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亀が好きすぎる魔法使い  作者: ひかるこうら
第3章 Imperial Capital
67/114

5話 クリフロード

今回は木原ゆうさんより頂いたオリキャラが登場します。もっとも名前だけですが……


それでは本編へどうぞ!

 ■■■


 何度も戦闘を繰り広げ、ファングクリフを進んでいくワース達。ドロップアイテムや採取アイテムが増えていくたびに、HP・MPだけでない何かがすり減っていく感じがしていた。それは疲労。目には表れないものだが溜まれば戦闘に支障が出てくる代物。ワース達は精神をすり減らしながら前を目指して歩いていた。



「あー疲れた」

「うん、僕も疲れたよ」

「……まだ、私は大丈夫」


 3人がそういうのを聞いてワースは手を上げ皆の足を止めさせた。


「ここで休憩としよう。えっと、今は……20時か。とりあえず10分くらい休もう。このままだと集中力が切れるからな」

「りょーかい」

「わかった」

「……そういうことなら、休む」

「きゅー」

「ぐる、じゅわ」




 3人と2匹はそれぞれため息交じりの声を上げてその場に座り込む。ワースはミドリが足を折りたたみ地面に座り込んだのを見て、自分もそのごつごつとした結晶の甲羅に腰かけた。

 その様子に、あるふぁは口をぽっかり開けてワースに問い掛けた。


「えっと、ワース君。君は大事なペットに座る趣味をお持ちなのですか?」

「俺は特にないけど、ミドリは喜んでくれるからな。ほら」


 ワースがぽんぽんとミドリの頭を叩くと、ミドリはご満悦な表情の顔をもたげた。その表情にあるふぁは納得した。


「へぇ……不思議なもんだねぇ。座られるのが好きだとか」

「どろろも意外と好きだぞ。べのむんは小さすぎて座れないからわからないけど」

「ウチのペット達はそんなこと喜ばないよ……なぁ、ディノ」

「ぐーるぐる」


 ディノはあるふぁの顔を見てこくこくと頷く。どうやらその背中に座られるのは嫌なようだ。体をペタペタ触られたり、寄りかかられたりする分には問題ないが、座るのはダメらしい。元々リザードマンという種族はそれぞれが戦士という意識がある。ありていに言えばプライドが高い、といったところか。

 ディノは尻尾を自分の体に巻き付けて地面に腹這いになって休憩を取る。それが一番楽な姿勢のようだ。ゲームの中だから特にどの姿勢で休むもうが関係ないのだが、どうやらこだわりがあるようだ。


 ワースはミドリの頭をぐりぐりと撫で付けながらふと後ろを振り返るとそこにはテトラがいた。

 テトラはちょこんとミドリの甲羅の上に腰かけており、ミドリの甲羅の上で体を丸めてちょこんと座る様は、まるで猫のようだった。


 テトラは事あるごとにミドリをぺたぺた触っていたり今回のように甲羅に座っていたりするから、ワースはまたいつものことかと思いつつもテトラをじっと見つめた。テトラはそんなワースに首を傾げた。


「何?」

「いや、ミドリと仲良くしてくれるのはいいんだがな、そういうのは自分のペットにしたらどうだ?」

「……レイだと潰れちゃう」


 テトラにはレイというペットがいる。ブレイクロウという種族の真っ黒なカラスだ。翼は刃物のように硬く、触れたものを切り裂くことができる。大きさは手で抱えられるぐらいの大きくも小さくもなく、パーティ枠に余裕があるときはいつも肩に乗せている。ワースと一緒に行動するようになったテトラは秘かに『テイム』のメリットを取得して何時間も粘ってブレイクロウにテイムを仕掛け、レイをテイムすることに成功したのだった。


「レイは気難しいからもふもふされるの好きじゃない」

「そうなのか」

「だから代わりにミドリをもふもふする」

「いや、俺のペットなんだけど」

「……関係ない」


 テトラはぷいとワースから顔を逸らし、ミドリの甲羅を撫でる。






「なんかいいなー 僕も『テイム』取得しようかな」

「いや、アンタはまだ無理でしょ。LUC値が大して高くないんだからテイムできるかどうか微妙なところだし、他にも取るべきメリットがあるでしょ?余裕ができたら『テイム』を取りなさいな」

