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亀が好きすぎる魔法使い  作者: ひかるこうら
第3章 Imperial Capital
93/114

30話 ザ・ラストバトル

*2014/8/14タイトル変更

旧タイトル「ファイナルワー」(誤字にて、正しくは「ファイナルウォー」)→「ザ・ラストバトル」

 ■■■


 プレーヤー達は走る。それぞれの戦場へ。


 ワース達はこれまで同様にエボニーフォレストタートルの甲羅にそびえ立つエボニーフォレストマウンテンへ。ワース達と共に向かうプレーヤー達の数は、前回の数十人なんて規模ではなく千人近くが集まっていた。

 現在エボニーフォレストタートルのHPは残り1割のところでストップしている。これは前にもあったHPロックによるものだ。前は甲羅の上にある四方の玄室の墓守を倒すことによりロックが解除された。今回のロックの解除法はおそらく奥に待ち構えるボス黒盾を倒すことだと考えられる。

 そのため地上から攻撃するのも大事であるが、事態の解決のために甲羅の上に行くことも重要であるとプレーヤーの中で認識が改まった。元々興味のあるプレーヤーだけだったのが千人近くまで膨れ上がったのはそういう訳だ。とはいえ甲羅の上まで行くには身軽で尚且つ登れるだけの手段を持つ者に限られた。中には生産系メリットを突き詰めている生産者クランに依頼し、甲羅の上に上るものを用意してもらったプレーヤーもいた。


 地上で戦うプレーヤーはエボニーフォレストタートルの前面に集まり、甲羅の上に上るプレーヤーは後面に集まった。地上攻撃部隊は前衛と後衛に分かれて攻撃を開始し、甲羅侵入部隊は甲羅の傍まで近づき侵入準備を整えた。エボニーフォレストタートルは現在移動を停止しており、周りに生やした樹木による攻撃と魔法攻撃、口からビーム攻撃しか行っていない。どの攻撃も迂闊に食らえば消し炭になる威力であるが、幸い地上部隊に集中しているらしく後面にはほとんど攻撃が来なかった。地響きも起こしていないため侵入は容易かった。風魔法や飛行型ペットなどの飛行手段を持つプレーヤーが甲羅の上に上がり、縄梯子を設置したり。生産系クラン:タケシタ工務店の提供による簡易櫓を設置したり。中にはロッククライミングしたり壁面を走り抜けたりして、甲羅侵入部隊のプレーヤー達全員がエボニーフォレストタートルの甲羅の上へ上り終えた。今までミドリを足場になんとか登っていたワースだが、今回は組み立てられた櫓を使ってミドリ・どろろと共にエボニーフォレストタートルの甲羅の上へ登り切った。ちなみにベのむんは最初からワースの背中にへばりついていたようだ。


 全員が登り終えたことを確認した後、斥候職を先頭にエボニーフォレストマウンテンへまっすぐ行軍した。途中エボルタートルの部隊との交戦になったが、多勢に無勢であっけなく蹴散らした。そして、エボニーフォレストマウンテンの頂上までたどり着いた。山の頂上は靄に包まれ遠くを見渡すことができないが、地上の様子は何とか確認できる。赤黄緑青と色とりどりの魔法が光り、エボニーフォレストタートルにぶつかる。甲羅の上にいるプレーヤー達に誤射しないように着弾地点は顔ないしは甲羅の前面部だったため、影響はほとんどなかった。


 プレーヤー達は頂上から少し離れたところにある穴へ向かった。エボニーフォレストタートルのHPが1割を切った時に開いた穴は依然としてぽっかりと挑戦者を待ち受けていた。プレーヤー達はその先に待ち受けるものに臆することなく穴の中へ身を躍らせた。


 エボニーフォレストマウンテンの頂上から真下に降り、甲羅の地下一帯に広がる巨大な迷宮の中へ侵入したプレーヤー達は前回の攻略と同じように進んでいく。中の構造は変わっていないため、前回のマッピングデータをそのまま使えるため道を迷うことなく最深部を目指して行進する。道中アンデッドモンスターがプレーヤ-達の行き先を遮る。それでもそれを振り切るように倒し切り、先へ先へ進んだ。



