14.白き翼ある壺。
「ケィスィーさまに直していただきたい器械は、こちらです」
ムィオンは突き当たりにある鍵のかかった扉を開け中に入る。
その部屋の中央は少し高くなっており、そこには翼の生えた機械があった。タコの頭のような流線型で、壺をひっくり返したようなモノであったが、まるで宇宙船か飛行機のような機械である。藍色の模様が刻まれて、翼の白とのコントラストが美しい鳥の硝子細工だ。
「この器械は白き翼ある壺。伝わる話によると……これに乗れば神の元へ行くことができるといわれています。遺跡の中央神殿にいくつかあったのでそのうち1台だけここへ持ってきました。しかし、どんなに頑張っても、私たちの力では直せませんでした。やはり、神が他宇宙から召還する『器械の知識を継ぐ者』の出現を待つしかなかったのです。ケィスキーさま、どうかこの神の元へと導く白き翼ある壺を直していただけませんか?」
「僕に直せるかどうかはわかりませんが」
できる限りのことはしてみようと僕は思った。
この『白き翼ある壺』という名の、どう見ても飛行するための器械が動く、子供のころ夢見た戦隊ロボット(合体前)を発進させるような、そんなわくわくとしたちょっとした興奮が湧き上がる。
「ひとまず、見てみます」
僕は器械の内部を顕わにした。美しい幾何学的な造形の部品たちが所狭しと並べられている。
「とにかく……まずは掃除かな」
長年放ったらかしだったせいか塵やら埃やらが積もり、触っただけで指が白くなってしまうのだ。
ひとまず、この器械をきれいにしよう。話はそれからだ。
部品を傷つけないよう気をつけながら埃を払い、きれいにしてから、僕は器械の修理に取り掛かる。
外壁の材質はグラスファイバーだろうか、繊維状の硝子で固められている。経年劣化があまりみられないので、何らかの加工がしてあるのだろう。
あまり深く考えていなかったけれど、壺のような形のものが宙を飛ぶのも不思議な感じだ。空気抵抗や耐久性は大丈夫なのか。揚力は? 推力は? エネルギーは、どうやって得ているのかとか、疑問は尽きなかった。
ちなみに、僕が本格的に修理をはじめると、ケアヒルはふむふむと興味深そうに瞳を輝かせ、僕の作業を凝視していました、まる。