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私が落ち着いて、しばらく和やかに話をしていたらキィさんが戻ってきた。
転移陣は無事回復して、到着の遅れていたスタグノ族はもうすぐ来られるとのことだった。
「それは行幸。それでは私の伴侶が到着し次第、始めさせて頂きたいと思います。」
キルビルさんはそう言うと下がっていった。
きっと今聞いた知らせを通達するのとお披露目を始める手配に行ったんだろう。
長自らしなくてもと思うけど、最初に顔合わせした時の様子だと「自分で動く方が早い。」って思っていそうだ。
そういう所はキィさんと似ていると思うけど、時代がかった青の一族の中では異端だろう。
そんなことを想っていると、会場の明かりが落とされ、壁際がぼんやりと光っているのが見えた。
「これより、スタグノ族主催、披露目の儀を執り行います。」
朗々とした声が会場中に響き渡る。
拡声器でも使っているのか、かなり大きな声だ。
壁際が光ってるのって、誰かいるってことだよね?それって司会者?
結婚披露宴じゃあるまいし、司会者っているの?
いやでも、進行の決まっているパーティーならいてもおかしくないのかな。
照明落とすのはやり過ぎな気がするけど。
「この家には転移陣があるそうだ。おそらく伴侶殿が到着したんだろう。呼ばれたら出ていくから。」
いきなりの進行に戸惑っていると、クルビスさんが教えてくれた。
そういえば、さっきの今で早すぎると思ったら、家の中に転移陣があったからなんだ。
納得しつつも、すぐに呼ばれて緊張しながら壇上に上がって挨拶をした。
過去形なのは、緊張しすぎて憶えてないから。
うう。何もライトまで当てなくてもいいじゃない。
笑顔が引きつってなかったか心配だ。
「お疲れ様。これで後は適当に挨拶を受けていればいい。…大丈夫か?」
クルビスさんに笑顔で大丈夫だと返したけど、もうすでに疲労困憊です。
私の気分とは対照的に会場は明るくなって、最初の雰囲気に戻っている。
後は他でのお披露目と変わりはないだろう。
挨拶に来るひとの名乗りを受ければいい。
そういえば、デルカさんが言ってたっけ。
「余計な注進をゆうてくる者がおるじゃろうが、気にせんことじゃ。」って。
なるべくクルビスさんから離れないつもりだけど、一人にならないようにしよう。
あ。さっそく誰か来た。…青の一族だ。




