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遅れてばかりですみません。
ドラゴンのことになるとどうにも書いたり消したりで時間がかかります。
「えっと、すみません。お名前で呼んだ方が良かったですか?」
『いいやっ。是非、お義父さまでっ。』
訂正しようとしたら全力で止められた。
あまりの勢いにちょっと引いてしまう。
フィルドさんってクルビスさんに似てクールなタイプだと思ってたんだけど…。
何か違うみたいだ。「残念なイケメン」という言葉が浮かんで慌てて打ち消す。
『う~ん。それなら俺はおじい様だな。じいじでもいいぞ?』
ルシェリードさんも参加してきた。
ここで、周囲の目が非常に生温かいのに気づく。
「お祖父様まで…。」
クルビスさんが眉をしかめて頭痛そうにしてます。
私もじいじはちょっと…。
「えっと、ではお義父さま、おじい様で…。」
『いいねっ。娘が出来たって感じがするっ。』
『じいじは無しか…。』
とりあえず、お義父さま・おじい様呼びに決定すると、フィルドさんは喜びルシェリードさんはちょっと残念そうだった。
いやだから、じいじは呼びませんって。
「いい加減にして下さい。まだ皆さんのお名前を聞いただけですよ?」
脱線しまくったのでクルビスさんが本題に戻す。
そういえば、街に新しく降りるドラゴンの皆さんと顔を合わせてそれだけってことはないだろう。
クルビスさんはトカゲの一族の次代だけれど、現在ルシン君が訓練を受けている北地区の守備隊の隊長さんだ。
紹介された理由は後者の方に関係してそうに思う。
『ああ。そうだったね。ついつい嬉しくて。後でメラに自慢しないとね。――それで、彼らはね。2つずつ各地区に行ってもらおうと思ってるんだ。ユリアとザクスは西地区、キランとククイスが南地区、ピックとメロウが東地区、僕とケロウが中央でミルルとアドガシャが北地区だよ。』
名前を呼ばれるたびに皆さん律儀に礼をしてくれる。
ユリアさんはラベンダーでザクスさんは薄い水色、キランさんはオレンジっぽい赤でククイスさんは黄緑、ピックさんはブルーでメロウさんは黄土色、ミルルさんは濃い水色でアドガシャさんは紫色だ。
ルシン君の体色に含まれる水色と紫をもつドラゴンが多いのは気のせいじゃないだろう。
それより、気になるのはケロウさんが真っ白な竜ってこと。
フィルドさんと来たときから目立ってたけど、他のドラゴンと並ぶと白さが際立つ。
光を反射して光っていると白銀という感じだ。
白い魔素のひとにはひとりしか会ったことなかったし、何より「白い竜」だ。
ついつい目で追ってしまった。
「…ハルカ。見つめ過ぎだ。」
耳にクルビスさんの低い声が入ってくるまでは。
しまった。怒ってる。まずい。
「すみません。あこがれの白い竜に会ったので、つい。」
そう言いつつやっぱり見てしまう。えへ。
だって、「白い竜」だよ?多くの物語で「白い竜」は特別だ。
幸いの竜、幸福の証、調停者、ドラゴンの神官などなど。
いろんな解釈はあれど、「特別」というのに変わりはない。
『ほお。憧れか。だが、ハルカはこちらに来るまでドラゴンに会ったことなかっただろう?』
「物語に登場するんです。白い竜は「幸いの竜」。出会えただけで幸せになると。」
私の言葉に興味を持ったルシェリードさんに説明すると、皆さん驚いた顔をした。
おかしなこと言ったかな?