 そして、プレーヤー達はこの迷宮、いやこの大地エボニーフォレストタートルを支配する少女:黒盾と再び出会う。





『よくもまぁ再び我が舟に姿を現せたものだな、この痴れ者が!』


 黒盾は手をさっと振るう。その動作で影からぞくぞくとモンスターが湧き上がる。


「行っくぞおおおおおおおおおおおお!!」

「「「おおおおおおおおおおおおおお!!」」」


 プレーヤー達は咆哮する。目の前の強敵へ、挑戦状を叩き付ける様に。


 最後の戦いはこうして幕を開ける。

 どちらかが負けを認めるまで、どちらかが消え去るその時まで。

 己の命を燃やし切るその時まで。




 ■■■


「ミドリ、『守護壁(ガーディア)』! どろろはそのまま援護射撃! 行くぞ、『範囲防御増大(サークルガードプラス)』!」


 ワースは杖に手を置きながら周りを見渡し、ペットに指示を出しながら付与術(エンチャント)を周りのプレーヤーに与えていく。


「きゅー」

「ぎゃお」


 ミドリはワースの前に立ち、迫り来るモンスターの攻撃を受け止める。どろろはワースの隣で他のプレーヤーのタゲを取らないように、且つミドリのタゲ取りを邪魔しないように口から泥弾を吐き出して攻撃する。タゲとはターゲッティングの略で、モンスターに攻撃を加えたり味方に回復魔法を撃ったりすることなどで溜まるヘイト値によって決定されるターゲット決定のことである。これをコントロールできないと脆弱な後衛に向かって攻撃されたり、味方の攻撃の邪魔になったりするのである。この場合、ミドリがワース達にタゲが行かないように挑発(タウント)系スキルを多用し、タゲをコントロールしているのだ。

 戦闘前まではワースの背中に引っ付いていたべのむんはというと、今はモンスターの陰に隠れながら隙を窺って攻撃しては影に隠れるというヒットアンドアウェイ戦法を取っていた。べのむんの耐久は低い物の攻撃力はミドリ・どろろよりも高く、攻撃力の低い亀系のモンスターであるものの他の攻撃特化モンスターのと遜色のない攻撃力を持っていた。べのむんの得意とする攻撃は毒を沁み出させた爪で敵の背後から一気に斬り付ける『ベノムバックスラッシュ』だ。その他にも、毒に加え硬直の状態異常を付与する『ベノムバイト』、敵の視線から逃れる『シャドウハイド』などを持つべのむんは、ワースの許から離れて一人戦場を駆け回っていた。


「ワース、行くぞ」

「おう、『魂活性化(ソウルアクティビティ)』! 行け」

「我が魔力を贄に、精霊を呼び出す。我の呼びかけに応え、水霊ウィンディーネここに来たれ! 『精霊召喚』!!」


 ワースに支援を頼んだノアは掛かった付与術(エンチャント)を確かめながらメリット『召喚術』のスキル『精霊召喚』を試みる。次に行うスキルの効果・成功率を上昇させる『魂活性化(ソウルアクティビティ)』に後押しされて『精霊召喚』は無事成功し、ノアの許に水属性の精霊:ウィンディーネがその姿を現した。見る者の心を奪う様な染み一つない美しい肌、小川のように滑らかに流れる水色の髪、天女の羽織っているもののような清水のように透き通った羽衣を纏っていた。ウィンディーネはノアの隣に立ち、召喚者であるノアの指示を待った。

 同じときにちょうど地霊ベヒモスの召喚に成功した召喚士のプレーヤーがノアに向かってサインを出し、ノアはこくりと頷きウィンディーネに命令を下した。


「味方に支援魔法を、敵に全体攻撃を」

「承りましたわ、ご主人様」


 にっこりと笑みを浮かべたウィンディーネは、同じように召喚されたベヒモスと共に味方プレーヤーに支援魔法を施し、その後流れる様にモンスター達に全体攻撃魔法を展開した。プレーヤー達に水色と橙色の仄かな光が降り注ぎ、モンスター達には豪雨と石礫が吹き荒れた。






「『ゲイルクラッシュ』!」

「よっと、そこ!」

「あ、ありがとうっす」

「なるべく隙ができないように気を付けないと、ね! 『血吸剣=斬』!」

「すごいっすね……私も頑張るっす」


 アカネとニャルラはモンスター達を前にして一人で攻め込むのでなく、互いに連携するように武器を振るっていた。アカネは大鎌を、ニャルラは2刀の剣を操り、モンスター達に勇敢に戦っていた。技術的に甘いアカネは大鎌だけに頼らず風魔法やその他のメリットを併用して敵を切り刻む。アカネが撃ち漏らしたモンスターは、ニャルラが狙い過たず剣で切り捨てていく。アカネをサポートするようにニャルラは動いていた。


「っと、次は黒鎧騎士ではなくネクロアーマーですかね」

「あぁ、そうだね。一応弾かれないように気を付けておきな」

「了解っす」


 アカネは目の前にゆっくりと迫ってくる、大柄でぼろぼろな鎧が浮かび上がっているモンスター:ネクロアーマーに狙いを定め、大鎌を振るう。左袈裟に振るわれた大鎌の刃がネクロアーマーの鎧に少し食い込み、ネクロアーマーは一瞬動きを止める。食い込んではいるものの切り裂けないとわかったアカネは落ち着きながらスキルを発動させる。


「喰らえ、『螺旋斬』!」


 鎌はその刃を中心に風を巻き起こし、噛み合った鎧をそのまま喰いちぎる。胴体を真っ二つに千切られたネクロアーマーは反撃しようと剣を振るうが、ニャルラの剣によって阻まれ、あっけなく切り刻まれた。


「よし、次行こう」

「わかったっす」


 アカネとニャルラは気負いすることなく次の獲物を求めて前へ進む。

 二人に時折ワースが付与術(エンチャント)を飛ばし、子音が回復魔法を掛ける。

 二人はそれを確かめながら決して無理することなく敵へ打ち向かった。



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