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亀が好きすぎる魔法使い  作者: ひかるこうら
第1章 Begining the Game
21/114

閑話 電波系アルビノアイドル:シェミー

 ■■■


 シェミーは一人自分の部屋でぼーっとしていた。


(ホント、こんなに疲れるとは思ってなかったんだけど……)


 シェミーはため息をついてベッドに横たわった。



 シェミー・アッシュダウン。色素が抜け落ちてしまったような白髪に、流れる血液が透き通っているような眼、生気を感じられないほど白い肌。身長は中の上くらいでそこそこのプロポーションを持っている。まるで人形のような少女。見る人は誰もが魅了されるような姿の少女。

 シェミーは先天性色素欠乏症、つまりはアルビノだ。


 故郷は日本から遠く離れた国のド田舎。小さい頃からその容姿から最初の頃は『女神』と呼ばれ神格化され崇め奉られていた。しかしその内『魔女』や『吸血鬼』と呼ばれるようになり、迫害の対象となった。直接的な暴力はなかったものの執拗な迫害に、両親は倒れそのまま亡くなった。

 幼いシェミーは追われるようにして知り合いを頼るようにして日本まで逃げてきた。

 逃げてきたシェミーの面倒を見るようになったのが、『シェミハザ機関』だった。『シェミハザ機関』とは一種の企業とも宗教団体とも趣味系サークルとも言えるような、なんとも表現しがたい集団だった。一つ言えるのは、シェミーを愛しているということ……いろいろな意味で。

 実はこの『シェミハザ機関』は後にエレクトリック・ウィザード社に技術提供をするのだが、それはまた別の話。



 シェミーは『シェミハザ機関』の世話になるようにして成長していった。

 しかし、シェミーは先天性色素欠乏症を抱えていたため日中に外を出歩くことは出来なかった。そのためほとんどを建物の中で過ごした。それを哀れんだ『シェミハザ機関』はシェミーに様々な遊具を買い与えた。買い与えられるものは、始め人形のようなものばかりだったのが、次第にゲームやPCになっていった。



 いろいろあって、シェミーの性格は三度の飯よりゲーム&アニメが好きで、話にもまともに取り合わず、とにかく自分が言いたいことしか言わず、常識外の自信家でもあり、自身の行うことは必ず成功すると信じてやまない。また、そのくせどこか臆病であり、自身が中心になる物事は死に物狂いで避けようとする、というふうになった。


 そして、3ヶ月前。たまたま動画サイトに自分の電波ソングを歌う動画をアップしたところ、たちまち動画閲覧数が伸び、一躍ネット上で電波系アルビノアイドルとして人気を得てしまったのだった。





 シェミーはベッドに横たわったまま、近くにあるヘルメットのような形の『ドリームイン』を手に取り、頭に装着した。そしてスイッチを押した。シェミーは目の前がすぅーっと暗くなっていくのがわかった。






 ■■■


 シェミーはユリレシアの宿屋で目が覚めた。

 昨日ようやく自力でゴブリンキングを倒したシェミーはユリレシアの宿屋でログアウトした。


「よっこいしょっと」

 シェミーはベッドから起き上がると、ウィンドウを開いて愛用の槍を取り出した。

 マグネタイトランス。フォルムは細長くそれでいて黒光りしている。たまたま見つけた岩石を元に知り合いの鍛冶屋に頼んで作ってもらった代物だ。細長く作られているため重くはなく、なんとか片手で振り回せるほどだった。


 槍を一頻り見つめた後、それを再び収納し、宿屋を後にした。



 シェミーは普段ニコラスというプレーヤーとボルゾイというプレーヤーとパーティを組んでいるが、今のところは彼等はいないためシェミーは一人ユリレシアの街をぶらぶらと歩いた。





(それにしても、ゲームの中とはいえ日中歩けるって、サイコーだね!)

 シェミーは街にあるいろいろな店を物色しながら歩いていく。


(ふぉぉぉぉぉぉ! あの店員かわえええええ!)

 道具屋のNPCを見て興奮したり、


(ふおおおおおお! あの人の筋肉SUGEEEEE!)

 道行くプレーヤーの筋肉を見て興奮したりした。



「ふぅ」

 一頻り街を物色したシェミーは、ユリレシアの西にあるユリレシア巨大古墳群へ足を運んだ。

 パーティメンバーがいないため、本格的な探索はする気はなかったが、ちょっと腕試しでもと古墳群に入っていった。







 ■■■


 ユリレシア巨大古墳群。それは昔ユリレシアで大きな戦いがあったときにその戦死者を纏めて葬儀した場所。また、ここには歴代のユリレシアの統治者が祀られている、という設定だ。


 入口は何もモンスターは出てこないが、奥に行くにつれてアンデット系モンスターが出てくる。主にスケルトンだ。


 奥に進むシェミーに向かってわらわらとポップしてきたスケルトン達が襲いかかってきた。

 それを、シェミーは槍を流れるように突き、払い、凪ぐことでスケルトンを圧倒した。


「これくらいなら……私一人でも倒せるわね。わーお、まじしぇみしぇみ」


 ひとりごとを呟きながらシェミーは奥へ向かった。




 少し開けたところで、シェミーはメールが来ていることに気がついた。




 From:ニコラス

 Tittle:無題

 Sub:しぇみたんいまどこですかあなたのためならひのなかみずのなかすかーとのなかまでかけつけますよそれでいまどこですか



「ニコラス、死ね」


 そう言いながらシェミーはメールの返信をした。そして来た道を少し早歩きで戻っていった。







 ユリレシア西門。シェミーがユリレシア巨大古墳群から戻ってくるとそこにはパーティメンバーのニコラスとボルゾイが突っ立ってた。


「やぁ、しぇみーたん。気分はどうだい?」

「アンタ見てたら気持ち悪くなった」

「あぁッ! その言葉が、イイ!」


 ボルゾイは歓喜のあまり悶えていた。

 ニコラスはボルゾイの存在を無視して一歩前に出た。


「それじゃあ、シェミーの好きなところへ行こうか」

「ふん、私の後を付いてきなさい」


 シェミーはくるりと後ろを向いて再びユリレシア巨大古墳群へ向かうのをニコラスとボルゾイは暖かい目で見ながら後を追った。





 シェミーは手に持つ槍をくるくる回しながら先へ進んでいった。猫がしっぽを振るように。








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