「はーいはい。今は難しいのはわかってるさ、さすがに」

「なら、よし」


 子音とあるふぁはそんなことを言いながらゆっくりと体を休める。







 ■■■


「さて、十分休んだな。先に進もう」


 ワースの一声に他のメンバーはいそいそと立ち上がり準備をする。準備と言っても現実とは違ってアイテムはアイテムストレージに入っているし、装備も容易に外れたりはしない。ようは心の準備という訳だ。


 ファングクリフに着いた時は空は青空だったが、今はもう夕日が辺りを照らしていた。この『Merit and Monster Online』というゲームは一日が6時間毎となっており、容易く日が昇り沈みをする。この仕様も時間が限られているプレーヤーに対する配慮だ。夜にしか出現しないモンスターや、昼にしか受けることができないクエストなどがあるためである。




 ワース達はファングクリフの道なき道を進んだ。新たなモンスターやアイテムを求めて。




 少し歩いたところでグレイファングウルフの群れと戦闘になり、無事に勝ちを収めた。

 すると、背後からプレーヤーの一団が近づいていることにテトラは気付いた。


「どこかのパーティだろうな」

「そりゃあ、新フィールドだもの。いろんなプレーヤー達が来ているよ。そもそもここまで誰にも会わなかったことが驚きだね」

「まぁ、そうだな」


 ワースは後ろをじっと見つめる。まだその姿は良く見えないが、どうするか悩みどころだった。このまま先に進んでしまってもいいのだが、一応後方のパーティに声をかけた方が後々なんだかんだ問題になるということはなくなる。この先に何があるかわからない以上、他のパーティと協力するのも悪くない。


「一応挨拶はしておこうか」

「それがいいと思う」


 ワースの言葉にテトラは賛同の声を上げる。

 あるふぁも子音も首を縦に振った。



 ワースはその場で待機しながら後方のパーティが来るのを待った。






「あら、貴方たちは……私たちが一番乗りと思っていたのに先がいらしたのですね」


 先頭を歩いている剣と盾を持った白銀の鎧を身に纏う女性プレーヤーが声をかけてきた。


「俺たちは『亀が好きすぎる魔法使いと愉快な仲間たち』のクランリーダーのワースです」

「わざわざありがとうございますわ。私は『シルバーバレット』の第2隊隊長のフロイランと申します。以後お見知りおきを」


 恭しくお辞儀をするフロイランにつられてワースもお辞儀をした。



「あっ、ワース君だ」

「ん?」


 フロイランの後ろにいる『シルバーバレット』第2隊のメンバーの一人が声を上げる。


「私だよ、覚えている?」

「えっと、あぁ!」


 ワースはぽんと手を打つ。目の前にいる2丁拳銃を腰に引っ掛けた黒い服の上から白い上着を着ている、セミロングの髪でスラッとした女性の正体に見当がついたのだ。


「ふみりんさんですね、たしか」

「そうだよ、お久しぶり」

「お久しぶりです」


 何か月か前にペガサスを助けた時に出会ったふみりんだった。



「あら、知り合いだったのね」

「えぇ、以前お会いしたことがあります」

「一応それぞれのメンバーを紹介しておこうか」

「そうですね」


 ワース達はそれぞれのパーティメンバーを紹介し合うことになった。


 『シルバーバレット』第2隊のメンバーは、隊長の『盾剣士(ガードナー)』フロイラン、2丁拳銃を操る『銃使い(スナイパー)』ふみりん、みんなのヒーラーの『聖歌隊(クワイアー)』のロゼッタ、大太刀という武器を使う『狩猟者』マヤ、びくびくおどおどしている鎖使いの『支援士(バッファー)』いつき、銀色のツインテールがまぶしい『魔矢使い(マジックダーツァー)』アメリアの6人で構成されていた。


「プレーヤー4人にペットが2匹とはなかなか面白いメンバーですね」

「ペット持ちが何人もいますから。それにしても『シルバーバレット』はバランスがいいですね」

「えぇ、前衛2人、中衛2人、後衛2人とどんな局面になっても対応できるようにしてありますわ」

「レベルも装備も、かなり強いですよね」

「それなり、と言っておきますわ」


 ワースとフロイランはそんな会話を交わす。

 二人はこの後どうするか少し話し合った。



「それではよろしくお願いしますね」

「えぇ、こちらこそ」


 自己紹介を終えた2つのパーティはそれぞれ協力しながらこのグレイクリフを進んでいくことにした。先に進むたびにモンスターの出現率が上がっているため、という理由があった。




 ワース達は先へ足を進めた。




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