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亀が好きすぎる魔法使い  作者: ひかるこうら
第2章 Going up Evolution Stage
49/114

13話 雨塔捜索

これでお正月投稿祭りはおしまいです。

 ■■■


「『広域防御強化』」


 ワースは杖を振るい付与術(エンチャント)をパーティ全体に掛けた。マッドタスとミドルゴーレムの素材を使って作られた杖を装備することによって使用可能となった付与術(エンチャント)『防御強化』。その効果は防御力を加算させる『防御力増加(ガードアップ)』とは違い、防御行動でガードできる対象を増やすことができるようになる。例えば格下の魔法攻撃やブレスをガードできるようになるのだった。


「……『隠密(シークレット)』」

 テトラはメリット『隠蔽』に属するスキルを発動させ気配を薄くした。『隠密(シークレット)』は敵に見つかりにくくするだけでなく、敵愾心(ヘイト)を上がりにくくする効果がある。防御力に不安があるテトラはこれにより攻撃を食らいにくくなった。


「よし、『本気』!」

 ニャルラはメリット『奮起』に属するスキルを発動させる。『奮起』は少し珍しいメリットで、本人の意思によって効果が変わるというものだ。本人がやる気になればなるほど効果は最大値まで引き上げることができる。しかし、やる気にならなければいくらスキルを発動させても効果は発揮されないというデメリットを持つ。

 ニャルラの使った『本気』は戦闘前に発動させると攻撃力と敏捷値を1~1.3倍にする。効果持続時間は一戦闘が終わるまでとなっている。必要なMPは少ないのだが、なかなか最大値まで叩き出すのは難しい。扱いが難しいがそれが面白いということでニャルラは使っている。


「しずく、ぽるん。準備はいいね」

「わぅん」

「(くーるくーる)」

 ノアは召喚術で水属性中級召喚獣であるぽるんを呼び出し、傍に付き従うしずくと共に戦意を確かめ合った。





「さて、テトラ。敵は何体だ?」

「ん、6体。『レインシャドゥナイト』3体、『レインシャドゥシーフ』2体『レインシャドゥマジシャン』1体」

「おっ、こっちの鑑定結果が出た。武器は持っているものの通り、特殊攻撃はわからなかったけど、魔法使いの方が水属性魔法を使うようだ。後、全員水属性耐性付きだ」

「よし、わかった。戦術は伝えた通り!手始めに俺から。『詠唱短縮』『ロックストライク』!」


 ワースは状況を理解すると、『詠唱短縮』を使い詠唱時間を普段より縮めた魔法を放つ。岩の塊はワースの杖の先から飛び、『レインシャドゥ』の集団のど真ん中に飛び込んだ。メリット『詠唱』の中で詠唱時間を短縮するスキルはいくつかあるが、その中でのどれだけ縮められるか順序を示すならば『詠唱短縮』<『詠唱省略』<『詠唱破棄』となる。最上位の『詠唱破棄』となると制約はあるもの詠唱時間そのものを存在させずに魔法を撃つことができるようになる。 この系統のスキルは使用できる魔法が限られるが、素早く魔法を放てるため有用である


「ぼぉおおお」

「おおおーん」

「ぼらぼらぉ」


 『レインシャドゥ』の集団は突然の魔法攻撃に驚き、HPを削られた。辺りをきょろきょろしながら攻撃を仕掛けてきたワース達を見つけるなりそれぞれ武器を構えた。


 『レインシャドゥ』は青くぼぉっとした炎のような1メートルくらいの人型のモンスターだ。『レインシャドゥナイト』はそこに金属製の片手剣と胸当てをしていて、『レインシャドゥシーフ』は小さなナイフを持っている。『レインシャドゥマジシャン』は青い石が先端に埋まる杖を持っていた。


 ワース達へ先に突っ込んできたのは『レインシャドゥシーフ』の2体で、その後ろを『レインシャドゥソルジャー』が『レインシャドゥマジシャン』を守るようにして剣を構え、『レインシャドゥマジシャン』は魔法詠唱に入っていた。



「いく」

 テトラはそうぼそりと呟き、近づいて来る『レインシャドゥシーフ』に駆け寄り、すれ違う瞬間に短刀スキルを発動させる。


「『デッドリィダンス』」

 テトラの忍刀は赤黒く輝き、『レインシャドゥシーフ』に何度も斬撃を浴びせた。元々『隠密(シークレット)』を使っていたため気配を察知できなかった『レインシャドゥシーフ』は突然の攻撃にうまく躱すことができずテトラの攻撃を無防備に受けた。


「ぼぉおっ」

「っ!」


 テトラは一体の『レインシャドゥシーフ』に攻撃したところで、足を強く踏み切り宙返りした。テトラが飛んだ瞬間、それまでテトラがいたところを目掛けてもう一体の『レインシャドゥシーフ』がナイフで切り掛かった。

