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器械を、器械をください!―硝子の夢、玻璃の愛―  作者: まいまい@”
肆「閉ざされた壷の中に世界がある」
18/26

18.時には休息も必要と思う。

「……ねぇ」

 声が聞こえ、僕は目を開く。

 ……と、僕の目の前に、一つの赤い光がすっと現れた。それは、僕の顔を覗き込んでいる。

「シャコウ?」

 僕ははっとして起き上がると、レンズの中の光が大きくなり、まるで驚いたかのように、くるくると回って、部屋の中心へ移動する。


「……起きタ?」

「うん、起きた」


 器械であるシャコウは眠る必要がない。そもそもの話、この星に夜がない。なので僕は眠い時に寝るという生活をしていた。

 いくら熱中している時は眠くなりにくいとはいえ、生物である限りはやはり限度がある。器械を修理していたのだが僕は眠気に負け、少し眠ることにしたのだ。

 長く眠るつもりはなかったので、頃合を見て起こしてもらうことにしていたのだ。


「あのネ、そのネ……起きたてで悪いんだけれど、これをアタシに取り付けてほしいんダ」

 赤いレンズの中が、好奇心にあふれているかのように煌々と丸く光っている。

 シャコウは時々このように部品を持ってくる。何の機能(まほう)が付加されているのかわからないものも多いが、今回の部品はシャコウがわざわざ探してきたらしい。

 まれに直さずに使えるものもある。今回のそれは直さなくてもいいもののようだ。


「ん、あぁ、分かったよ……」

 まだ少しぼんやりする頭だが、眠気ざましの準備体操には丁度いいだろう。


「これは吟遊詩人の記憶(ログ)なんダヨ。昔は吟遊詩人がいて、神殿の噴水の前でずっと歌っていたんダ。ケィスキー最近ずっとその作業ばかりでしょ? 気分転換にドウ? 詩人たちが歌っていた癒しの音楽なんだヨ」

 音楽が何曲か記録されているらしい。シャコウが音楽プレーヤーになるのだ。


「まずは『宇の原(うちゅう)讃頌』ダネ」

 シャコウは歌う、はかなげな音で。

「……第一楽章……『世界の産声、美しき』…… 」

 透明感のある、少し悲しげな神秘的な(おと)が、ここに響き渡る。




 今となっては『過ぎ去った時間』への挽歌(おもいで)、過去の栄華を懐かしみ、しかし希望を持って未来へとつなぐのだなと、僕はなんとなくそう感じました、まる。

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