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雨の物語  作者: 伊湖夢巣
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6章 そしてドイツ 1節

「なんだ、ドイツでも雨が降るのか」と、タラップを雨に濡れながら下りている孝一がそう言うと、


「そりゃ、そうさ、地球上で雨の降らない所なんてあるもんか」と、先にタラップを降りていたトムが軽くそう返した。


 孝一とトムは、ロサンジェルスからドイツに渡ったのでは無く、美奈代と遭遇するのを極力避けるため、一旦サンフランシスコまで行き、そこからドイツに渡ったのだった。


 実際には、ほぼ同時刻にベルリンに到着しているので、ここで出会う可能性があるわけだが、たとえ美奈代の視界に二人が入ったとしても、今の孝一は美奈代に孝一だとは分からなかっただろう。


 それは、いかにもアメリカ人の様にカウボーイハットを被り、濃い目のサングラスを掛け、皮のジャンパーを着ていた。


 当の美奈代達も、別の飛行機からやはり雨に濡れながらタラップを降りていた。


 美奈代は最初の一粒の雨に打たれた瞬間、ふとあの夏のあつしがこぐ、自転車の後ろで歌を歌ったあの日の事を思い出していた。


 そしてぼんやり上を見上げていると、前を下りていたキャスリンに、


 「何考えているのよ、まるで昔の恋人でも思い出しているかのようよ」と、下から顔をまともに見られ、そう言われた。


 「まあ、私そんな顔していた」と、美奈代は正にその通りの事を言われて、内心どきりとしたが、出来るだけ平静を装い、そう言った。


 キャスリンは当てずっぽうで言ったのだが、これから美奈代の昔の恋人に、自分たちが逢わせようと計画している事を、美奈代に気づかれていない事を願っていた。


 しかし、美奈代が本当にあつしの事を思っているなど、思いもよらなかっただろう、もっとも美奈代も一時的な感傷に過ぎないと、本人もそう感じていただけだったのだが…


 キャスリンは「ねえ、久々にベルリンからミュヘンまで列車で行きたいんだけど、いいでしょ」と、アメリカを出る時に、美奈代に一方的に宣言していたので、飛行機から降り、ターミナルを出て、ベルリンの駅に向かった。


 ターミナルに入った孝一たちは、美奈代たちがミュンヘンに着く前にミュンヘンに行き、キャスリンたちのアパートに行きたかったので、そのまま入国手続きを済ませて空港を出ず、ドイツの国内線のターミナルに向かった。

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