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亀が好きすぎる魔法使い  作者: ひかるこうら
第2章 Going up Evolution Stage
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10話 魔物部屋

夏に行ったオリキャラ募集で頂いたキャラが登場します。いずむさんから頂いたメルといずなです。ようやく登場させることができました……

それでは、本編をどうぞ!

 ■■■


「だから、私は嫌だって言ったのに!」

「ごめんごめん、イケると思ったんだけど」

「ふん、あーあ。レミもラグーンも死んじゃったじゃない。なんでアンタが生きてるのよ」

「それは、なんでだろうね。っと、危なっ」


 青年と女は互いに言い合いながら迫り来るモンスターを切りつけながら逃げていた。パーティは4人いたのだが、その内の初心者である二人はさっさとモンスターの波に飲み込まれ、残りの経験者である二人は生き残っていた。

 青年の名前はメル。線の細い童顔の青年で、顔に反して声は少し低めで、身長は男性にしては少し小さめだった。両手にはそれぞれ剣が握られていて、革でできた防御力より動きやすさを重視した服を身に着けていた。顔の下半分には黒革のマスクが付けられていて、怪しさが漂っていた。

 一方、女の方の名前はいずな。パッチリ猫目でポニーテール、声は高めで、身長は女性にしてはそれなりに大きめでスレンダーなモデル体型をしていた。全身を金属の鎧で包み覆い隠し、手には身の丈ほどの大剣が握られていた。


「まったく、なんでアンタなんかと一緒にいなきゃならないのよ」

「仕方ないじゃないか、あの二人からレクチャーしてくれって頼まれたんだし」

「そういうことを言っているんじゃない!」


 いずなはメルの適当さにいらついていた。いずなはいつも綿密な計画を立て、その計画通りに行動していた。対して、メルは物事を直感で決める気まぐれ屋だった。二人は互いに幼馴染で同じ大学の学部に通う仲だが、その性格から互いになかなか相容れなかった。互いに第1陣としてゲームを始めたが、まったくパーティを組んだことはなかった。今回同じ学部の仲間二人がMMOを始めるとなって、初心者な二人をレクチャーするためにパーティを組んだのだが。どんどん突き進んでいったメルがモンスターハウスを引き当ててしまったという訳だった。


「くっそっ!」

 メルは双剣を煌めかせ、襲い掛かってきたワームを切り捨てた。

 双剣スキル『ツヴァイシュナイデン』。右袈裟切りと左袈裟切りを組み合わせた攻撃で、同時に行われるため強大な攻撃が行えるスキルだ。『双剣』のメリットは、最初から取得できるものではなく、『片手剣』メリットのレベルを上げ、かつ右手左手別々でスキルを使った回数によって『双剣』の取得が開放される。『双剣』メリットから使用可能になるスキルはどれも一回一回の攻撃力よりも手数の多さに特化していて、連撃が多い。総合的な攻撃力は高いが、その分隙は多く、また攻撃範囲もそこまで広くないためピーキーなメリットと言えるのだった。メルはこの『双剣』メリットを取得していた。


「ふんっ!」

 いずなは視界の端から糸を飛ばしてきたグリーンワームを、大剣で糸を受けて糸を吐いたグリーンワームを引き寄せ切り捨てるという芸当を見せた。

 いずなは『大剣』と共に『武器防御』のメリットを持っていて、そのレベルはどちらも高い。いずなは盾を持たない代わりに大剣で攻撃を防いできた。幅広な金属の大剣を扱っているため、ガードの扱いがしやすかった。また、『状態異常耐性』のメリットも所持していて、これもまたレベルをそれなりに上げていた。そのおかげでグリーンワームの糸攻撃の追加効果『拘束』を完全に無効化し、逆にその糸を使って引き寄せることができた。


「このままじゃ埒が明かないわね」

「ん、向こうにプレーヤーが何人かいるみたいだ」

「そう……それじゃ、助けてもらえるかな」

「わからない、でも行ってみようよ」


 メルといずなは後ろを向いたままモンスターから遠ざかるように移動し、部屋を移動していった。





 ■■■


「よし、いいだろう」

 ワースは自分も含めてパーティ全員に長時間持続する防御系エンチャントを掛けた。傍らにはどろろがやる気に満ちた表情で足を踏み鳴らしていた。ノアも召喚獣のぽるんを召喚し、準備は万全だった。しずくは毛づくろいを済ませ、遠吠えを上げた。一方、アカネは自分の『索敵』に映るモンスターの多さに緊張していた。すぐに回復ポーションが取り出せるようにアイテム欄を操作し、武器である鎌をぎゅっと握りしめた。


