2章 それぞれの道 2節
クリスマスの夜、あつしの家は6人の友人でにぎわった。
あつしは一人っ子だったので、日頃寂しい思いをしていたのか、両親も加わり夜遅くまでにぎわっていた。
しかし、その中に美奈子の姿はなかった。
友人や両親にも、美奈代のことを聞きだせずにいた。
そうだ、夏に私がびっくりしたように成人式の日に美奈代を驚かせてやろうと、みんなに私が帰省していることは口止めした。
あっという間に大晦日になり、新年を迎えた。
成人式の朝、両親が準備してくれたスーツを着た。
なんとなくだが「いちご白書をもう一度」の歌詞が、浮かんできた記憶がある。
会場へ出向き私は美奈代の姿を探した。
着物姿の美奈代は少しやせて見えた。
美奈代に向かって手を上げてみせた。
美奈代はにっこり微笑んだだけで会場の中へと姿を消した。
式典の間、美奈子のことが気がかりだった。
美奈代は私と桂子のことに気づいているのだろうか。
そんなはずはない、と、考え長い退屈な時間が過ぎていくはずなのに、あつしは美奈代の姿を探すのに夢中だった。
桂子の話では、ふたりのことを話したことは無いという・・・。
でも、さっきの笑顔は美奈代のものではなかった。
夏休みの美奈代は、あつしの前から消えてしまった。
やはり、ふたりのことに気づいているのだろう。
そんなことを考えながら、美奈代の姿を探していた。
やがて式典も終わり、私は出口に向かう人の群にいた。
隣にいたはずの親友である孝一は、どこかに消えていた。