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亀が好きすぎる魔法使い  作者: ひかるこうら
第2章 Going up Evolution Stage
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4話 進泉区域

今回はあの人が出ます。水深無限風呂さんに感謝を述べておきます。

 ■■■


 『トレントの森』に繋がるフィールドの名前が『深林(しんりん)に至る小道』。そして、ワース達がいる場所が『進泉(しんせん)に至る小道』。場所が近いのと語感が似ているため、どちらも何か関わりがあるように思えた。少なくとも『進泉(しんせん)に至る小道』の先には、『進泉(しんせん)』というフィールドがあるのだと予感させた。



「ここが、追加フィールドなんだね。さっきよりなんか雰囲気が違う……」

「たしかにそうだな」

「うーん、なんかさっきより水気が多いせいかぽるんの動きが活発になってる」

「索敵範囲には……まだモンスターはいない」


 一行はそれぞれ思い思いにフィールドを見渡しながら歩いた。


「ミドリ、どうした?」

 ワースは傍らにいるミドリの様子に疑問に重い声をかけてみた。


「きゅーきゅっぷっ!」

「ちょっと、ミドリ!」


 いきなりミドリは道の先へ走り出した。そして、その姿はまたたく間に見えなくなった。


「どういうことなんだよ!」

「ちょっと待って、ワースさん! 敵が!」

「ワース、今は目の前の敵のことをどうにかしないと!」

「ミドリちゃんなら、きっと大丈夫だよ!」


 飛び出そうとしたワースをランランとノアとメイは必死に引き止めた。


「初めて見るモンスターみたいでよくわかんないけど、数は4つ! 動きが狼みたいな獣っぽいから、気を付けて!」

 ランランの警戒の声に一同は気を引き締めた。ワースもミドリを追いかけたい気持ちを抑え、目の前のことに集中し始める。

 一同の前に、がさがさと音を立てて水色の狼が4頭現れた。


 ランランが『索敵』同様に使ってきたメリット『鑑定』のスキル『鑑定』を使ってモンスターのステータスを探ってみると、相手のレベルの関係で名前しか表示されなかった。『鑑定』系のスキルは対象のステータスを見ることができるスキルで、自分のレベルが相手よりも高い場合多くの情報を得ることができる。しかし、逆に自分のレベルが相手より低い場合情報を得られなくなる。今回の場合相手のレベルがランランのレベルと同じくらいだったせいで名前しかわからなかった。


「そいつらの名前は『スプラッシュウルフ』。名前からすると水属性の可能性が高いね」

「りょーかい!」

「オーケィ!」


 メイは盾と片手剣を中段に構え、ノアは背中の大剣に手を掛けて傍らのぽるんに指令(オーダー)を出した。

 ワースは傍らのどろろに周囲の警戒をさせた状態で魔法の詠唱を行なった。ワースの足元には赤い魔法陣と茶色の魔法陣が重なり合って現れた。『付与術(エンチャント)』の『攻撃力増加付与(アタックプラスエンタチャント)』と『土属性魔法』の『ロックストライク』の魔法陣だ。ワースは『詠唱』の『口頭詠唱』により『ロックストライク』の方を口頭詠唱して同時詠唱させていた。


「ここに魔法を顕現せよ、『ロックストライク』! それと、『攻撃力増加付与(アタックプラスエンタチャント)』メイ・ランラン・ノア!」

 タイミングよく攻撃魔法と付与術(エンチャント)を発動させ、ワースの杖の先から岩の塊がスプラッシュウルフへ飛び、赤い光がメイとランランとノアへ降り注いだ。


「ありがとっ!」

「サンキュ!」

「やるですよ!」


 攻撃力が増したことを感じた3人は感謝を口にした。


 そして、岩の攻撃を受けたスプラッシュウルフは怒りを顔に浮かべ、じりじりと距離を詰めてきた。


「埒があかないのは好きじゃないんだよ! 『こっち見てなさい』!」

 メイが正面全体に効果のある『範囲挑発(フィールドタウント)』を発動させてスプラッシュウルフの狙いを自分自身に絞らせる。しかし、レベルがあるためか完全に狙いを集中させるほど発揮しなかった。ただ、怒らせることはできたようでスプラッシュウルフは一斉に襲いかかってきた。