「さぁ、行く……いや、来るっ!」

 ノアが叫ぶと、部屋の扉がバンと開かれ、二人の男女のプレーヤーが転がり込んできた。その後ろから、うようよとワーム達が追いかけてくるのが見えた。


「大丈夫か?」

 ワースが問いかけると青年:メルが答えた。

「あぁ、モンスターハウスを踏み抜いた。手助け、頼めるか?」

「問題ない。行くぞ」


 ワースの呼びかけに従ってどろろは突撃した。目の前にいたワームに噛み付き、その体を持ち上げて別のワームに投げつけた。どろろの特徴は、泥を投げつけたり地面の匂いを追いかけたり振動を察知したりできること以外に、存外力持ちで体力に自信があることだ。そのため、こういった芸当ができたりするのだった。

 その後ろをノアとぽるんとしずくが走りこんだ。ノアは大剣スキル『大輪絶波』で群がるワーム達を薙ぎ払い、中級召喚獣であるぽるんがいくつもの水球を浮かべ、それをまだ体力を残すワーム達に次々に発射した。アイスニードルウルフであるしずくは、軽々とワームの攻撃を躱しながら瞬時に生成した氷柱をカウンター気味に撃った。

 メルといずなは息を弾ませながらアカネやワースに守られながら、回復ポーションを呷って息を整えた。

 アカネはノア達前衛が取りこぼしたワームを鎌で丁寧に刈り取った。

 ワースは状況を見ながらアカネと共に杖でワームを倒しながら、魔法を詠唱した。


「どでかいのいくぞ!」

「了解!」


 ワースの合図でノア達は一斉に両端に避けた。そこへワースによって紡がれた魔法が飛んできた。

 土属性魔法『マテリアルインパクト』。

 巨大な岩の塊を発射する魔法で、この魔法は敵にぶつかったりしても基本的に止まらない。その耐久力が尽きるまで飛び、耐久力が尽きたところで爆発する。狭いところで使うと、相手は回避できずに轢き殺される。ガードされると大した威力は見込めないが、こういう制圧戦では圧倒的な効果をもたらす魔法だ。


「サンキュー、ワース!」

「がおっおお!」

「わおおおん!」


 ノア達は一時的に勢いを失った敵を前に飛び掛かっていった。



「あの、ありがとうございます。お強いんですね」

 息を整えたいずなが強大な魔法を放ったワースへ話しかける。

「そんなには。それで大丈夫ですか?」

「お気遣いありがとう。ダメージ自体は大して受けてなかったけど、あまりの多さにちょっと疲れてしまって。もう大丈夫です」

「そうですか、それなら行けますか?」

「えぇ。ほら、メル。アンタ、もう大丈夫でしょ、行くよ!」

「せっかくなんだから、もうちょっと休んだっていいじゃ」

「いいから、行く!」

「へいへい」


 ワースは二人の様子に何か気安い関係のようなものを感じた。


「まぁまぁ、彼らが頑張ってくれているので大丈夫でしょう。それよりせっかくですから二人のこと聞かせてもらってもいいですか?」

「えぇ、いいわ。戦いながらでいいかしら」

「もちろん」


 ワース達はお互いがここに来た事情を話しながらノア達を追いかけた。





 5分後。

 モンスターハウスだった部屋からモンスターがほとんど駆逐された。


「ふぅ、これで。最後だね」

「お疲れ、ノア」

「そっちこそ、ワース。それと、メルさん、いずなさん、でいいのかな。そっちもお疲れ様」

「えぇ、改めてだけど助けてありがとう」

「いえいえ、たまたま出くわしたからですよ。ね、ワース」

「あぁ」


 話していると、ふと、チャイム音がして目の前にウィンドウが現れた。


『モンスターハウス踏破完了おめでとうございます!

 取得アイテム:緑砦の秘宝』


『緑砦の秘宝』:グリーン砦に隠された秘宝。困難を乗り越えることによって姿を現すという。レア度:9


「『緑砦の秘宝』ってなんなんだろう……武器や防具に使えるのかな」

「あれっ、いずなもこれが来たのか?」

「ということはメルも?」

「うん」

「ワース、俺もだ」

「ワース、私も」

「あぁ、ということは参加した人全員にこのアイテムが配布されたんだな」


 一同はウィンドウを見ながら、これをどう使うか思いをはせた。




「さて、俺たちは神殿に行って残りのパーティメンバーを迎えにいくよ」

「そうね、だからここでお別れね」


 メルといずなと互いにフレンド登録を交わし、ワース達は始まりの街に帰るメルやいずなと別れ、ボス部屋へと向かった。





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