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亀が好きすぎる魔法使い  作者: ひかるこうら
第4章 Opened Capital and Unbinded Seal
101/114

5話 「マリンだからな、どうせ何か作っているんじゃない」

あけましておめでとうございます。今年一年もよろしくお願いします。


 ■■■


「なぁ、知ってるか?」

「何の話だよ」

「あの、昨日送られてきたアプr」

「<タマシイコネクション>っていう奴さね」

「いきなり話に入って来るなぁ。<タマシイコネクション>か。そういうところを見るとワースのところにも来たってわけか」

「おうおう、ご明察通り」

「ワースは自分の身に振り被ってこない限りそういうことに興味を示さないからな。自分にそれが来たからこそ俺にこうして質問しているんだろ?」

「さすが最初の頃から組んできた相棒は違うねぇ。夫婦っていってもいいんじゃない?」

「「それはない」」

「ははは、仲良いねぇ」


 ワースとノアは、互いにエメラルドタートルのミドリと水属性召喚獣のぽるんを自分の足元に侍らせながら、帝都北街下層部にある茶屋の軒先に置いてある長椅子に座りながら雑談を交わしていた。『亀が好きすぎる魔法使いと愉快な仲間たち』のメンバー全員が来るのを待っていた。

 そこへワース達同様にフレイムリザードマンを侍らせたあるふぁが、メンバーの待ち合わせ場所である『満腹堂』という茶屋にやって来た。そこで<タマシイコネクション>の話題を出す二人がいたという訳だ。


「で、あるふぁにも<タマシイコネクション>は来たのか?」

「うん、そうだね。おかげで昨晩は徹夜気味さね」

「やっぱりそうか。俺もついついミドリと戯れてつい時間を忘れてしまったよ」

「あるふぁもワースもそうか。やっぱりそうなるよね」

「なんかさ、MMO(ここ)での反応と違ってさ、自分の部屋で反応を見てるだけで楽しいんだよね」

「「わかるわかる」」

「あれって、結構すごいんだよね。追加オプションから自作で追加プログラムを入れられるし、かなり自由度高いんだよね。あまり時間がなかったから簡単にだけど餌作って、それをディノにあげられたんだよ」

「すごいな、あるふぁはそういうことできるのか」

「まぁね。ちょっと齧ったってところかな。あんまり難しいのできないけど、簡単なのなら作れるよ」

「へー、そういうのちょっと羨ましいな」

「このくらいなら試しにやってみればちょちょいでできるようになるさね」

「じゃあ、試してみようかな。ワースはそういうのどうなの?」

「俺はな。あんまり得意じゃないしそこまで興味を持てないからな。正直今ある機能だけで満足している感じかな」

「そうか」

「だいたい、科学の力ってすげーな。MMOの中じゃないのに実際にミドリを触ることができるなんてな」

「えっ?」

「あぁ、“実体化”な。俺のぽるんも触れられたよな」

「ちょ、ちょっと待ってよ。え、え? 触れるって」


 まさかの話にあるふぁは混乱しながら手をあたふたと振り回した。それをノアはどうどうと馬をいなすようにして落ち着かせた。


「掲示板でも半ば都市伝説的に言われている話でな、まぁ実際はアバターの“実体化”は存在してそのアバターごとにされているかされていないか分かれているんだがな、アバターが実際に触れるってことなんだよ。おそらくだが、これは最新技術のSRが使われていると思うな」

「説明ありがとう。あれってまだ試験運用の段階じゃなかったっけ」

「そうだ。実際、泉宮(せんぐう)市がモデル都市としてSR技術を使っているが、まだまだ試験段階なはずだ。だけど、この“実体化”の許になっているものとして考えるとSRぐらいしか思いつかないんだよな。画面を消せば、アバターは消えてしまうし、たぶんそうだろうってね」

