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何とか回復しました。
次話はいつも通り1時に投稿できそうです。
「…ハルカ様。今のルシェモモの技術の保護をどう思われます?」
技術の保護?
それって、職人さんのノウハウとか品物の作り方とか表に出ないようにするってやつだよね?
教えるのも技術者次第で、若いうちは弟子もとらないから、技術の継承に時間がかかってしまうってメルバさんが言ってた。
だから、深緑の森の一族は自分たちの里で薬の製法を定期的に教えていく制度を取ることにしたのだそうだ。
技術都市として、最もお金になる技術の情報漏えいを防ぐためだって聞いたけど、それで料理のレシピまでわからないなんてって驚いたんだっけ。
ちょっとやり過ぎじゃない?って思ったくらい。
でも、今の私の立場で口にしていいことなんだろうか。
クルビスさんを見ると、少し緊張した顔で頷いている。言っていいんだ。
「どう、といわれましても。そうですね。何もかも守っていたら、衰退していくのではないかと思いました。」
「そうです。すでに、幾つかの技術がそれで失われてしまいました。」
失われた?
それじゃあ、技術者のひとが誰にも伝えないまま死んだってことだ。
「起こってしまいましたか。」
クルビスさんが難しい顔で言う。
危惧されてたことなのかな。それが現実になってしまった?
「ええ。今の保護制度はルシェモモ創建当時のままです。当時は技術者の数が少なく、家族単位で生産していましたから、これで良かった。しかし、これだけ種族も数も増えては、今の法では対応出来ません。」
それはそうだろう。
外からの弟子入りを希望するひとも出てくるだろうし。
それに、いつまでも技術を独占していたら、恨みを買ったりしないだろうか。
「学術都市や農耕都市と言われる他の大都市は、外からの研修に対して積極的に受け入れています。しかし、ルシェモモでは街の者に縁者がいなければ、学ぶことも出来ない。それで、技術を持つ街と持たない街で差が出始めています。」
うわあ。それ、後で問題になりそう。
貧富の差は争いの元だよね。
難しい話になってきた。でも、大事な話だ。
背筋を伸ばして聞いておかなきゃ。




