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亀が好きすぎる魔法使い  作者: ひかるこうら
第4章 Opened Capital and Unbinded Seal
97/114

1話 「これが、帝都か……」

 ■■■


 帝都内北門前。

 正方形の形をした帝都の、対角線と対角線を結んでできた4つの直角三角形の北側に位置する場所。外の様子を遮断する背の高い城壁が帝都をぐるりと囲い、その城壁は外と中を断ち切るだけではなく東西南北の街を仕切るためにも中にまっすぐ張り巡らせられていた。帝都には東西南北の街があり、その街はそれぞれ市民街である下層部と身分の高い者達が集う上層部に分かれていた。帝都の中央には天高く聳える城が鎮座しており、その城は禍々しいほどの黒いオーラを帯びていた。俗に瘴気と呼ばれる黒いオーラは中央の城だけでなく各街の上層部の方にまで浸食していた。この瘴気がこの帝都を蝕む元凶とも言えた。帝都の東西南北の門の守護獣を侵し、さらに街の中にさまざまな異変を起こす。人々は恐れ戸惑い、何が起きているか知らずにびくびくと暮らすばかりだった。


挿絵(By みてみん)


 帝都。英語を用いた名前を多く用いるMMOが、あえて漢字で名前を付けた街。その街はまるで日本の江戸時代に広がっていたような街並みだった。平らに均された通りの脇に犇めくようにして木造の家屋が立ち並び、食べ物屋やら宿屋やら何やらかんやら所狭しと建物が建っていた。所々から何かの食材を焼くいい匂いがしてくる。街行く人はその町並みに合わせる様に着物を着ている。江戸時代にタイムスリップしたような、夢のないような言い方をすれば日光にある江戸村に来たような、そんな感じを彷彿とさせる街だった。


 帝都の四方を守護するレイドボスを倒し終え、東南北の門にいたプレーヤー達は次々と門の先にある帝都の街の下層部に転移された。西にいたプレーヤー達はすでに帝都の前にある町プレキャビーの大聖堂に転移させられている。彼らは真っ先に帝都に入る手段を失ったのだった。

 帝都内に転移したプレーヤー達は目の前に広がる帝都の街並みに興奮の声を隠し切れなかった。事前情報はなく、どのような街並みが広がっているか想像するしかなかった。7日間にも続いた戦いを終え、ほっと一息を着いたところへ待ち焦がれていた光景が目の前に広がっていたのだから、その興奮の度合いは最高潮に達していた。




「ここが、帝都か……」


 ワースは思わずそう呟いた。

 教科書や映像作品の中でしか見ることの無かった和の空間が目の前にあったのだから。いくら亀にしか興味のないワースとはいえ、帝都の街に対しこのゲームをやり始めた時と同じくらいの、いやそれ以上の興奮が湧き上がってくるのを感じた。




『ようこそ、帝都へ。初めて見るこの街の様子に目移りするでしょうが、一先ずこのアナウンスをお聞きください。アナウンスが終わるまで現在地から移動できないのでご注意ください』


 そのしっとりとした美しい声が奏でる天の声(システムアナウンス)に、ワースは現在いる帝都北門前広場の出口に透明な壁が張ってあることに気付いた。おそらくあれが移動できない理由なのだろうと結論付けて、ワースはシステムアナウンスに耳を傾けた。


『まず帝都の状況について簡単にご説明させていただきます。現在帝都は謎の瘴気に侵され様々な異変が起きています。中央に聳える城をご覧ください。あれが瘴気の発生原因と考えられています。皆様には瘴気の原因を突き止め、それを止めるべく頑張っていただきたいと思います。詳しくはその都度お知らせしていきます』


 ワースは遠くに見える城が禍々しいオーラに包まれているのが見えた。なんだか近づきたくないなと思ってしまうのがワースらしかった。


『この帝都は東西南北に分かれ、その上、下層部・上層部と分かれています。皆様は北門を攻略されたのでこの北街に入ることができますが、他の街には入ることが現在はできませんのでご注意ください。なお、上層部、その先『封印城』へは下層部にて信頼されるだけの実績を身に着けてからでないと行くことができませんので、焦らず着実に街から信頼されるように励んでください。街ではモンスターの討伐、素材アイテムの採取、お使いなどのクエストが多数出ていますのでそれで信頼されるように頑張ってください』


 ワースの足元で小さくミドリがきゅーと鳴き声をあげる。ワースは屈んでミドリの頭をぽんぽんと撫でた。ミドリは気持ちよさげな表情を浮かべた。


『帝都について簡単な説明は以上です。後はこの帝都の街に入っていただけたらわかるかと思います。もし何か質問等ありましたらGM質問コーナー、もしくは役場の方へお願いします。

 さて、次にレイドボス攻略報酬についてです。この報酬については基本報酬、追加報酬、特別報酬の3つで構成されてお渡しします。基本報酬はこのレイドイベントに参加された方全員にお渡ししています。追加報酬はこのレイドイベント中の総与ダメージ・総被ダメージ・総消費MPなどのランキングによって報酬の値が変化します。特別報酬はレイドボスを倒された方、つまりこの場にいる皆さまですね、に与えられる報酬です』


 ミドリとワースを挟んで反対側にいるどろろはミドリがワースに撫でられていることに不満を持ち、ぎゃおぎゃおと鳴きながらワースに自分も撫でる様に催促した。ワースは仕方なしにどろろの頭も撫でた。


『基本報酬はお金になります。追加報酬の方はそのランキングの順位によって変動しますが、レアアイテムが報酬になります。中にはユニークアイテムが報酬に入っていますのでお楽しみに。そして、特別報酬についてですが、これはプレーヤーの取得しているメリットによっていくつか選択肢が与えられその中から一つ選んでもらうことになります。武器攻撃系メリットであればそのメリットに合った武器が、魔法系メリットであれば特殊な魔法が使えるようになるスクロール、生産系メリットであれば特別なモンスター素材・鉱石が報酬の選択肢に入ります。ここでいくつかの種類のメリットを持っている場合、選択肢が増えるだけで選べるのは一つだけなのでご注意ください』


 ワースの背中に張り付くべのむんは、ワースがミドリとどろろを撫でていることに嫉妬を覚え自分もかまえと体を揺らした。ワースは困った表情を浮かべ、ミドリとどろろを見詰めた。ワースの手は2本しかなく、べのむんを撫でようにもどちらかの手を放さなければならない。そうすればミドリもどろろも不満げな表情を浮かべるだろう。ワースはだったらと思い立ち、背中に張り付くべのむんを引き剥がし自分のお腹元へ引き寄せた。しゃがんだ状態で右手でミドリを撫で、左手でどろろを撫で、お腹でべのむんをかまう。そうすれば一気に3匹のかわいい亀達をあやせる、ワースはそう思った。結果、亀たちは満足げな表情を浮かべワースの為すがままに体を預けた。


『また、この特別報酬ですが、今あげた種類だけでなく他にも召喚系メリットやテイム系メリット、演奏系メリットなど様々な種類がありますので、ぜひ報酬選択をお楽しみください。

 報酬については以上です。

 これでシステムアナウンスは以上になります。長らくお付き合いいただきありがとうございます。これより帝都へ移動が可能になります。レイドイベントはまだ続いていますが、帝都の街をご堪能ください。それでは』


 そうシステムアナウンスは途切れ、プレーヤー達は我先と帝都の街の中へ飛び出していった。



「さて、行こうか」


 ワースはそう告げ、亀達を連れ帝都の街へ足を踏み出した。





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