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「おはようございます。ハルカさん。」
「おはようございます。アニスさん。」
アニスさんといつも通り下の食堂に朝食を食べに行く。
隊士の皆さんは見回りや隊長さんたちはすでに食べ終わっているから、この時間はのんびり食べられる。
式までもう2週間と迫って来た。
ばたばたとしたけど、ドレスも本縫いに入っているし、花の手配も出来てる。
大抵の一族の方にはご挨拶したし、残っているお披露目はドラゴンの一族だけだ。
今日から2日、中央区にあるルシェリードさんのお家にご挨拶に伺って、その後ドラゴンの一族の里のある山まで行ってお披露目をする。
ドラゴンの一族は魔素が強く、他の一族には害になるため、里に呼ばれるなんて滅多にないことらしい。
だけど、クルビスさんがルシェリードさんの孫であることと、私がルシン君を助けたこと、そして私が強い黒の魔素持ちだからといろいろと重なって里から招待してもらえることになった。
古い魔法のかかった映像の出る招待状が来た時は大騒ぎだった。
メルバさんは「正式な招待なんて僕以来じゃない~?」って言ってたし。
実際、かなり珍しいものらしく、アニスさんやリリィさんは興奮していて、フェラリーデさんとキーファさんは古の術式に興味深々。
シードさんも目を丸くしてたし、キィさんは招待状を眺めながらも「いいな~。あそこ果物が美味いんだぜ~。」と羨ましがっていた。
「おはようハルカ。」
「っっ。」
うう。セーフ。奇声はあげなかった。
この間、クルビスさんの部屋にお泊りしてから、こうやってクルビスさんの魔素に事あるごとに慣らされている。
魔素に慣れない私は、クルビスさんの魔素に長時間触れると『伴侶酔い』を起こすのだそうだ。
お酒に酔っぱらったような状態になるんだけど、そのせいでお泊りの日は気を失うというか、すやすやとよく眠ってしまった。
朝起きて、事情を聞いたときは平謝りしました。
彼氏ほったらかして先に寝るとか…。自分が間抜けすぎてその日は顔を見れなかった。
クルビスさんは気にした風もなく、むしろご機嫌で私の魔素慣らしのプランを練っていた。
今のところ、名前を呼ぶときに魔素を込める、クルビスさんといるときは膝抱っこ、そして一日の終わりに、魔素を抑え込んでないクルビスさんの膝の上に座っておしゃべりしたり、手を握ったりと直接接触することになっている。
この程度でと思われそうだが、一日の終わりには腰がたたなくなってるから、慣らしはいるなと実感している。
振り替えると、上機嫌なクルビスさんとニコニコしたフェラリーデさんがいた。
恐らく今の私は顔が赤くなってるだろう。くそう。
目の前のアニスさんは女神のごとき神々しい微笑みで見守っている。うう。
こんな状態でルシェリードさんのお宅にお邪魔して大丈夫だろうか?
そんな不安がここ最近の私の悩みだった。




