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亀が好きすぎる魔法使い  作者: ひかるこうら
第2章 Going up Evolution Stage
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15話 暴風豪雨

『があああああああああああああああああ!』


 突如として、レイニードラゴンは吠えた。

 その咆哮は暴風を伴って、周りにいたテトラ・ニャルラ・ノア・しずくを吹き飛ばした。


「なに……」

「くぅっ!」

「うわあああっ!」


 3人と1匹は吹き飛ばされて、それぞれ塔の端まで飛ばされた。


「キレたか」


 ワースは怒り狂うレイニードラゴンを見てそう呟いた。翡翠色に輝く竜がうっすらと赤く染まっている姿に危機感を覚えた。


「ミドリ、防御態勢!」

「きゅーう!」


 ワースの指示に従ってミドリは手足を地面に押し付け、『エメラルドシールド』を発動させる。

 その刹那、ワースとミドリを暴風が襲った。


「くっ」

 ワースは吹き飛ばされないようにミドリにしがみついてなんとか耐える。ミドリは重心を低くして暴風に押されつつも吹き飛ばされないように踏ん張った。


 暴風はしばらく吹き付けた後、ふっと何事もなかったように治まった。


「ノア、テトラ、ニャルラ! 大丈夫か?」

 ワースが口頭チャットで他のパーティメンバーに声掛けると、すぐに返事が返ってきた。


「っ、てて。とりあえずなんとか大丈夫だ」

「……再接近中」

「いやー、今のは効いたね。いわゆる怒り状態かな、これは」


「あぁ、大丈夫で何よりだ。ニャルラの言う通り怒り状態になったから気を付けろよ」

「了解」

「もちろんだとも」

「よし、行くよ、しずく」


 ワースはその声を聞いて自分自身も攻撃の準備を整える。杖を振り、魔法陣を展開させ、魔法を発動させた。

「いけ、『アースグラビティ』!」



『アースグラビティ』

土属性魔法のレベルを一定まで上げることによって派生する大地属性魔法。対象1体に対し、地面へ向かう超常的な力を発生させ押しつぶす魔法。他の重力操作系魔法と違い対象1体にしか重力を当てることができないが、周りにいる者には影響がないのが特徴だ。



 『アースグラビティ』によって宙に浮くレイニードラゴンは地面に叩き落され、地面の上で体をくねらせ、もがき苦しんだ。重力操作魔法は対象となるものが重ければ重いほど効果を示す。レイニードラゴンの巨体は特に効果があり、地面に体を押さえつけられたままなかなか宙に浮かぶことができずにもがいていた。


 ワースはそんなレイニードラゴンを尻目に、魔法の維持に努める。出来るだけ長くレイニードラゴンを拘束するために。



「参る! 『シャドゥウォーク』『クリティカルアタック』『デッドリィダンス』!」


 いち早く攻撃を開始したのはテトラだった。影のように音も立てずに忍び寄り、急所部分に照準を合わせ、幾重にも斬撃を浴びせた。3つのスキルの同時起動を行って大ダメージをレイニードラゴンに与えた。


「俺も行くぜ! 『チャージアタック』からの『穿突』!」


 続いてニャルラもレイニードラゴンへ突撃する。走りこみながらそのまま突進する勢いで剣を突き出した。加速された剣はスキルアシストを受け光の奔流となってレイニードラゴンの鱗を深く穿った。



『があああおあああああああああああおあああああ!』


 レイニードラゴンは一際大きな叫び声をあげ、痛みと重力から逃れるように体を振り回すようにしてくねらせ、ついに宙に浮かんだ。


「っ、と。拘束外れてしまったか」

「おいおい、俺が攻撃する暇がなかったじゃないか」

「悪いな、ノア。そこまで余裕はないか」


 ワースは使える魔法を頭に浮かべながら何を選択するか考える。たしかにHPを削る攻撃魔法の方が早く倒せるだろうが、未だに怒り状態のレイニードラゴンを前に補助魔法を使わないと攻撃が怖い。ただ補助魔法と言ってもどういったものがいいか、考えあぐねていた。


