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「まず、オルファ様の診察をさせて頂いてもよろしいでしょうか?」
お医者さんモードのメルバさんが穏やかにオルファさんに声をかける。
原因を取り除いたとはいえ、オルファさんは病人だ。
魔素の様子は随分良くなっているけど、ラズベリーさんやグレゴリーさんに比べれば弱い。
お医者さんとしては気になるだろう。
「ありがとうございます。部屋を移った方がよろしいですか?」
「いいえ。そこのイスに座って頂ければ結構です。」
いつの間にかひとり掛けのイスが用意されていた。
その後ろの壁際にアングスさんが控えているから、彼が用意したんだろう。
事前にメルバさんが頼んでいたのかもしれない。
オルファさんが座ると、メルバさんが手の平に光る魔法陣を出した。
皆驚いて見守っていると、その魔法陣はオルファさんの頭上に移動し、両手を広げたくらいに大きくなった。
「そのまま楽にしていて下さい。今から身体の魔素の様子を見ます。」とメルバさんが説明すると、その魔法陣はゆっくりと下に下りて行った。
(…X線とか、MRIとかそういうやつかな。)
オルファさんも他の皆さんも目を丸くしてるけど、私はこの元ネタがあー兄ちゃんだと確信した。
診察っていうか、検査だよね。
でも、ホーソン病は魔素が失われるので、見えない部分のダメージが大きい。
内臓がどれくらい無事か確認する必要があるだろう。
「良かった。内臓は無事ですね。安静にしていればこのまま回復しますよ。」
「そうですか。ありがとうございます。」
メルバさんの言葉にオルファさんの顔が喜びに輝く。
ラズベリーさんもグレゴリーさんも嬉しそうだし、もちろんアングスさんもそう。見守っていたデルカさんもとても嬉しそうだ。
さっきまでの緊迫した空気はすっかり無くなっていた。
今は喜びの魔素で一杯だ。
「良かった。」
思わずそうつぶやくと、クルビスさんが手を握ってくれる。
クルビスさんも目を細めて喜んでいた。本当に良かった。
グレゴリーさんは目にハンカチを押し当てている。
歓喜・安堵の魔素が伝わってくる。
その姿は最初の挨拶の時とは似ても似つかず、これがグレゴリーさんの本来の姿なのかもしれないと思った。