4章 二人 4節
ちょっと、時間さかのぼります
それより四日前の事である。
ここはアメリカ、カリフォルニア州ロサンゼルスから山の方向かう幹線道路沿いで、少々ロサンゼルスから離れた所にある、小さな町の道路わきの、あるカフェでの事だった。
カフェはキャスリンの両親が経営していて、中には小さなステージもあり、ここで地元や地方の小さなバンドが時折演奏などをしている事もある。
そのカフェで、キャスリンが店のウエイターの女の子と、店のテーブルで話し込んでいた。
「あなたも日本人なの」と、キャスリンが尋ねていた。
昼の忙しい時間が過ぎ、客もまばらになっていた。
店は少し余裕が出来ていたので、キャスリンの両親も二人がテーブルで椅子に座り、話し込んでいるのを黙認していた。
これが忙しい時間帯なら、普段店に来て手伝おうとしたことも無いキャスリンに、両親はせめて店の邪魔はするなと強い口調でいい、椅子に座らせるどころか店から追い出していたところだろう。
今日は、一年ぶりにアメリカに帰ってきて、時間が少ないからと言って、病院に見舞いに行けない両親に、店までおじいさんの容態を知らせにきてくれた事もあり、両親は二人に自由に話をさせていた。
「あなたもって、私以外どこかに日本人がいるの」と、そのウエイターは聞き返した。
「私ね、今ドイツ居てルームメイトと二人で住んでるんだけど、そのルームメイトが日本人なのよ。その子は今ではずいぶん明るくなったんだけどね、3年前に始めてあった時は、今のあなたの様に、なんだか人生に疲れたって、そんな感じだったわ」
「そう」とウエイター
「それでやはり日本人なんでしょう」と、キャスリンは日本人の所をjapanesと言わず、nihonnjinnと、今度は日本語で尋ねた。
これにはウエイターも「まいったな」と、言う顔で「ええ、そうよ」と、軽く微笑んで応えた。
「あらまあ、この3年この子が少しでもにこりとした顔なんて見たこともないのに、やっぱり同年代の子同士がいいのかね」と、横からキャスリンの母親が口をはさんだ。