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亀が好きすぎる魔法使い  作者: ひかるこうら
間章 Extra Stories
32/114

Ex.3 武旗明奈のある日のこと

 ■■■


 武旗明奈:メイは今現在絶賛悩み中だった。


「うぅーん」


 手は忙しなく同じところをなぞり、口からは苦悶の声が漏れ出していた。


「買いたいんだけど、お金がぁあああ……」

「何してんの、メイ?」


 店の前で苦悶の声を上げているメイに対し、仲間であるランランが心配そうに声をかけてきた。


「これなんだけどね……」

「これは……!」


 メイが指し示した先には一振りの剣があった。無骨ではなくそれでいてけして貧弱とは言えないほどの肉厚な刃がきらりと白く輝いていた。柄は綺麗な紫色の布で包まれていて高級感のあふれる片手剣だった。


「おおっ!なかなかかっこいい剣じゃない。ステータスは?」


 ランランはその片手剣を軽くタップし武器ステータス画面を出してみた。


 『デミシャイニングソード』

 攻撃力:110 耐久値:102/102 光属性(小) DEX+3 LUC+1

 かつて勇者が魔王を倒した時に持っていたとされる光り輝く剣のレプリカ。レプリカといえども剣の持つ力は目をみはるもの。持つと力が沸いてくる・・・気がする。



「なるほどねーいい剣じゃない。買えばー?」

「そうなんだけどね……」

「今メイが持ってる剣は、シェルスライサーだったっけ。アレよりは性能いいでしょ?」


 ちなみに

 『シェルスライサー』

 攻撃力:115 耐久値:85/85 斬撃耐性無効(小) 

 シェルシェルの体の中で形成され剣で攻撃力が高い。何でも切れるが、その分脆いため扱いには注意が必要。


 となっている。この剣はセイガイ洞窟を攻略している際にたまたま見つけた片手剣で、攻撃力が高く耐性無効という珍しい効果がついているためメイは愛用している。


「こっちの方が耐久高いし、効果もいいから欲しいんだけど」

「欲しいんだけど?」

「金がない」

「おつかれさまです」


 ランランはある程度予想できていた答えにふふっと笑った。服装に無頓着な男性プレーヤーであれば武器に好きなだけ金がかけられるが、そこは女性プレーヤーの性。装備している防具もできるだけ見栄えがいいものを選び、街を歩くための服を持っていたりするとあっという間にお金が無くなってしまうのだった。メイやランランもそういったプレーヤの一人で、せっかく稼いだお金も装備に費やして最低限しか持っていない。


「それでこれはいくら?」

「50000c」

「高っ!!」

「でも欲しいんだよね……どうしよう」

「わかった、それじゃあ今日も稼ごう。無駄使いは止めて稼いだかねを貯めてけば……いつか買えるはず」

「うぅーそれしかないよね……」

「さーて、カリンもナゴミもアジサイももうログインしているはずだし、行こうよ」

「……そうだね」


 メイは武器屋のショーウィンドウについていた手を離し、ランランに引きずられるようにして未練がましくその場を後にした。





 ■■■


 武旗明奈は家の近くにある神川(かみかわ)市立松山中学に通っている中学3年生だ。

 成績は上の中で、周りからは勉強ができると認められていた。また、容姿もそこそこ可愛かった。才色兼備だが、取り立てていじめなどを受けているわけではなく、せいぜい多少やっかみがあるくらいだった。明奈は至極普通の中学生活を過ごしているのだった。


 明奈は朝、いつも通り学校へ来て自分の机の上に鞄を置いた。すると教室にすでにいた友達二人が明奈に話しかけてきた。


「ねぇねぇ、メイ」

「どうしたの?かおりんとみかんちゃん」

「ねぇねぇ、知ってる?『Merit and Monster Online』っていうゲーム」

「知ってるよ、有名じゃない」


 明奈は話の展開が見えて心の中で溜め息をついた。どうせ、私にゲームをやっているかどうか聞きたいのだろう、と明奈は思った。明奈は学校ではゲームが好きということは周りに一切言っていない。コンシューマーゲームならば皆がやっているから言わないということはないのだが、明奈がやっているオンラインゲームに関してはリアルとかかわり合いを持たせたくないという考えの下、周りには一切それと匂わすことさえしてこなかった。もっとも自分のイメージを崩したくなかったという考えもあった。


