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「俺の従兄弟を覚えているか?ハルカが助けたヒーリだ。ヒーリが赤い目のおじさんに会ったと言ってただろう?目撃された特徴は、どれも赤い目をした壮年の男でヘビの一族のように見えたというものだった。」
ああ。あの喧嘩した子。
術で操られていたんだっけ。
そういえばそんな話があった。
でも犯人はヘビの一族なんでしょ?クレイさんはどう見ても黄の一族だった。
鱗なんてないつるっつるっな肌だった。
そう考えてた私をジッと眺めていたフェラリーデさんがポツリとつぶやいた。
「…最近スタグノ族から鱗のアクセサリーが出回っているようです。それがあれば…。」
その言葉で思い出す。
黄の一族のお店から届いた見本の装飾品にそういうのが混じっていたっけ。
どういう加工をしているのか、一枚一枚透明でキラキラとパールっぽい光沢でビーズのような使い方をされていた。
流行の最先端で出たばかりのものだ。
持ってないひとの方が圧倒的に多いアクセサリーだから是非にと勧められたけど断った。
シードさんから脱皮の話を聞いてなきゃ綺麗だと思えたんだけど…。
知り合いの身体の一部かもしれないものを身につけるっていうのもなあ。
防具として価値があるっていうのは納得出来たんだけど。
アクセサリ―はねえ。
「ああ。シードから報告を受けてる。ヘビの一族の皮がそれで装飾方面に大量に出回っているそうだ。相手はフードを被っていたそうだし、あの混乱だ、見える部分に鱗を張り付ければわからないだろう。」
「黄の一族も頭は丸い…。尻尾もありますし、フードを被ったら見分けられるのは鱗があるかないかくらいですしね。」
「ああ。あの黄色い体色が見えたとしても、シーリード族にいないわけじゃないしな。色の情報が出てこなかったから考えなかったが…。催淫の術なんて使える方が珍しいしな。母以外では初めて会った。」
「適性を持ってるかたが稀ですしねえ。しかし、今まで浮上しなかったと言うことは登録していないのですね。」
「隊士でなければそれ程調べられないしな。黄の一族なら声の登録をしておけば十分だろう。」
催淫の術って適性がいるんだ。しかも稀。
フェラリーデさんも言うくらいだから、かなり珍しいんだろう。
というか、メラさん使えるんだ。
クルビスさんが気づいたのはそのおかげだろう。
それだけ珍しい能力を持っていて、目が赤くて私に術をかけようとしたクレイさんは限りなく怪しい。
でも、確証には弱いなあ。術をかけたかけないは証拠にならないだろうし。
「証拠…。」
私のつぶやきにクルビスさんとフェラリーデさんが注目する。
しまった。邪魔する気はなかったのに。
「えっと、証拠が無いなって思って。鱗なんかは処分してるでしょうし、同じ手は使わないでしょうし。術のかけたかけないじゃあ、証明が難しいし。私にかけたのはたまたまだったかもしれないし。」
「ハルカ…。」
「ハルカさん…。」
うん。そんな偶然はないってわかってます。
だから、残念そうな顔しないで下さい。
でも、そうやって言い逃れされたら終わりだし。
何かいいアイデアないかなあ。
「…処分はしていないかもしれません。」
フェラリーデさんが考え込むように言う。
処分って証拠を?鱗のことだと思うけど。
「鱗か?」
クルビスさんも同じことを考えたみたいだ。
鱗なんてとっくに処分してると思うけど。商品にして売るとか。
「ええ。鱗のアクセサリ―があるでしょう?長老に聞いたのですが、問題を起こした3つ子の所に、あれでかぶれたという患者が来たんだそうです。調べたら鱗に樹脂がついていたと。」
「樹脂…接着剤かっ。」
「恐らくは。処理の過程で付着したのだと思っていましたが、こうなってみると…。処分に慌てて、溶解液に漬け置く時間が少なかったのでしょう。その患者は売った店を訴えると言って、さらに詳しい調査を一族に依頼しました。
あれはスタグノ族の店でなくては扱っていないそうですし、付着していたのはヒヒリの樹液でした。ヒヒリはスタグノ族の保湿液に使われます。」
うわあ。それはもう確定といっていいんじゃないだろうか。
その商品をたどっていけば…。
「上手くいくかはわかりません。アクセサリーはまだこちらで預かっていますし、他にも被害の届け出が出ているかもしれません。その線から急いで調べてみましょう。」
フェラリーデさんの提案に私とクルビスさんは頷いた。




