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「そうみたい~。でもセパとの関係なんて聞いたことないんだよ~。わけわかんないよね~?」
メルバさんが首を傾げながら答えてくれる。
病気が原因で誘拐ねえ。理解出来ないけど、とりあえずセパと病気に関係はないみたい。よかった。
「そうなんですか。ありがとうございます。…すみません。いきなり聞いて。つい口に出してました。」
「いいよ~。ネロのことだもんね~?気になるのは当たり前だよ~。」
いきなりメルバさんに質問したことを謝ると、ひかり輝く笑顔で返された。
ぐはっ。神々しい。いつもこうだったらエルフの長っぽいのに。
「珍しく良いこと言っとりますな。」
「ハルカちゃんにはいいとこ見せときたいんじゃろ。兄気分じゃな。」
「その調子で長の仕事もこなしてくれたらのう。」
やりとりを聞いていた長老さん達がヒソヒソと言い合う。
だから聞こえてますってば。全部。メルバさんはスルーしてるけど。
それからいくつかやりとりをして、私たちが帰る夕方にネロも連れて帰ることになった。
それまでには聞き取りも終えて、犯人を移動出来ているらしい。
ネロの大量のエサが心配だったけど、里の果物がたくさんあるので大丈夫だと言われた。
もちろん代金は支払う。ネロはククカの実が気にいったみたいだった。
「へえ。世界樹の実が気に入ったの~。さすが黒のセパだね~。」
「…世界樹?ククカの実が?」
え?世界樹って、あのファンタジーな植物の世界樹ですか?
メルバさんが頷くのを見て、内心のテンションが一気に上がる。
世界樹とは、文字通り世界を表す樹であり、世界を支えるものであり、世界そのものを内包するものとされ、神と同等な扱いか神の御使いとして語られる巨大な樹のことである。
ライトノベルによっては、瘴気を浄化する樹だったり、葉っぱが万病に効く薬だったり、実が世界の邪悪を打ち砕く武器だったりと、名前のせいか万能感満載で語られることの多い樹だ。
その実がククカの実?
昨日ジュースを飲みましたけど。え。何かスキルを習得出来たとか?
「そうだよ~。まあ、世界を渡った時に世界樹じゃなくなったけどね~。実もただの果物になっちゃったし~。でも、含む魔素の質の高さは一級品だよ~。」
なんだ。ただの果物になっちゃったのか。
ちょっと期待したんだけどな。
「ここの隣にあるのがその樹だよ~。あれ、あ~ちゃんが里に持ち込んだんだ~。『神様からもらった』んだって~。」
は?…え。世界樹持ち込んだのあー兄ちゃんなのっ?
神様からもらったって、またチートくさいことを。どこまで王道突っ走ってるんだ。