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亀が好きすぎる魔法使い  作者: ひかるこうら
第2章 Going up Evolution Stage
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7話 緑玉盾亀

「ミドリ」

「きゅい」


 しばし抱き合っていたワースとミドリは、抱擁をといて皆の方へ向いた。


「その姿って?」

「なんか凄い」

「しずくよりかっこいいんだけど」

「……ガルッ」

「へぇ、初めて見たね」

「こんなモンスターいたのか」

「EWのデータ見たけど、こんなのいなかったぞ」


 ワースを除いた一同はそれぞれの反応を見せた。


「エメラルドタートルって言うらしいんだ」

 ワースの言葉に一同は納得の表情を浮かべた。


 ミドリは少し誇らしげな表情を浮かべた。


「それにしても、しずくもカッコ良くなってるな」

「くぅーん」

「そうだろ、俺もここまでカッコ良くなってくれるとは思ってもみなかった」


 ワースとノアはペットを進化させた同士互いのペットを褒めあう。




 そんな中、シェミーがこの場を仕切るように言った。


「とりあえず、ここから戻ろうじゃないか。こんな場所で長居したって特に何かあるとは思えないよ」


 一同は『進化の兆しを照らす泉(エボリューションスプリング)』を後にした。






 ■■■


「がるっ」

「ぎゅー」


 『進泉に至る小道』にて。

 スプラッシュウルフや水色の毛皮のアクアベア、はたまた行きでは姿を見ることができなかった拳大の大きさの蜂の姿をしたステップビーに遭遇し、ミドリはタンクとして攻撃を受け止め、他のメンバーの攻撃チャンスを作った。


「ミドリ」

「きゅ、きゅぎゅー」


 エメラルドタートルになって取得したスキル『ジュエルガード』を使って攻撃を受け止める。

 『ジュエルガード』とは使用している間は受けるダメージを半分にし、受けたダメージと同じだけのダメージを相手に与えるというスキル。相手にもダメージを与えることによって相手の敵愾心(ヘイト)も上げることができるという代物だ。

 エメラルドタートルになって一層上がった防御力により向かって来るモンスターの攻撃をものともしなかった。


「『スネークバイト』!ふぅ、タゲが全部ミドリちゃんに向いてるからやりやすいね」

 短刀を振り下ろし一息ついたランランは嬉しそうに言った。


「こっちも、しずく!」

「がるぅー」


 ノアが負けじとしずくを呼び、それに応えるようにしずくが『アイスニードル』を飛ばし、軽いステップを踏むかのように飛び回るステップビーの体を穿った。自身の名を冠するスキル『アイスニードル』は口から氷柱を作り出しそれを飛ばして相手に攻撃するスキル。消費するMPが少なく、連発がしやすいスキルだ。


