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 治療が終わるとクルビスさんが迎えに来て、問答無用でクルビスさんの部屋に連れていかれました。

 クルビスさんに様子を聞かれた時、フェラリーデさんが「打ち身程度ですね。それは治療しました。後、お説教を少々。」とにこやかに返事してたけど、少々じゃないって声をあげて言いたい。



 怖いから言えなかったけど。

 うううっ。フェラリーデさんのお説教でもうHPが点滅寸前なのに、これからクルビスさんかあ…。



 怒ってるのがわかるのに、私への扱いはいつもの丁寧なまま。

 それがまた怖いというか、何て言って謝ろう。



「…あの、クレイさんは。」



「おとなしくしている。様子がおかしいままだが、長に聞かれたことには素直に答えている。そのままシードとキィが一緒に見張ることになった。」



 そっか。…きっとクレイさんはもう暴れたりしないだろうな。

 メルバさんとのやり取りを見てたからか素直にそう思う。



「そうですか。…メルバさんがいるなら大丈夫ですね。」



「そのようだな…だが、ハルカ。俺が言いたいのはそんなことじゃない。」



 うっ。もうちょっと待ってくれませんか?

 まだHP回復してないんですけど~っっ。



 ビクビクしつつ、そろっとクルビスさんと目を合わせる。

 うわあ。真顔だ。トカゲの顔でそれやられると一番怖いんですけど。



「…勝手に突っ走ってごめんなさい。」



「長に聞いた。あそこまでやれとは言われてなかったはずだ。」



 空気がびりびりする。

 クルビスさん今魔素全開じゃないのに。



 身体が知らずに震えてくる。

 わああん。プロの尋問ってこんな怖いの?



 泣きそう。もう泣きそう。

 いっそ泣いてやろうか。そしたらしゃべれるかも。



 でも、勝手にやったのは私の責任だし、それで危なかったのも確かなんだよね。

 ちゃんと話さなきゃ。



 あーあ。ネックレスさえなければなあ。そしたらこんな事に…。

 あ。そういえば言ってないや。これ。



「…ネックレスが。」



「何?」



 私の声が小さかったのか、クルビスさんが聞き返してくる。

 その声がまた低くて怖いの何の。思わず肩がビクついてしまった。



 良くも悪くもあー兄ちゃんのおかげで、怖い声やら怒鳴り声には慣れてるのになあ。

 その私が怖いって相当ですよ。もう泣いちゃおうかな。



「…ふう。悪かった。そんな顔するな。…心配したんだ。ホントに。」



 私の様子に困ったように目を細めて、クルビスさんが私を手招きする。

 でも、さっきまでの余韻があるからか、私の身体は動かない。



「身体はどうだ?傷の治療はしたが、術にもかかってるだろう?」



 動かない私にため息をつきながら、クルビスさんが言葉を続ける。

 術?術って…あ。そうそう。思い出した。



 ネックレスが気持ち悪くて、受け取りたくないのにクレイさんに言われた通りに付けようとしたんだっけ。

 たぶんそれが術だ。黄の一族だから『声』だと思うけど…。



 それをさっきクルビスさんに言おうとしたのに、クルビスさん怖いんだもん。

 私が悪かったんだけどさ。でもでも、やばいと思ったから、身体の力を抜いたんだもん。



「ああ。もう泣くな。怒ってないから。な?」



 クルビスさんが滲んでぼやけてきたと思ったら、抱きしめられていた。

 頭も撫でられて、ちょっと落ち着いてきた。



 自分でも子供みたいな精神状態だとは思うけど、それもしょうがないと思う。

 クレイさんに引きずられてすごく怖い目にあって、その後で氷の魔王と化したフェラリーデさんにたっぷりお説教くらって、もうメンタルも体力も残っていないんだよね。



 今の自分がすごく不安定だって自覚はある。

 きっと魔素も乱れてるんだろうなあ。



「ふうっ。ネックレス…が。」



「うん?ネックレスが?」



「ドレスと、合わせた時は何ともなかった、のに。クレイさんから受け取ったら、すごく気持ち悪くて。受け取りたくないのに、クレイさんに「着けて見せて下さい。」って言われたら身体が動いて。危ないって思ったら、身体の力を抜いてたんです。」



 目から溢れそうになってた涙を舌で拭われながら、事の次第を話していく。

 普段なら恥ずかしくて暴れただろうけど、今はそれどころじゃない。



 ネックレスを受け取った時の気持ち悪い感じがよみがえる気がして、手の先を拭うような仕草をする。

 あれはホントに気持ち悪かった。何だったんだろう。



「…成る程な。それで術の威力を逃したのか。」



「術?」



 見上げた私をクルビスさんが目を細めて覗き込む。

 ああ。もういつものクルビスさんだ。良かった。



「ああ。恐らく、ネックレスに何か術をかけて渡したんだろう。長から聞いた。ハルカの兄君は術、特に精神に干渉する術にかかりそうになると、身体から力を抜いて術を逃がす癖があったと。



 だから、ハルカの反応も何か術を逃すためじゃないかと心配しておられた。最初は大丈夫そうに見えたんだかな。今のハルカは術の後遺症が見られる。リードに見せないと。」



「ふえ。やだあああっ。」



 クルビスさんの説明に内心では納得しつつも、最後に言われたセリフに身体が拒否反応を起こした。

 魔王なフェラリーデさんは嫌ですうぅぅぅ。



「リードさん怖いぃぃぃ。」



 それをきっかけに私の涙腺は決壊した。

 クルビスさんはそんな私の背を撫でながら、ポツリとつぶやく。



「…リード。やり過ぎだ。」



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