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雨の物語  作者: 伊湖夢巣
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7章 再会 3節

 「私は」と、美奈代は一旦言葉を切りそして、「私は、もうあなたに会える資格の無い女よ」と、あまり大きな声ではないが言った。


 二人の間にはまだ少しの隔たりがあり、その間を人が通り過ぎていた。


 またコンコースには人がいっぱい行き交っていて、周りは人の行き来で騒がしかった。


 しかし二人にはお互いの声と、姿しか見えていなかった。


 周囲の風景は色を失い、白黒の映画みたいだった。


 「そんな事は無い、それは俺のほうだ」

「そうね、あなたは私を傷つけた」と、美奈代が言うと、あつしは急に体の力が抜け、頭を垂れて、「そうだ、俺は君の気持ちを裏切ったんだ」と、つぶやいた。


 「私は許せなかった」と、美奈代。


 「それは・・・」と、言葉を詰まらせるあつし。


 しかしその後、美奈代は思わぬ事を言い出した。


 「あなたを許せなかった。最初はそう思ってた。だけど本当はあなたを許せない私自身を許せなかったの」と、あつしの目をまっすぐ見つめ、そして、

「でも、今はあなたを許せる、あなたは私を許してくれるの」と、言うとあつしは再び美奈代に顔を上げ、


 「許すか、許さないかだったら、俺は許す」と、言い捨てるかのようにあつしが言いそして、


 「それは俺も同罪なんだ。そんな事より、僕の心が・・・いや、タマシイが君を必要としてるんだ。君の所在が分からなくなって、僕の魂はずっと何かを捜し求めてた。他の女性とも恋をしようとした事もあった。だけど誰とも心がつながらなかった。僕の魂が君を探してたんだ。俺にとって本当に必要なのは君だったと気が付いたんだ」と、一気にここまで喋り、再び力なくうつむき、

 「俺の魂が君を、求めるんだ。今までその事に、耐えるのがとても辛かった」と、言った。


 その言葉を聞いた美奈代は、そっとあつしに寄って来てあつしの手を取り、


 「わたしで・・・、本当に、わたしで良いの」と、そう聞き返していた。


 「君でなくてちゃあ、僕の魂は救われないだ」と、あつしが言うと、美奈代はもう黙ってあつしの胸にしがみついていた。


 あつしもそれに応え、しっかりと美奈代を抱きしめた。


 美奈代の目からは、この4年間泣いてしまえば自分が崩壊してしまうのではないかと、ずっと堪えていた涙が、後から後からあふれ出てきていた。


 しかし今は、安心できる人の胸にいだかれているから、もう崩壊の涙ではなかった。


 それは、喜びの涙だった。

俺も言って見たいなぁ、あつしの様なせりふw

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