「ブーン……」

「ぐるっ」


 次々と氷柱を飛ばしステップビーを倒していくしずく。進化する前よりも攻撃力が上がり、かつ攻撃精度も上がっていた。


「よくやったな、しずく」

「くぅーん」


 しずくはノアに褒められ、喜びの声を上げた。

 ノアとしずくの姿はそれが今日初めて出会ったとは思えないほどだった。


「それにしても、私たちの出番ないねー」

 シェミーはワース達の奮迅に苦笑しながら言った。





 ■■■


「いや、それにしてもなかなか面白いものが見れたよ」


 泉を出て、小道を抜け、トレントの森を超えて一行は、ユリレシアまで戻ってきた。

 ワース達とシェミー達とはそこでようやく別れることになった。


 シェミーはとても満足したような表情を浮かべて手を出した。

 その手をワースは、こちらも満足気な表情を浮かべて握り返した。


「こちらこそ。シェミーさん達がいてくれたおかげでなんとか楽しめました。今回はありがとうございました」

「ふふん、またいつか会えるといいわね」

「そうですね」


 そんなこんな会話をして、シェミー達はユリレシアの街へ消えていった。




「行っちゃったね」

「あぁ」


 メイがぽつりと呟いた言葉にワースは言葉を返す。

 シェミー達は騒がしくおかしな連中だったけれど、存在感が大きくいなくなるとどこか寂しいものを感じさせたのだった。


「まぁ気を取り直して街でも散策しようじゃないか」

「そうだな……」


 ノアの言葉にワースは頷きながら時計を見る。時刻は24時5分。就寝の準備するにはまだ早い時間だった。


「じゃあ、ちょっと街見て回るか。二人はどうする?」


 ワースはメイとランランに声をかけた。『五色の乙女』のメンバーである二人に何か用事があるかもしれないと思ったからだ。


「大したことではないですが、ちょっと始まりの街に用事があります」

「まぁちょっとね」


 ランランとメイの言葉にワースは少し考えた。


「そうか、それならもし迷惑じゃないなら俺らもついていこうか」

「いいよ、武器のメンテに出すだけだから」

「メイちゃんが言うんならそれでいいよ。ついでにマリンさんのところにでも寄ろうか」

「それじゃ、行きますか」



 4人はユリレシアの街の入口にある門から始まりの街へ転移した。






 ■■■


「ふぅ、今日はいろいろあったね、お兄ちゃん」

「まぁ、そうだな。今日は本当にいろいろなことがあって疲れたな」

「うん」


「ランランさんの用事は済んだの?」

「うん、武器のメンテだけで終わりだからね。ノアさんは?」

「俺はマリンさんっていう鍛冶屋のところにこの大剣をメンテしてもらうだけだから」

「そっかー、せっかくだからフレ録してもらっていい?」

「いいよ。それじゃ」 


 ワース×メイ、ノア×ランランの組み合わせで始まりの街を歩いていた。

 『五色の乙女』御用達の武器屋でメイとランランの武器のメンテナンス(耐久値の回復や武器のバッドステータスの回復などを行うこと)をしてもらい、今度はワースとノアの武器のメンテナンスのためにマリンの店に向かっていた。


「さて、この後はどうしようか」

「もうそろそろ落ちるかな」

「そうか、わかった」


 ワースが明日どうするか、前も碌に見ずに考えていると、ぽすりと何かがワースの胸元にぶつかった。


「おっと」

 ワースがふとふわりとした感触に目の前を見ると、そこにはワースの胸元ぐらいの身長の少女がいた。

 身に付けている防具は安っぽい輝きを放っていて、いかにも初心者という雰囲気を醸し出していた。

 さらさらと流れる金色に輝く髪、幼くも大人らしくもちょうど中間に属するような顔、くりくりっとした漆黒の瞳。

 それが目の前の少女だった。


「大丈夫か?」

「あっ、大丈夫っす。すいませんっす」


 乱暴な言葉遣いとソプラノの透き通った声。

 一見相反するように思えるものだが、その少女の話した言葉はそれであった。


 その少女はどこか不安げな表情を浮かべながら逃げるように立ち去って行った。

 ワースはその少女を呼び止めるわけでもなくその場に立ち尽くした。


「なんだったんだろう、あの子」

「ワース、大丈夫か?」

「どうかしたんですか?」


 上から順にメイ、ノア、ランランがワースに向かって気遣いの言葉をかける。


「いや、なんか」

「ん?」

「なんだかな、今ぶつかった人どっかで見たことあるような気がしてだな」

「えっ、ここで?」

「いや、ゲームの中じゃなくて、リアルの方で。ちょっとここ1年ぐらいの間かな、たぶん」

「大学の人?」

「うーん、どうなんだろう」

「ワース、なんか俺もさっきの人の声を聞いたことある気がするんだけど」

「そうか、ノア?」

「あぁ、俺の場合はなんか最近聞いたような」

「ゲームの中ではないと思うんだけどな」


 ワースは何かを思い出そうとするもののうまく思い出せずに顔を顰めた。


「それはまぁ置いておこう。マリンさんの店に早く向かうとしよう」

「わかった」

「そうだねー」

「行こー」


 4人はマリンの店に向かった。




 

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