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世界樹の話をメルバさんとしていたら、なぜかミネオさんが案内してくれることになって、朝食後に世界樹探検をすることになった。
世界樹の中は空洞になっていて、まるで塔のような作りになっているらしい。
今、私の目の前には巨大な樹がそびえたっている。
地上10階建てのマンションくらいの高さの大木で、枝を空に悠々と伸ばし強すぎる陽射しを適度に遮ってくれている。
幹は太すぎて視界におさまらない。
遠目で見た感じだと、メルバさんのお家2軒ぶんくらいあったからすごく太いよね。もう壁だ。
これが世界樹――――世界を表す樹、世界そのもの、世界を内包する樹。
ファンタジー界で神話クラスで扱われる植物だ。
正面には木製の大きなドアがある。
身長2mはあるクルビスさんが余裕で通れるから、3mくらいの高さがありそうだ。
「広いですね~。」
「こんな風になってたのか。」
私とクルビスさんはきょろきょろと中を見回す。
入口をくぐると、巨大な樹に見合った大きな空間が広がっていた。
15畳…ううんもっとあるだろうな。
広すぎてイマイチ感覚がつかめない。
壁際にそってらせん状に階段がつけられていて、手すりの所には蔦のような植物が絡まって花を咲かせている。
奥にも部屋があるのか、ドアが3つほど並んでいた。ドアの所にそれぞれ1輪ずつ花が咲いているように見える。
「ドアに花が?」
「あれはアタルがやったんだ。わかり易いといって。枯れない花だ。」
チート能力の産物ですか。
どうりでドアから百合やらジャスミンやらが生えてると思ったら、本当に咲いてたんだな。
「長の家と同じ意匠だ。」
クルビスさんがジャスミンのドアと階段を指さしながら言う。
…そういえば。花の咲いた手すり。花の彫られたドア。
「長はここでアタルと俺と暮らしていた。こっちに来て、外との付き合いが増えたから外の建物に移った。そのとき、同じになるよう作らせた。」
そっか。こっちがもともとの家でデザインなんだ。
思い出を大事にしてくれてるんだな。
ドアから花咲かすようなアホ兄貴のデザインなのに。
微妙にセンスないからなあ。あー兄ちゃん。
でも、その突っ込みは胸の奥にしまうことにした。
話してくれるミネオさんも懐かしそうに目を細めて嬉しそうに笑っていたからだ。
ミネオさんにとっては育った家だもんね。
思い出の家かあ。いいなあ。




