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「誰かいるのか?」
そう言ってクルビスさんはドアを開ける。
私とキマイラさんが座ってお話してるのを見て、何故か目を丸くした後ホッとした様子で近づいて来た。
「ここにいたのか。」
「迷ってしまって。ここで休ませてもらってたんです。」
そのまま私を膝の上に乗せる。
流れるような動作で文句を言う暇もなかった。
あれ?おかしくない?
何で素で膝だっこ?
「伴侶がお世話になりました。キマイラ様。」
「ここでは様付けはいらない。だが、見つけたのが私で良かった。他の者では騒ぎになっただろう。」
クルビスさんとキマイラさんは知り合いだったようだ。
騒ぎになるって「大変だ~。トカゲの次代様の伴侶様が~っっ。」みたいな?
それは困るからキマイラさんに会えてすごく助かった。
ただ、ただね?それって膝抱っこのままで話さないといけないんだろうか。
「あの。クルビスさん?」
「どこか辛いか?」
いえいえ。さっきからクルビスさんの魔素に包まれて非常に快適です。
そうでなく。そうでなくですね?
「あの。もう平…「まだ無理だろう?」」
みなまで言わせない気ですね?
そして、下ろす気が全くありませんね?
「ぷっ。くっはははっ。いや失礼。仲が良いとは聞いていたが、ウワサ以上だ。良き番の見本だな。」
は。しまった。
キマイラさんだけとはいえ、人前でいちゃついてしまった。
クルビスさんっ。知らないフリしないっ。
こっち見なさいっ。お話がありますっ。
まあ、いいじゃないかってなんですかっ。
人前はだめっていったでしょう?
キマイラさんだって、困ってしまう…あれ?
キマイラさんが私たちを見て目を見開いている。
「あの。キマイラさん?」
私が声をかけるとハッとしたように目をぱちくりと瞬きする。
「今のが共鳴か。これはすごい。成る程。キルビルの言う通りだ。あなた方に杞憂はいらぬ。」
「公でこれをするようになってから、ずいぶん静かになりました。」
クルビスさんが答えるとキマイラさんはまた豪快に笑い出した。
共鳴に驚かれるのは良くあることだけど、何だか今までと違うことを言われた気がする。
クルビスさんを見上げてみるけど上機嫌で笑ってるだけで教えてくれそうにない。
後でしっかり問い詰めようと決めてキマイラさんに向き直ることにする。
「恥ずかしがることはない。共鳴は良き伴侶の証だ。共鳴をしている限り貴女の伴侶の座は揺らがない。」
え。伴侶って変わったりすることもあるの?
魔素で最も相性の良い相手を選ぶから、そもそも別れるって考えがないように感じていたんだけど。
今の言い方だとそう聞こえる。
どういうことだろう。聞いてたことと違うってこと?
もし、伴侶の立場が脅かされることがあるなら私は知って置かないといけない。
クルビスさんの伴侶はそれだけの価値があるからだ。
クルビスさんを見ても、目を細めているだけで今のがどういうことなのかわからない。
でも、これは聞き逃せない。ここで聞くのはまずいから、後でアニスさんにでも確かめてみないと。




