまた深く一礼し、早速商品の説明を始めてくれた。



 クレイさんのことは表ざたになっていない。

 クルビスさんの怒鳴り声と魔素解放も、「私が階段を踏み外したことに慌てたから」ということになっている。



 普段の溺愛ぶりが功を奏したのか、これに疑いの目は向かなかった。

 だから、今、黄の一族の犯罪は表立ってはいない。



 クレイさんのことは片付いたけど、クルビスさんと私の式を邪魔したいひとは他にもいるのだ。

 式の前にケチがつくことは極力避けた方がいいということでこうなった。



 ここで付け込まれるわけにはいかない。

 グレゴリーさんはその辺の事情も知っているからか、さっと対応して下さった。



 さすがに、長年にわたって長の代理を務めてた方だけはある。

 こういう駆け引き的なことはとてもお上手だと、以前オルファさんに伺っていたのでさっきのようなセリフになったんだけど、上手く伝わったようだ。



 こちらが普通の対応を取るということは、黄の一族をないがしろにする気はないということでもある。

 それがわかるから、グレゴリーさんも笑顔に切り替えてアクセサリーの説明をしてくれているんだろう。



 キツイことだと思うけど、こちらの事情も差し迫っている。

 ここは協力してもらおうと私も気持ちを切り替えた。



「ざっと20点程お持ちしましたが、とても斬新なドレスでいらっしゃる。まるで魚人の女性のようなお衣装ですな。それなら、こちらの魚人の里で取れます『海の輝石』はいかがでしょう?」



 そう言ってグレゴリーさんは箱ごと薄く色着いた丸い球がたくさんついたネックレスを見せてくれた。

 淡く内側から輝く様な光がとても神秘的だ。これって…。



「真珠ですか。」



「ご存知でしたか。さすがでございますね。」



 グレゴリーさんが感心したように返事をしてくれる。

 リリィさんやマルシェさんは不思議そうに真珠を見ていた。



 …あれ?この反応だと一般的じゃないみたいだ。

 こっちでは真珠って身につけないのかな?



「故郷でも採れるものですから。でも、こちらの真珠は白以外のものがあるんですね。」



 そう言ってグレゴリーさんを見ると、何故か目を丸くしていた。

 あれ?変なこと言ったかな?

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