 いくら気配を薄くしていたとはいえ、いざ味方が襲われているとなれば援護するのだった。


「しずく!」

「わおん!」


 しずくは『レインシャドゥシーフ』に接近しながら口から氷柱を吐き出す。その氷柱はテトラに切り掛かろうとしていた『レインシャドゥシーフ』の体に突き刺さり、その『レインシャドゥシーフ』はたたらを踏んだ。


「……ナイス」

 テトラは少し離れたところに着地し、投げナイフを投擲した。ナイフは氷柱を受けた『レインシャドゥシーフ』の顔に当たり、『レインシャドゥシーフ』は大きく仰け反った。


「『穿突』!」

 ニャルラが片手剣を突き出すように突進し、もう一体の『レインシャドゥシーフ』の体を穿った。すでにテトラの『デッドリィダンス』を食らい、その上に攻撃範囲の狭い代わりに攻撃力の高い『穿突』を食らい、『レインシャドゥシーフ』は大きく吹っ飛びながらその体を光として散らした。シーフであるからためHPは低めということだった。


「ちょっ、あぶなっ」

 ノアはテトラ・ニャルラに引き続き突撃したものの、『レインシャドゥマジシャン』が発動させた水属性魔法をまともに食らいそうになり少し慌てた。『レインシャドゥマジシャン』が発動させたのは大きな水弾を飛ばす『アクアスマッシュ』。ノアは剣に魔力を纏わせる『マナブレイド』を発動させ、大剣でその魔法を受け止めた。


「らあああ!」

 ノアの大剣と水弾はぶつかり合い、しばし互いに押し合った後大剣は水弾を切り裂いた。


「行くぞ!避けろよ!『マテリアルインパクト』!」

「りょーかい」

「……」

「わかったよ」


 ワースの叫びに、一同は一斉に両脇に避ける。その間を巨大な岩の塊が螺旋階段を駆け上がるようにして飛んできた。その岩の塊を、残った『レインシャドゥシーフ』は抵抗できずに轢き殺され、『レインシャドゥナイト』達は受け止めようと剣を使ってガードするもののその勢いに受け止めきれず、後ろの『レインシャドゥマジシャン』を巻き込んで吹き飛ばされた。


「……すごい」

「やあやあ、やるねー」

「相変わらずえぐいな」


 3人はそれぞれ反応を示し、残った『レインシャドゥナイト』と『レインシャドゥマジシャン』を殲滅しべく動いた。


「おおおーん」

「っ!」


 テトラが一体の『レインシャドゥナイト』に接近した時に雄たけびを食らい、わずかな間体が硬直してしまった。


「おおんおん」


 その隙を後ろに回っていた『レインシャドゥマジシャン』が杖でテトラを突いた。


「うっ」

 攻撃を連続で受けたテトラは体を仰け反ってしまった。まさか『レインシャドゥナイト』が咆哮を使って硬直させてくるとは思わず、あまつさえ後衛の『レインシャドゥマジシャン』が杖で攻撃してくるとは予想外だった。


「おおーん」

「きゅーい」

 『レインシャドゥナイト』がチャンスとばかりに剣を振るう。その一撃を脇から突撃してきたミドリがテトラを庇うように受け止める。

 

 テトラはミドリが稼いだ隙を使って体制を整え、ミドリの甲羅に掴まりながら至近距離で投げナイフを投げつけた。テトラは投擲しながらミドリの甲羅を飛び越え、忍刀を軽く振り上げる。


「『斬首』」

 振り下ろされた忍刀は狙い違わず『レインシャドゥナイト』の首を刈り取る。クリティカルポイントを攻撃された『レインシャドゥナイト』のHPは完全に0になり、その体は光となって消えた。


「らしゃああああああ!」

 少し離れたところでノアが大剣を振るい、『レインシャドゥナイト』と渡り合う。


「『一の太刀』『二の拳』!」

 別の『レインシャドゥナイト』を相手取るニャルラは、片手剣で切り付けた後すぐさま空いた拳で『レインシャドゥナイト』の無防備な腹を殴り付ける。


「『キューストライク』」

 ワースはワースでいつの間にか『レインシャドゥマジシャン』に接近し、棒術で『レインシャドゥマジシャン』を圧倒させる。




 そして、それからほとんど時間をおかずに戦闘は終了した。



「まぁ、こんなところだろう」

「うん、ちょっと大変だったね」

「戦闘パターンとしてみると同じ人型モンスターであるゴブリンより頭いいな」

「連携が取れてる」

「そこを注意して先に行きましょう」






 一行はそれから何度となく『レインシャドゥ』と戦闘を繰り返し、螺旋階段を登って行った。






 

 


次回は来週10日0時に投稿します。お楽しみに。

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