4章 二人 1節
窓の外はシトシトと雨が降っていた。
その窓からは、向かい石造りの壁の建物、そして見下ろせば石畳の道路が見えていた。
ここはドイツ南東の方の片田舎、ミュンヘンの近くにあるアパートの一室でぼんやりと物思いにふけっていた。
それは四年前、日本からパリに出発する時、空港には孝一が見送りに来てくれていた時の事だった。
あつしとは、あの日美奈代が泊まりに来て以来、少しずつ二人の気持ちがずれていっていた。
そして、三ヶ月後には2人別々に暮らすようになっていた。
その後、あつしとは連絡を取っていなく、美奈代の結婚式の時は孝一も居たので明るく振舞って居たが、出発する時はあつしに連絡はしなかった。
孝一は二人の仲を知っていたが、空港でゲートに行くエスカレーターに乗る直前まで明るく世間話などしていて、足を乗せエスカレーターに乗り下に降り出した時、満面の笑みを桂子に送り、
一言「がんばってこいよ」と、言って送り出してくれただけで桂子もまた明るく笑顔で「うん、頑張ってくるね」と、手を上げ気持ちよく出発できた。
そして何より、孝一があつしの事に触れないようにしてくれていたのが判り、その孝一の心遣いにうれしかった。
桂子は大学を卒業してから、デザイナーになる為に絵の勉強をしようと、一度はパリに居たのだが、ある日パリからドイツに絵を書きに、この地方に来てからここが気に入ってしまい、とうとうここに住むようになったのだ。
この部屋に今、桂子ひとりだが、この部屋にはルームメイトが居て、そのルームメイトと共に借りている。
パリではあまり絵の事に集中して勉強できず、ふらりとドイツに絵を書きに来て、出会ったのが今のルームメイトのキャスリンだが、彼女は今、家庭の急用とかで母国アメリカに帰国中であった。
キャスリンはアメリカ、カリフォルニア州出身で、勝気で陽気な性格、と言うのが彼女を一言で表した性格で、いたってあっさりとした女の子だった。
彼女とはミュンヘンの湖の湖畔で知り合った。