「来るっ!『シールドクラッシュ』!」

 突進してくるスプラッシュウルフに向かって盾を叩きつけた。2匹ほどに叩きつけ、盾を叩きつけられた2匹は後ろへ吹き飛んだ。残りの2匹は、メイを躱して飛び掛ってきた。


「『スライス』!」

 ランランは攻撃力は低いものの扱いがしやすく硬直時間の短い初期スキルを多用することによって隙を作らないように戦っていく。


「喰らえ、『メガバスター』!」

 ノアは、大剣を瞬時に抜き取り白い光を伴ってスプラッシュウルフに叩きつけた。その衝撃でスプラッシュウルフは地面に叩きつけられHPの大半を削られた。ランランと違い、ノアは攻撃力の高いスキルを使って短期決戦するつもりだ。


「メイ、援護する! どろろ、行け」

「ぎゃあごっ!」


 ワースはどろろにメイの援護に向かわせた。どろろは一直線にメイが相手するスプラッシュウルフへ突進した。スプラッシュウルフは俊敏な動きでその突進を躱し口から水鉄砲を放った。その一撃はどろろを後退させるには十分だった。


「ぎゃっぎゃっ」

「がるる……!」


 攻撃を喰らい怒りを見せるどろろと、同じく怒りを露わにして口から泡を吹き出すスプラッシュウルフは睨み合いの攻防を繰り広げた。その間にメイとワースは協力してもう一体のスプラッシュウルフを倒した。


 そうこうしている間にランランとノアはそれぞれのスプラッシュウルフを倒し、残るはどろろと睨み合いをする1体だけだった。ワースとメイ、ランラン、ノアがどろろと最後の1体を囲むようにして見守ってると、視線を感じてなのか違和感を感じてなのかわからないが、そのスプラッシュウルフはどろろから視線を外し周りをキョロキョロと見渡して仲間が全滅したことを悟った。そのことに顔を引き攣らせたスプラッシュウルフに向かって、ノアは大剣を降り下ろそうと一歩踏み出した。すると、そのスプラッシュウルフはノアに対しお腹を見せて降参のポーズを取った。


「「「「えっ?」」」」


 一同が疑問を浮かべていると、ぽーんと音と立ててそれぞれの目の前にウィンドウが現れた。


『『進泉(しんせん)』特殊イベントが発生しました。戦闘中のスプラッシュウルフが降参し、服従を示しました。ノアさんは限定的に『調教(テイム)』することができます。』


 ノアの目の前にはそのウィンドウの下に『『調教(テイム)』しますか?YES/NO』と表示されていた。


 ノアは一瞬困った表情を浮かべた後、ぽるんを見て、ウィンドウをいくつかタップした。

 一瞬スプラッシュウルフは白く光って、消えた。


「ノア……」

「ノアさん……」

「せっかくのチャンスだったのに」


 三人がノアの行動に残念そうな声色をにじませている中、ノアは驚いたような表情を浮かべたままだった。

「えっと、あれっ。なんでYESってしたのに……って、あぁ!」

「えっ、YES押したって」

「ノア、どういうことだ?」

「パーティ制限に引っかかったんだよ。このパーティは4人とミドリとどろろの6人で構成されてるから、この子はCLOSEしたんだ」

「あぁーそういうことか」

「てっきりNOってしたのかと思ったよ」

「びっくりした」


 一同はため息をついて脱力した。


「さて、ミドリを探すのも含めて先に進もう」


 ワースの言葉に3人は頷いた。






 ■■■


 『進泉(しんせん)』。正式な名前を、『進化の兆しを照らす泉(エボリューションスプリング)』という。ワース達は『進泉(しんせん)に至る小道』を道なりに進み、POPするモンスターを薙ぎ倒し(ひとえにワースの集中力が凄まじかったことを付け加えておく)、そして、ここへたどり着いた。途中、どろろをCLOSEにしてノアがテイムしたスプラッシュウルフの“しずく”をパーティに加え戦闘を行なってきた。

