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亀が好きすぎる魔法使い  作者: ひかるこうら
第3章 Imperial Capital
63/114

1話 アップデート

 ■■■


 年が明けて、『Merit and Monster Online』は相変わらずの人気を博していた。ゲームの人気ランキングでは必ずTOP3に存在し、初期発売・第2弾発売を買い炙れた人たちはさらなる発売を心待ちにした。

 そして、『Merit and Monster Online』が世に出てから6か月後の2月1日。第3弾として再び発売されることとなった。それに伴って、再び大規模アップデートが行われることになった。




 今回の大規模アップデートでは待望のレイドボスが実装されることになっていた。サービス開始からこのゲームに慣れ親しんできたプレーヤー達にとって朗報だった。


 また、ついに課金要素が盛り込まれることになる。まず手始めに新規参入プレーヤー用に初心者としてはなかなかの防御力を誇る鎧・服シリーズ『ダッシュシリーズ』が公開された。そして、既存プレーヤー用に帰還結晶と呼ばれるフィールドの一部のエリアを除いた全域で使用できる指定した街へ帰還できるアイテムが公開された。今まで歩いて帰るしかなかったところに、このアイテムは時間の節約と体力・アイテムの節制に気を配らなくても済むようになった。


 そして、第2次アップデートの時に行われた新規フィールドの解放・新規職業の解放が行われる。

 新たなフィールドとして、西の方にあるオーシャンスタッドや南の方にあるクライレイク、南東のグリムマーレ、トレントの森の先にあるエルフレーム、テフォル湿地帯の先のグレイエッジの、今までなかった先が解放されることになる。

 そして、アラス洞窟の先にあったプレキャビーという町があるのだが、今までは特に何もない町だった。それが今回のレイドボスに関連してその先の帝都への玄関として機能し始めるということになる。


 レイド戦の舞台となるのは帝都。帝都の詳しい情報は大規模アップデートの後に更新されていくことになる。ボス情報はすでに公開されていて、公開されているレイドボスは4体だ。


 帝都の南門を守るように存在するのが朱き大鳥:ヴァーミリオンフェニックス。

 東門を守護するのは青き龍:ラピスラズリブルードラゴン。

 北門でプレーヤー達の進行を阻むのは黒き亀:エボニーフォレストタートル。

 そして西門で待ち構えるのは白銀の虎:シルバーライトニングタイガー。


 まさに朱雀・青竜・玄武・白虎の4神をモデルにしたモンスターだった。ヴァーミリオンフェニックスが火とその上位属性の焔、ラピスラズリブルードラゴンが水と氷、エボニーフォレストタートルが土と大地、シルバーライトニングタイガーが風とその上位属性の雷を扱う。使う属性が事前に公開されていることからどのモンスターも魔法攻撃をしてくることは明白である。


 このレイドボスは、それぞれ東西南北の門の4ヵ所で戦闘することになり、この4体を倒すことによってレイドクエストがクリアとなる。

 期間はアップデートが終わって1週間後の2月8日から1週間。この期間中に各門にいる全プレーヤーで4体を倒すことで帝都へ入りことができるようになる。人数制限はなくパーティを組んでいる必要はなくソロでも参加は可能である。しかし、参加するプレーヤー達はレイドパーティと呼ばれる特別なパーティに加わっている必要がある。このレイドパーティに加わることで参加できるようになる。一回一回の戦闘は参加するプレーヤーのHPが全損するまでで、レイドボスの膨大なHPを全プレーヤーが協力して削っていくという形になる。HP全損したプレーヤーにはデスペナルティを受けることはないが、再びレイドボスに挑戦できるのは挑戦してから23時間後となる。なにせ1週間しかないのだから、いかにしてボスの特徴を掴み、効率的に攻撃が与えられるかが問題となる。



 もちろんこのレイドボスだけでなく、他の要素も追加されているため、プレーヤー達はレイドボス攻略とその準備と追加要素を楽しむことができる、との触れ込みだ。もちろん新規参入プレーヤーのためによりわかりやすいチュートリアルができたのだが、ここで述べる必要はないだろう。



 大規模アップデート中の現在。ゲームの外側では、掲示板などの情報交換の場で盛んにまだ見ぬレイドボスについて議論が重ねられているのだった。

 新規プレーヤーは今まで収集されたデータを見て、これからプレイできるゲームを夢見て。

 既存プレーヤーは新たに追加されたポイントを探って、どうするか話し合う。




 そして、待望のアップデートが終わった。








 ■■■


 亀が好きな青年:ワースはというと。



「っしゃーこれで終わりだ」


 武旗真価は大きく伸びをした。

 今日午前中に最後となる試験を受けて、それから家に帰って残っていたレポートを仕上げたのだ。


「お兄ちゃん、お疲れー」

「おぅ、明奈。聞こえていたか」

「うん。結構大きな声だったからねー

 そーいえば、お兄ちゃんは今日はどうするの?」


 明奈の言葉にふと時計を見る真価。


「まだ16時か。たしか17時からだよな」

「うん。ちょっと晩御飯との時間が微妙だよね」

「それじゃあ、先に食べちゃうか」

「そうする? じゃあ、お母さんに伝えておくね」

「あぁ、ってか、母さんは今何してる?」

「えっと、家にいるんじゃないかな?」

「なんで疑問形……」


 家にずっといたはずの明奈に苦笑する真価。今年高校受験生の明奈は前期選抜というもので、すでに行く高校が決まっていた。そのため明奈はこの春休みの間家にいることになる。1月の間はまだなんだかんだ学校があったのだが2月はほとんど学校がない。

 今日も明奈はずっと家にいたのだが……


「私、今日まだお母さんのこと見てないんだよね」

「おいおい。俺でさえ今朝見たぞ」

「また、部屋にこもってるのかな」


 武旗真価・明奈の母親である武旗(たけはた)鈴蘭(すずらん)は、普段はバリバリのキャリーウーマンとして働いてる。土日祝日関係なしに働きに出ているため、いつ家にいるのか家族でもなかなか把握ができていないのだが、今日は久しぶりの休みで家にいる。


「お母さんー」


 明奈が母親を探しに行ったのを確認して、真価は首をぐるぐると回した。


「さーて、今日は何を作るか……といってもこれからだと時間ないしな。簡単に炒飯でいいか」








 ■■■


 料理を手早く作り終え、すぐに食べ終わった真価と明奈はそれぞれ『ドリームイン』を掴んだ。


「あと1分でアップデート終わるよね」

「あぁ、明奈はどうするんだ?」

「私は『五色の乙女』があるから、そこで軽く会議しながら街を回るかな」

「そうか。俺はちょっとフィールド出てみるかな」

「じゃあ、もしもどこか出会ったらね」

「会えたらな」


 二人は『ドリームイン』を被り、スイッチを入れて目を瞑った。







 ワースはふと目を開けると始まりの街中央広場の街並みが飛び込んできた。



「よし、行くか」





 

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