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亀が好きすぎる魔法使い  作者: ひかるこうら
第4章 Opened Capital and Unbinded Seal
104/114

8話 「見覚え……うーん」

「絶対寝落ちになんかに負けたりしない!!」

 ↓

「寝落ちには勝てなかったよ……」


 戦績7戦中、7敗0勝。休みの日に頑張って書きました。バイト終わりは書けなかったよ……


 遅くなって申し訳ありませんでした。次回はきっと来週には更新できる、といいな……

 ■■■


 次の日。真価はベッドの上で目覚まし時計の頭に手を置いた状態で目を覚ました。

 昨夜はクランメンバーと共に、帝都北部にあるダンジョン『蒸れる群れる古井戸』の探索を行った。いつもとは違う戦闘に心湧き上がる楽しみを感じるとともにそれ相応の疲労を感じた。肉体的には体を寝かせていただけだったため疲れてはいないのだが、精神はだいぶ摩耗していた。


 真価は眠い目を擦りながら、布団から這い出してぐぐっと体を伸ばした。ごきりと音がして真価は体が伸ばされる感覚に意識がはっきりしていくような感じがした。今日は真価にとっては試験休み兼春休みだ。何をしようとも誰に咎められることはない。MMOにログインするまでうだうだと布団の中に潜り込んでもいいのだが、とりあえず朝ご飯を食べることを真価は選択した。


 階下に降りた真価は、制服を着て学校へ行く準備をしている明奈とばったり顔を合わせることになった。まだ寝ぼけている真価にはそれはびくりと驚かせることとなった。


「おはよう、お兄ちゃん」

「あ、あぁ。おはよう」

「いくら休みだからと言って寝てばかりじゃだめだよ」

「これから寝ようと思っているんだが。そうだ、朝ご飯はあるか?」

「パンならあるよ。用意しようか?」

「いや、いい。明奈にも準備があるだろう」

「そう、それならいいけど」


 明奈はそう言って自分の部屋に入っていった。それを見届け、真価は台所をがさごそと漁って朝ご飯を調達した。今日の朝ごはんはロールパンとインスタントのコーンスープとなった。卵焼きを焼いたり、ハムサラダを作ったりする余裕はなかった。ただひたすらにめんどくさかったのだ。真価はちゃっちゃと朝食を食べ終え、二度寝をしようと二階の自分の部屋に戻った。さぁ二度寝をしようとベッドに寝転がったところで、真価の携帯デバイスがけたたたましい音を奏でた。荒谷(あらや)遊馬(ゆうま)からのコールだった。誰からの電話か確認した真価は耳元に手を当て通話ボタンを押す。


「おはよう、なんか用か、遊馬」

「おはよう。つか、その様子だと忘れていたようだな」

「忘れてた?」

「はぁ、こんなことだろうなとは思っていたけどよぉ。ほら、試験が始まる前に話しただろう、特別講義の話」

「特別講義……あぁ!」


 遊馬が言った特別講義。試験が終わった頃に行われる、客員講師を招いての講義のことだ。今回のテーマは今話題のVR技術について。講師は、なんとMMO(メリットアンドモンスターオンライン)開発元のエレクトリック・ウィザード社技術顧問である錦城(きんじょう)(すみれ)だ。錦城菫教授、彼女は真価の通う大学出身で今は国立の大学の教授をやっている、は研究に没頭するあまりほとんど講義をしないことで有名だったが一度母校で講義を行ってくれるということで一躍注目が集まっていた。真価は正直あまり興味を持たなかったが、遊馬があまりに勧めるので受講の届け出を出し、高倍率の抽選を運よく潜り抜けることができたのだった。


「思い出したか」

「あぁ、今日だったか」

「今日の13時からだよ。まだ時間に余裕はあるけど、どうせ忘れているだろうと思ったから連絡した」

「ありがとうな、お前のような親友を持てて俺は幸せだよ」

「ふっ、だったら今度昼奢れよな」

「あぁ、なんだったら今日奢るよ」

「いや、今日はいい。別件があるのでな、と真価はどうせ暇だろう」

「まぁその講義までは時間が空いているが……何かあるのか」

「ふふふ、俺に付き合え」

「は?」

「11時に大学まで来い。間に合うだろう」

「え、たしかに間に合うけど」

「よし、それじゃあな」

「ちょ、待て! おい……切れた、か」


 真価はぷーぷーと通話が切れたことを示す携帯デバイスを手に天を仰ぐ。真っ白の壁紙が一面に目に映る。


「はぁ、行くか」


 いくら家から大学まで1時間もかからずに行けるとはいえ、もたもたしていれば待ち合わせに遅れてしまう。真価は寝ぼけまなこを擦り意識をはっきりさせて、半ば急ぐように出かける準備をした。




 日課の亀達の餌やりを手早く済ませてから、真価は自分の準備をちゃちゃっとして家を出た。マスクの隙間から漏れ出す息で白くなる眼鏡に顔を顰め、真価は駅までの道を歩く。途中、春になると桜の綺麗でなぜか参拝客が皆無な神社の脇を抜け、ちぇんちぇんと鳴く猫の家を通り過ぎ、最寄りの駅にたどり着いた。そこから1時間ほど電車に揺られて、真価の通う大学へ到着した。