 『進化の兆しを照らす泉(エボリューションスプリング)』は、鬱蒼とした森の中、開けたところに綺麗なエメラルドグリーンの泉がある場所だ。


 ワース達がここにたどり着くと、そこにはすでに先客がいた。


「おや、こんな場所に誰か来たのかしら」

「男が2に、女が…2だとぉ!」

「な、なんだってー!!くそっ、ダブルデートかよ!」

「リア充めが! 爆発しやがれ!」

「うるさい、黙れこの豚どもが」

「「はい、すみません」」


 白い髪が特徴的な蠱惑的な容姿を携えた今にも壊れてしまいそうな少女と、付き従うようにしてなぜか正座をしている、とりたてて何の特徴もないのに見てるとなぜかキモイと感じてしまう男が2人いた。


「えっと、先客でしたか」

「まぁ、ついさっきここに着いたばかりなんだけど。それと、ニコラス、ボルゾイ。いつまで正座してるのかしら」

「ヨッシャァァァァァ!俺が先に呼ばれたあああああ!」

「うるさい!」


 白い少女がニコラスと言う名の男を手に持っていた黒光りする槍で小突いた。ニコラスはその一撃で吹き飛んだのだが、HPには影響はないとは言え痛みがあるはずなのに、なぜか恍惚とした表情を浮かべていた。


「まぁ、コイツらのことは気にしないで」

「あっ、はい」


 ワース達の中で、この男らに触れるべきでないと共通認識が生まれた。


「さて、自己紹介でもしましょうか。はい」

「えっ、普通言い始めた貴女からするものじゃないんですか?」

「いいから、はい」

「はぁ……わかりました。俺の名前はワースだ」

「ノアだ」

「私はメイ」

「ランランだよー」


 その後を引き継ぐようにしていつの間にか回復したニコラスが自己紹介した。

「私がニコラスだ」

「俺はボルゾイだ」


 ワース達+自分のパーティメンバーの自己紹介を聞いてその少女はうんうんと頷いた。

「なるほど、よくわかった。それでだな、ここの泉は」

「ちょっとまてい」


 ワースはその少女の言葉を遮るようにしてツッコミを入れた。

「なんで貴女の自己紹介はないんですか!?」

「えっ、だってめんどくさいし」

「いや、こっちがしたんだからしてくださいよ!」

「ふむ、なかなかツッコミがキレてるね。いいわね」

「だから、名前を教えてくださいよ」

「ん、仕方ない。私の名前はシェミーだ! さぁ、敬うがいい」


 腕を組みふんぞり返るシェミー。その姿を見てノアは思い出した。

「あぁ、なんか見たことあるなと思ったら、最近ブレイクし出した電波アルビノアイドルだったか。たしかこのMMOの第2弾のPVの曲を歌ってる」

「そうだ、そのアイドルこそが私、シェミー・アッシュダウンだ!」

「「まじしぇみしぇみ」」


 シェミーがドヤ顔しながら言う脇でニコラスとボルゾイが気持ち悪い笑みを浮かべながらシェミーを崇めている姿を見て、なんだかめんどくさいなとワースは思った。



 そんな中、姿を消していたミドリがいつの間にかにワースの傍らにいた。

「おおっ、ミドリ。どこに行っていたんだい」

「ミドリちゃん、戻ってきたんだね」


 ワースはミドリを抱きしめて頬ずりした。ミドリは嬉しそうにそれに甘んじた。


「グリーンタートルがペットねぇ……それと、スプラッシュウルフもか。なかなか面白そうね」

 シェミーは誰に言うわけでなく独り言をつぶやきながらワース達を見ていた。








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