18.時には休息も必要と思う。
「……ねぇ」
声が聞こえ、僕は目を開く。
……と、僕の目の前に、一つの赤い光がすっと現れた。それは、僕の顔を覗き込んでいる。
「シャコウ?」
僕ははっとして起き上がると、レンズの中の光が大きくなり、まるで驚いたかのように、くるくると回って、部屋の中心へ移動する。
「……起きタ?」
「うん、起きた」
器械であるシャコウは眠る必要がない。そもそもの話、この星に夜がない。なので僕は眠い時に寝るという生活をしていた。
いくら熱中している時は眠くなりにくいとはいえ、生物である限りはやはり限度がある。器械を修理していたのだが僕は眠気に負け、少し眠ることにしたのだ。
長く眠るつもりはなかったので、頃合を見て起こしてもらうことにしていたのだ。
「あのネ、そのネ……起きたてで悪いんだけれど、これをアタシに取り付けてほしいんダ」
赤いレンズの中が、好奇心にあふれているかのように煌々と丸く光っている。
シャコウは時々このように部品を持ってくる。何の機能が付加されているのかわからないものも多いが、今回の部品はシャコウがわざわざ探してきたらしい。
まれに直さずに使えるものもある。今回のそれは直さなくてもいいもののようだ。
「ん、あぁ、分かったよ……」
まだ少しぼんやりする頭だが、眠気ざましの準備体操には丁度いいだろう。
「これは吟遊詩人の記憶なんダヨ。昔は吟遊詩人がいて、神殿の噴水の前でずっと歌っていたんダ。ケィスキー最近ずっとその作業ばかりでしょ? 気分転換にドウ? 詩人たちが歌っていた癒しの音楽なんだヨ」
音楽が何曲か記録されているらしい。シャコウが音楽プレーヤーになるのだ。
「まずは『宇の原讃頌』ダネ」
シャコウは歌う、はかなげな音で。
「……第一楽章……『世界の産声、美しき』…… 」
透明感のある、少し悲しげな神秘的な声が、ここに響き渡る。
今となっては『過ぎ去った時間』への挽歌、過去の栄華を懐かしみ、しかし希望を持って未来へとつなぐのだなと、僕はなんとなくそう感じました、まる。