「なるほどね」

「えっと、SRって?」

「あれ、ワースは知らないのか」

「あぁ、興味なかったからな」

「SRっていうのは超現実(Super Reality)の略で、実際にないものをあるように見せかける技術だ。どういう理屈でできているかは省くとするが、例えば仮想画面(ホログラム)だと視覚しか見せかけられないけどSRならば触覚まで見せかけることができる」

「つまりはVRみたいなってことか」

「ありていに言えばそうなるな。現実(リアル)でもVRよろしく感じることができるのがSRってな訳だ。<タマシイコネクション>の“実体化”と同じ現象だろ」

「あぁ、ようやく理解できたよ。ありがとう」

「どういたしまして」


 ワースはすり寄ってキューキューと鳴くミドリに手を伸ばしその頭を撫で、もう片方の手でアイテムストレージを操作し、ミドリ用のおやつを取り出した。ミドリは差し出された野菜スティックをはむはむと咥え、ワースの手に鼻をくっつけた。

 その様子を見て、ぽるんはノアの服を引っ張り、自分にも何かちょうだいと言った。ノアは苦笑しながらアイテムストレージを弄り、ぽるん用にいつも持っている七色の包装紙に包まれた桃色に彩られた飴玉を取り出し、ぽるんに渡した。妖精の姿をしているぽるんには飴玉は少し大きすぎるようで体全身で抱えるようにして、その小さな口を目いっぱい開いてぺろぺろ飴玉を舐めた。余程その飴玉がおいしいのかぽるんは顔を綻ばせた。

 ミドリとぽるんの様子を黙って見ていたディノは、うずうずとする気持ちを抑えながら物欲しげな視線をあるふぁに向けた。あるふぁはその視線に気付き、ディノの奥ゆかしい性格に、にやりと笑みを浮かべながら自分もディノに何かをあげようとアイテムストレージを漁った。フレイムリザードマンのディノは雑食で何でも食べるが、どちらかというと肉が好きだ。だから、あるふぁはちょうど持っていた何かの骨付き肉を取り出し、あるふぁに渡した。ディノはぶんぶんと尻尾を振りながらも澄ました表情を取り繕い、その骨付き肉を受け取った。


 ワースとノア、あるふぁは互いのペット・召喚獣の様子に、つい顔を見合わせ破顔した。あまりにも仕草がかわいすぎたからだ。







「……来た」

「時間通りっすよね?」

「あーわくわくしすぎてねもい、あぁ眠い」

「はぁ、お姉ちゃんったらログインするの早いって」


 そうこうしている内にテトラ・アカネ・ニャルラ・子音がやって来た。テトラとアカネはいつも通りだったが、ニャルラは寝ぼけ眼を擦り、子音は急いで来たらしく息を荒げていた。


「ワースとノアとあるふぁは早いっすね」

「まぁね」

「時間があったからね」

「あれ、マリンは?」

「いや、まだだ」

「マリンだからな、どうせ何か作っているんじゃない」

「武器の依頼でもあったのかな」

「……特にそう言う話は聞いてない。おそらく寝坊か私物作ってる」

「後者だな」

「後者っすね」

「絶対なんか作ってる」

「マリンのイメージって……」

「仕方ない、もうそういう行動してきてたからね」



 あーだこうだマリンについて話をしていると、集合時間から5分ほど遅れてマリンが走ってやって来た。


「ごめんごめん、ついつい時間忘れてしまったよ」

「やっぱり」

「マリンはそうだもんなー」

「……何作ってたの」

「あぁ、これだよこれ。今日古井戸の中行ってみるつもりでしょ」


 そう言いながらマリンがアイテムストレージから取り出したものは、ランタンだった。


「MPを消費して一定時間光を放つ光明石(こうみょうせき)を中心に備え付け、その下に取り外しできるMP消費を肩代わりする魔石(ませき)を使ったランタンだよ。周りには光の拡散率の高く橙色の光を強く通すアルメリア硝子を用いてより明るいランタンを目指してみたんだけど、どうかな」






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