「ワース、エンチャントが切れそう」

「こっちもだ、ワース」

「了解、みんな一回こっちに集まってくれないか。掛け直すから」


 ワースはパーティメンバーに掛け直す防御系の付与術(エンチャント)の準備をした。場所が離れていても効果を発揮する付与術(エンチャント)もあるのだが、自分の周りにいる者全員に掛けるタイプの付与術(エンチャント)の方が効果時間が長いのだった。そのため、一旦集まってもらうことにした。


 すぐに他の3人と1匹はワースの周りに集まり、ワースはすぐに『広域防御強化』と『範囲防御力増加(サークルガードアップ)』を同時に掛けた。ついでにテトラには『急所率上昇(クリティカルアップ)』を、ニャルラには『攻撃力上昇(パワーアップ)』を、ノアには『速度上昇(スピードアップ)』を掛けた。


「ありがと、ワース」

「さて、残りのHPを頑張って削りますかなっと」

「うん、行けそうな感じがするよ」


 3人はそれぞれ付与術(エンチャント)がしっかりかかっていることを確認して再びレイニードラゴンへ向かった。





 それから少しして。

 レイニードラゴンのHPはさらに少なくなり残り1割を切った。

 怒り状態のままのレイニードラゴンの攻撃は1撃1撃が重く、回復ポーションを飲みながらの戦いとなった。攻撃パターンはプレス・ブレスに加え、風を纏いながらの突進攻撃があった。

 それでもワース達はなんとか頑張って攻撃し、あと少しというところまでこぎつけた。


 しかし、残り1割というところでレイニードラゴンは新たな攻撃を仕掛けてきた。




「なんだ、これは……」

「うっ、前が見えないほど……」

「体が動かしにくい……」

「奴の動きが見え、ぐあっ!」


 ワース達を苦しめる攻撃、それは豪雨だった。今までの雨とは打って変わって、それはバケツをひっくり返したような雨でろくに前が見えず、体に雨がまとわりつき動きが阻害された。レイニードラゴンはこの雨の中動きが変わらず、むしろ生き生きしているかのように体を動かしていた。


「きゅ……」

 ワースを守るミドリもこの雨に顔をしかめた。


「こんな時には……」

 ワースは雨に打たれながら、土属性魔法の中にある『ロックマテリアル』をいくつか使用して簡単な小屋を組み上げ雨を凌いだ。魔法職にとってこの豪雨の中狙いが定めなれないのは致命傷だったからだ。


 VRMMOだからこそこの雨は脅威だった。雨がいかに怖いものか、ワース達はこの時大いに身に刻まれた。


 この雨の中、テトラとニャルラは耳をそばだてて雨の音の中レイニードラゴンの動く音を聞き分けてそれを元に行動していた。しかし、ノアはそんな技術を持っておらず、どう動きを察知するか攻めあぐねた。



「ぽるんがいたら楽だったのにな……」

 ノアの召喚獣のぽるんであれば傘を作り出し雨を避けることができたのだが、今はもうぽるんはいない。まだ再召喚できるだけ時間が経っていない。


「やれるとすれば……あれがあるか」

 ノアは何とかこの状況を打開できるかもしれない方法を思いつき、すぐに行動に移した。


「『召喚術』我が名において、水の妖精ニンフを、召喚する! 来てくれ!」



 ノアの手が青く光り、『召喚術』が発動する。『召喚術』は召喚獣ならば必ず召喚することができるが、妖精となるとそうはいかない。成功率が決まっていて、ノアは今まで一度も水の妖精ニンフを召喚したことがなかった。発動はしても、召喚成功となることはなかなか難しいのだ。ニンフの召喚成功率は47%。召喚成功不成功に関わらず発動した時点でMPは消費されるため、この勝負は一か八かだった。



 そして、ノアの目の前の空間が青く光り、その光は人型を取った。



『初めまして。私に何か用かしら』



 ノアは無事にニンフの召喚に成功した。



来週更新できたらいいな……

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