5章 ドイツへ 6節
この辺り、長台詞が有り過ぎて、ちょっと読みづらいかもしれませんが、がまんしてください
「私の感だけどね、多分、桂子は孝一が追って来てくれる事を、以前待ってたんだわ。今はただ生きているって感じの生活しているみたい、楽しいと思う時は確かに、にこやかにしているし、面白くない時は憮然としている。でも、そこには何か彼女が生きているってあまり感じないの。ゾンビとかそんな気味の悪い意味ではなくて、ただ生物が反応している、ってそう感じる事があるの」と、最近の桂子を見ていて思った事を言った。
そして、「あなた、桂子に会いに行くべきだわ」と、孝一の顔を見てそう言った。
「俺もそう思う」と、トムはジャケットの内ポケットから4枚のチケットを出して、そう言った。
そのチケットは、今キャスリンが住んでいるミュヘンで行われる、日本チームの試合の物だった。
「えっ、何これ」と、キャスリンは手にとって驚いた。それは彼女がサッカー好きで、ワールドカップのチケットがあったからではなかった。
むしろキャスリンは、サッカーにあまり興味が無かった。
「トムがドイツに来るの。でもなんで4枚なの」と、キャスリンは少しいぶかった。
「4枚必要だろう。だってここに3人で、ドイツにお前のルームメイトが居るだろう」と、平然と言ってのけた。
「だって、さっき私のルームメイトの事すっかり忘れてたくせに・・・」と、キャスリンは睨んでいたが、「さっきの嘘だったのね」と、ちょっと悪戯っぽい顔でトムを見た。
トムとしては、本当はもっと驚かそうと思っていたのだが、少々タイミングを外したのと、話しの成り行きで、驚かし損ねてしまった。
「俺は・・・」と言って、孝一はトムとキャスリンのそんな思いをよそに、他の事を考えていた。
「俺だけ会う訳にはいかない。あつしと、美奈代も一緒に会うように出来ないかな。多分あつしも美奈代も、お互い逢いたがっていると思うんだ。一緒にドイツで会うように出来ないだろうか」と、二人に言った。
「でも、あなたなぜそこまでするの、あなた自分の事が大事じゃあないの」と、キャスリンは不思議がってそう聞いた。
「俺たちは」と、ここで一旦止め、軽く息を整え、「どこまで行っても、幼友達でいたいんだ」と、他に言葉も見つからず、二人にすがるような目を向けた。
しかし、孝一はこの言葉が今の正直な気持ちで、なぜだか今回すぐ近くに居る美奈代を、ここにこのまま置いて、自分だけドイツの桂子に逢いに行く事は、あつしに対しても裏切るような気がしていた。




