6
そんな邪まな気持ちで聞いてみたところ、梅のような果物はあった。
ルグの実を知ってたのが良かったのかもしれない。味の説明が伝わりやすかった。
その梅もどきはドラゴンの里でしか採れない果物で、名前はドリアン。
うん。名前聞いた時、何か匂いそうって思った。
でもホントにこの名前なんだよね。
まあ、覚えやすくていいか。
持ってきてもらったドリアンはパインのような黄色をしていて大きさはこれも桃くらいあった。
梅のとてもさわやかな香りがして、なんだか懐かしい気持ちになる。
黄色は熟れたやつらしいけど、齧ってみると酸味が結構強くて、甘酸っぱい果汁にレモン汁を加えたくらいだった。熟れる前はこれに少し苦味が加わるらしい。
そのため、さっぱり系のお酒に加工するか果汁をレモンの代わりのように使うかしか使い道がなかったのだそうだ。
つまり、結構余ってるということがわかった。
これならちょっと貰えるかもしれない。
「…あの。この…ドリアンを幾つかお土産にしてもいいですか?故郷の果物と似ているんです。」
『ほお。これが?構わない。いくらでも持っていきなさい。年中実がなるし、どうせいつも余ってしまうからな。』
年中?じゃあ、上手くいったらいつでも梅もどきが手に入る?
それならと、作りたいものと必要になりそうな数を数え上げる。
(やっぱり梅酒も作りたいよねえ。あ、氷砂糖ってあるかなあ?メルバさんに聞いて見なきゃ。)
「…随分酸味がきついな。ハルカ。これを何に使うんだ?」
顔をしかめながらクルビスさんが聞いてくる。
どうやら、私にと用意してもらったドリアンを齧ったみたいだ。
「塩漬けしたり、お砂糖で煮詰めてジャムにしたり、香りがいいので餡子にも混ぜたり、後、材料さえそろえば甘いお酒になります。」
お酒が甘くなるかは希望的観測だけど。
これには意外な所から反応が帰ってきた。
『ほほお。これが甘く?それに塩漬けなど考えたこともない。面白そうだね。』
今までどこにいたのか、上機嫌のフィルドさんだった。
その後ろに紫のドラゴンを連れている。ラベンダーカラーのドラゴンだ。
「お父さん。」
『やあ。ちょっといいかな?こちらの女性がふたりに是非挨拶したいそうでね。』
『お初にお目にかかります。シーリード族ドラゴンの一族、ユリアと申します。お二方には私の甥がお世話になりました。』
おい?おいって「甥」のこと?誰が?
クルビスさんも心あたりが無いようで目を見開いて驚いている。
どういうことなんだろう。
聞き返してもいいのかな?
 




