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「コホンッ。それで、話が少しそれてしまいましたが、ハルカ様の新しい菓子についてお願いがございます。」
「お願い?」
「ええ。その菓子の発表を私の店で行いたいのです。」
発表をアースさんのお店で?
これは初めての内容だ。料理教室に入れてくれっていうお願いは多かったけど。
でも、考えたら当たり前だよね。
注目を集めるお菓子を自分の店で発表できたら、箔もつくし宣伝にもなる。
問題は、私が勝手に決めていい話かどうかってこと。
今まではウジャータさんの所で教室を開いて、そこでレシピを教えることになっていた。
つまり、レシピの発表はウジャータさんの所でやると宣言したようなものだ。
それを私の独断で場所を変えるわけにはいかないだろう。
「もうっ。だから、わかりにくいのですわっ。アース兄様、ハルカ様は商会の方ではありませんのよ?今の言い方では誤解を招きます。」
私が躊躇していると、リッカさんがアースさんにぷりぷりと怒り始めた。
誤解?私が思ってるのと違うのかな?
「そうかな?直接お願いしたつもりなんだが…。」
「いいえっ。ハルカ様。アース兄様のお願いは、別にレシピ公開もやるわけではありませんのよ?」
「え?そうなんですか?」
「ほらっ。誤解されてましたわっ。兄様は言葉が足りないのですっ。」
「おおっ。これは失礼を。レシピの公開はウジャータ様の教室を借りられると聞いています。それを別の場所でお願いする気はありません。そうではなく、菓子自体のお披露目を私の店で行いたいのです。」
菓子自体のお披露目…水菓子をお披露目したみたいな?
それなら大丈夫だ。
「そういうことなら…。」
「何とかなりますか?」
「ええ。おそらく。ウジャータ様と相談して、調理師の方の都合もあるから、『レシピ1つにつき、公開の準備が整ったらそのたびに事前のお披露目をした方がいいんじゃないか』という話が出てましたので。」
まだ計画の段階で未定のことも多いし、その辺もウジャータさんにお任せする気だったから具体的には決めてなかった。
でも、ウジャータさんは「お披露目はハルカ様がやりたい時に好きな場所ですれば良いのです。お手伝いはいつでもしますわ。」と言ってくれた。心強い味方だ。
だから、調理器具なんかの問題のあるレシピ公開と違って、単なる宣伝になるお菓子のお披露目は私次第というわけだ。
これって、交渉なんかに使えるから私の裁量で決めなさいってことだったのかな。
う~ん。まだまだ勉強が足りないなあ。
会社では商品の企画を練ったり、営業で売り込みに行くことはあっても、お披露目のパーティーみたいなことはやったことなかったからなあ。
戦略ノートとかちゃんと作った方がいいかも。
帰ったらさっそく実践しよう。
「具体的なことはまだ何も決まってませんので確実ではありませんが、アースさんのお店でお披露目が出来るように調整してみます。」
「それで充分です。お願い致します。…では、リッカ。あれを。」
「はい。」
あれって何だろう。交渉の証の品みたいなものかな?
黄の一族では装飾品の店の紹介、青の一族では花の手配だったけど。




