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ネロを褒めてたらメルバさんと長老さん達も起き出してきて、フェラリーデさんとネロがいるのに驚いて軽く騒ぎになった。
それで、事情を話してネロにご挨拶させてたら、他の皆さんも起こしてしまった。すみません。おはようございます。
「へええ。黒いセパだあ。僕、初めて見たあ。」
「かわいい~。」
「本当に。なつっこいし、小さいし、可愛いわあ。」
ネロを見た皆さんが次々になでながら褒めていく。女性と子供たちにモテモテだ。
おかげでネロは上機嫌になった。良かったね。
「しかし、解せませんな。誘拐犯はスタグノ族なのでしょう?あやつらはセパの匂いを嫌ってますから、移動にも使いませんし、食べもしませんのに。」
話を聞いた年配のエルフのおじいさんが首を傾げている。
スタグノ族って確かカエルさんの一族だよね?セパが嫌いなのか。たしかに変だ。
「う~ん。そうだね~。ちょっと変だよねえ~。ディー君、誘拐犯って目を覚まさないんだっけ~?」
「はい。半日以上たっても目を覚ましません。見張りと目を覚ましたときの聞き取りはリリィとキーファに頼んできました。」
「そっか~。じゃあ、何かわかったら知らせが入るね~。よし。みんな~。ご飯にしよ~。」
メルバさんの一声で朝の支度が始まる。
まあ、この状況であれこれ言っててもしょうがないもんね。
私も手伝ったけど、屍になってたひとが多いので、昨日の残りと台所に置いてあったお味噌汁に新しく具を入れて温めるだけの簡単な用意になった。
でも、お味噌汁には野菜がたくさん入ってて、朝にしてはごちそうだ。お味噌汁が美味し~。
皆さん、二日酔いな様子の方もチラホラ。飲んでましたもんねえ。
「久しぶりです。この味。」
「帰ってくれば味わえるぞい。」
「まったくじゃ。近い所におるんじゃから、もっと顔を見せにこんか。」
「治療の仕事も尊いものじゃが、もう少しなんとかならんか?10年ぶりじゃろ?」
「…善処します。」
フェラリーデさんがお味噌汁を味わっていると、長老さん達からの総突っ込みが入った。
10年って…。帰ってないにも程がある。そりゃ文句言われますよ。
それにしても、へこまされるフェラリーデさんって珍しい。
いつもは相手を言い負かす方なのに。やっぱり故郷じゃ違う顔が出てくるもんなんだな。
ぴーっぴーっぴーっ
朝の和やかな雰囲気に会わない機械的な音がホールに響く。
何事?非常警報とか?思わず身構える。
「あれ~?通信機だね~。もしかして北からかな~?」
メルバさんがいそいそと壁際に行く。壁に手をふれたと思ったら、ガコンッと音をたてて開く。
あんなとこに通信機が。何やらしゃべった後、メルバさんが振り向いた。
「ねえねえ~。ホーソン病って前はいつ流行ったっけ~?」
「う~む。確か、1000年程前ですな。」
「その前はわしらの来る数百年前だったとか。」
「大体、1000年に一度ですな。」
「ありがと~。もしもし~?」
病気の相談かあ。メルバさん腕のいいお医者さんだもんね。
それにしても1000年に一度流行る病気があるのかあ。怖いなあ。
「う~ん。ディー君、ちょっと変わってくれる~?キーファ君からだよ~。僕はもう済んだから~。」
「っ。はい。」
待ってた連絡だ。フェラリーデさんが慌てて通信機の方に駆け寄る。
どんな理由でネロが狙われたんだろう?
「ホーソン病ですかの?」
「そう~。さっき話してたネロの誘拐犯が目を覚ましてね~。わめいてる内容がそれっぽいんだって~。
でも、向こうは若い子ばかりだからホーソン病については良く知らないし、相手も混乱してるみたいで詳しいことがわからないらしくてね~。だから、ご飯食べたら北に行ってくるよ~。」
「病気が誘拐の理由なんですか?」
思わずメルバさんに質問していた。でも、ネロのことだから気になるし、しょうがない。
何で誘拐犯が病気のことを口走ってるの?




