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「―――ようこそおいで下さいました。深緑の森の一族の長様、長老さま。お見舞いにお越し下さりありがとうございます。トカゲの一族の次代様、伴侶様。私、長の補佐をしておりますアングスと申します。長の元までご案内させて頂きます。」
クルビスさんの案内で黄の一族の長のお宅に到着すると、アングスさんが出迎えてくれた。
きっとずっと待っていてくれたんだろう。それくらいタイミングが良かった。
「こちらで長がお待ちです。」
アングスさんがうやうやしくドアを開けると、中にはオルファさん、グレゴリーさん、ラズベリーさんが礼の姿勢で待っていた。
とても緊張した空気だ。
今までの関係では仕方のないことだけど、困ったことが一つ。
私、この空気で最初にしゃべるの?
とにかく礼の体制を解いてもらわないと。一歩前に出て。
立場が上のひとがいるときは先に座ってはいけないから、メルバさんがいるこちらが「座って下さい。」は言えない。だから…。
「どうぞお直り下さい。本日はオルファさんのお見舞いとお約束の調査の結果を報告にまいりました。調査の結果は深緑の森の一族の長様と長老様がして下さるとのことです。オルファさん。その後、お加減はいかがですか?」
「とても快適です。身体が急に冷えることもなくなりました。ハルカ様のおかげです。クルビス様もお忙しい中、お見舞いに来ていただきありがとうございます。そして、ようこそおいで下さいました。深緑の森の長様、長老様。当代の黄の一族の長、オルファと申します。こうしてお迎えできることを光栄に思います。」
ここで、私が一歩下がって、メルバさんが一歩前に出る。
「深緑の森の一族が長、メルバと申します。この度は、一族の者がご迷惑をおかけして大変申し訳ありません。本日は調査の報告と黄の一族の長オルファ様の診療をさせて頂きたく参上いたしました。こちらは長老のうちの1つです。今日は私の補佐をしてもらいます。」
「深緑の森の一族が一葉、デルカと申します。一族の長老をしております。見知りおき下され。」
それから、グレゴリーさん、ラズベリーさんと挨拶が続いてやっと座れた。
ふう。ややこしいなあ。
普通、長になる前にクルビスさんみたいに各方面に挨拶は済ませるものだから、長同士で初対面はありえない。
でも、黄の一族と深緑の森の一族は交流が絶たれた状態が続いたから、仕切り直しも含めて儀礼に則ったものが必要というわけで、今みたいな挨拶になった。
だから、すでに面識のある橋渡し役の私がしゃべって、それに答える形でオルファさんが歓迎の意を示し、後は立場の順でメルバさん、長老さん、グレゴリーさん、ラズベリーさんが挨拶した。
これで、一番ややこしい部分は終わったかな?後はメルバさんにお任せだ。