 真価は遊馬から送られてきたメールにある場所に向かえば、そこには遊馬がにこやかな笑顔で手を振っていた。


「よぉ、おそようさん」

「あぁ、モーニングコールありがとうな」


 真価は遊馬のドヤ顔にいらっとしながらも、それでも助かったのは事実だから無下にできなかった。


「で、まだ講義までは2時間あるだろう。昼にするにしたって時間があるだろし……」

「それは考えがあってことだ。テラス行こうぜ」

「? まぁ、いいけど」


 真価は遊馬に連れられて、カフェテリアのテラス席に行った。とりあえず何も頼まずに席に座った真価だったが、遊馬にどういう考えがあるかまるで見当もつかなかった。


「飯は食べないのか?」

「それは全員揃ってから、だ」

「全員ってことは、誰か来るのか」

「まぁ、な。会ってからのお楽しみ、と言いたいところだが、ある程度話しておかないとお前も何のことかわからないでいらいらしてくるだろうし」

「で?」

「端的に言えば、お前に会いたい奴がいるってことだな」

「会いたい奴って?」

「それは会ってからの楽しみってところだな。まぁお前にそう悪くない話だと思うよ」

「そうか、にしても俺に会いたい奴か……見当がつかないな」

「まぁ……お前は知っている奴なんだけどな」

「えっ?」

「なんでもないぞ。っと、ちょっとメールだ」


 遊馬は自分の携帯デバイスを軽やかな手つきで操作する。遊馬の携帯デバイスは、真価の腕時計タイプではなく、棒状の広げて使う巻物タイプだ。

 真価はそんな遊馬をテーブル越しに眺めながら、ぼんやりと待ち人のことを考えて時間を過ごした。


「っと、待たせたな。もうすぐ来るって」

「その俺に会いたいって人か?」

「そうその人」

「ちなみに、その人の性別は?」

「女だ」

「女? あーわかんない」

「会えばきっとわかるよ」


 遊馬はそう言うなりにやにやとした笑みを浮かべたまま黙りこくってしまった。真価はそんな親友にいらっときながら、そういえばこいつは初めっからこんな奴だったなと思い直した。


「にやにや顔がうざい」

「うっせ、これは素だ」

「こんな顔だったっけ」

「ひっど。そんな言い方ないだろ。そういえば、MMOの方はどうだ?」

「ぼちぼちかな。ダンジョン見つけたから早速潜ってるけど」

「早いな。こっちは街の依頼を受けて早いところ上層部へ行くフラグを立てようと頑張ってるところだ」

「へぇ、依頼ってどんな?」

「んと、アイテムをどこからどこまで運ぶ運搬系に、外に出てアイテム集めてくる採取系、そんな感じかな。討伐系はまだ受けれないけど、たぶんどこかにあるダンジョンに絡んでいると思うな」

「なるほどな……とすると俺たちが挑んでるダンジョンにも依頼が受けれたりするのかな」

「それは探してみないとわからなんな。話によればダンジョンを攻略すれば役場から依頼達成ってなるらしいぜ。なんでもダンジョンって帝都でも変異してしまった場所ってことだからね」

「ふーん」

「早いところ俺たちもダンジョン見つけてばっさばっさモンスターと戦いたいところなんだけど、なかなかダンジョンの情報って出回らないんだよね。見つけた奴が情報を秘匿してるってかさ。役場でもダンジョンはどこかって聞いても教えてくれないし」

「でも、俺たちは役場行って聞いたら教えてくれたぞ。あ、それってもしかして見つけてから聞いたからこそ教えてくれたのかも」

「もしかして実際に自分が見つけないと開放されない類いなのかな。そうなるとリアルラックが物言うな。ちぃ、めんどうだな……と、おーい」


 遊馬は入口の方に目的の人物を見つけたらしく、その人に大手を振って位置を知らせた。真価がそちらへ向くと、そこには麗らかな黒髪をサイドテールにした一人の女性がいた。背は真価の首元くらいで、全体的にちんまりとしていて猫のようなしなやかな歩き方をしている女の子だった。薄桃色のニットのタートルネックセーターに、腰元には短めのジーンズを履いて黒ストッキングで伸びた足を惜しげもなく晒していた。

 真価はその女の子を見て、どこかで見たことあるような気分になった。


「荒谷、待たせた」

「いやいや、全然。さてと、とりあえず席はこのままにして先に飯を取りに行こうか」

「ちょっと待て。自己紹介もなしにか? えっと、君は?」

「私は蓮城(れんじょう)来夏(らいか)、です。初めまして……えっと」

「俺は武旗(たけはた)真価(しんか)です。初めまして、よろしく。えっと、君が俺に会いたかった人、でいいの?」

「うん」

「まぁまぁ、真価。その話は後にしようや。俺、腹減っちゃってさ。蓮城もいいか?」


 来夏はこくんと頷き賛成の意を示す。真価は内心溜め息をつきながら、二人の後に続くようにしてカフェテリアのカウンターへ昼食を取りに向かった。



 カフェテリアのカウンターには多くの人が並び、そこにある食券を買ってその先にある厨房の人に渡すことによって料理を受け取ることができる。

 真価たちはそれぞれ思い思いのメニューを選び、席に着いた。


 昼食を前にして、真価が口を開いた。


「で、荒谷。どういうことか説明してもらえるか」

「説明って言ったってな……」

「荒谷、私が言う。武旗君……私に見覚えがない?」

「見覚え……うーん」


 真価は来夏をまじまじと見る。その視線を受けて来夏はじれったそうに体をもじもじとさせる。

 黒髪サイドテール。ちんまり。猫のよう。思わず撫でたくなる髪。

 真価の頭の中をその情報が駆け巡る。

 そして。


「あぁ、君が!!」

「そう、私がテトラ。こちらでは初めまして、ワース」





 次回へ続く。

 そういえば、今日って雛祭りなんですね。すっかり忘れてました。

 そんなことよりログホラのアカツキかわいいよかわいすぐるよ。アニメになって一層かわいすぎる。

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