「たしかにそうだねー私達さーそのMMOをやってるんだよねー」

「そうそう、メイはやってる?」


 かおりん、こと三条香織の言葉に明奈は自分の予想が当たったことに軽く苦笑しながら言った。


「ううん、やってないよ」

「そうかーやってないのかー」

「うん、一応有名だから買おうとして並んだけど、結局買えなかったんだ。あのゲームって最初に売り出してからまだ再販されてないでしょ」

「そうみたいだね、たしか10月始めだっけ。再販するの」

「そうそう、買えたら買いたいなって思ってるよ」

「買ったらさ、私達に名前教えてよ。そしたらいろいろ教えてあげるし」

「うん、ありがとね」


 それからしばらく三条香織と小林美柑のMMOの話を聞き、始業のチャイムが鳴った。自分の席に座った明奈は人知れず溜め息をついた。二人はどうやら明奈よりもレベルが低く(もっとも明奈のレベルが高いとも言えるが)、あまり攻略をしているわけでないと知ると、後々めんどくさいなと感じた。再販が始まった後、どうやって二人からやり過ごすか考えると、少し憂鬱になった。







 ■■■


 夕日に照らされる中、始まりの街にてメイは届いたメールを見ながらうぅーと唸った。

 メイがいつも一緒に行動するパーティ『五色の乙女』のメンバーのアジサイ・ナゴミの二人が今日は忙しいとのことでログインできないのだった。そのため、パーティとして行動するのは止めて各自自由行動となっていた。


「さーて、どうしよっかな……」


 メイがフレンドリストを眺めながら今日の残りの間何をするか考えることにした。


「あっ、そうだ」

 メイはメールフォームを起動し、自分の兄に予定を聞いてみることにした。


 (さっき大学から帰ってきてたし、そろそろログインしているんだろな。もし良かったら、一緒にどこか行きたいんだけど)


 メイがメールしてすぐに返信が来た。


「どれどれっと……おおっ」


 メイはメールの文面を見て小躍りした。ワースもどこか何かする予定はなく、強いて言えばどこかでレベル上げ&資金稼ぎをするつもりだったらしい。ワースといつも行動しているノアというプレーヤーが一緒だけどいいか、という文面だった。

 メイはすぐに返信をし、待ち合わせ場所として指定した始まりの街西門へ足を運んだ。






「それじゃあ、お兄ちゃん達が行ったことのないブルーベイに連れてこうと思うんだけどいいかな」


 メイのその言葉にワースは首を縦に振った。


「それはありがたいんだけどな。だけど、いいのか? そんなところで。なんか迷惑じゃないか?」

「ううん、ブルーベイって結構お金貯まるし、私もそのほうがいいんだよね。ノアさんは?」

「ノアでいいよ。そうだね、俺は職業(ジョブ)レベルを上げたいだけだし、どこでも構わない。むしろ行った所のないところを経験者と一緒に行けるなんて、すごくありがたいことだよ。ぽるんも喜んでいることだし」

「この子……ぽるんっていうんだ……かわいいね」

「っ……ありがとう」


 ノアはメイの言葉に少し顔を赤らめた。


 「ワース。この子、ワースの妹さんなんだよね。こんなこというとあれだけど、あまり似てないね」

「まぁな。メイは母親似だからな」

「それじゃ、二人とも、行こっ!」

「「おう」」

「きゅーい」

「ぎゃお」


 3人と亀2匹と召喚獣1体はブルーベイを目指して砂浜を歩くのだった。



 ちなみに、この後この臨時パーティはブルーベイを順調に攻略し、その日の内にボス部屋まで辿り着き、そのままボスを撃破したのだった。


 メイ曰く、「お兄ちゃんの亀たちが頑張ってくれたから凄い戦いやすかった。あそこまで爽快に戦えたのって久しぶりだね」とのことだった。






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