7章 再会 4節
「さあ皆が待ってる。あっちに行こうか」と、あつしが美奈代の肩を抱き、先程の売店の方に歩いた。
あつしは皆と言ったが、孝一とトム位だろうと美奈代は思っていたが、そこに居たのは孝一、トム、そしてその横に、あつしは会ったことの無い女性がいたが、もう一度孝一の方を見ると、その横に桂子が半分隠れるように、孝一の後ろに居た。
美奈代はもちろんの事、あつしも桂子の姿を見た時は驚いた。
美奈代は、一瞬立ち止まりそうになったが、あつしは、美奈代の肩をしっかり抱き、二人は立ち止まる事も無く、売店近くの4人の所まで行った。
「よう」と、あつしは平然を装い孝一に手を上げた。
「よう」と、孝一も返したが、「お前、それ以外に何かもっと気の聞いた挨拶は無いのかよ」と、あつしを指さしながら言った。
「そうは言ってもなぁ、何がどうなってんだか、分かるか。今俺がどれほど混乱してるか」と、皆の顔を見回した。
あつしのとっては、見知らぬ女性の方を見ると、トムが、
「ああ、この女性は」と言いかけると、
「キャスリン、あなたがこれを・・・」と、美奈代は言い『仕組んだの?』と、言う言葉は飲み込んだ。
「そう、トムとね、そして孝一と3人で相談したのよ」と、楽しげに言うものだから、美奈代は、『なぜ行く前に言ってくれなかった』と、抗議するつもりだったが、その気がうせた。
「久しぶり」と、あつしは桂子の方に言うと、
「ひさしぶり」と、桂子もオウム返しに言った。
「ところで何が、どうなってるのか、誰か説明してくれないかな」と、改めて4人の顔を見ながらあつしが言った。
「まあ、皆が顔を合わせられるよう、俺たちが画策した。ただそれだけだ」と、孝一は、一言で済ませた。
「まあ、簡単な説明だな。まあいいか。それでそっちはどうなってるんだ」と、あつしは、孝一と桂子の顔を見た。
「うん、まあまあだ」と、桂子の肩に手を回した。
「なるほどな」と、あつしは言い、「俺たちも、まあまあだ」と、言って美奈代の肩を抱いた。
ここに居る6人にとって、その言葉だけで今は十分だった。