プロローグ
文学的恋愛小説
ちょと恋の物語に挑戦してみます。
その人は聖橋から空を見上げていた。
両手をかざして眩しそうに空を見上げていた。
そして風の中に何かを聴いていた。
その音楽は遙か昔に・・・・。
そう、子供の頃、
家の近くで聞こえた、なんとも心地よいあの音楽だった。
体中を暖かな空気で包んでくれた、あの音楽だ。
どこから聞こえてくるんだろう・・・・・?
その人は、空にかざした両手を降ろし、あたりを見回している。
緩やかな風が木々を揺らし、サワサワと音をたてている。
その人は、
「フッ・・。」とため息をつき、歩き出した。
大きな荷物を軽々と肩に担ぎ、何かをつぶやきながら、聖橋をあとにした。
そう・・・
それはあてのない孤独な一人旅・・・
誰一人として同じ途を歩む者はいない。
まるで「人生」と言う名の道しるべを探しているかのように・・・。
人は歩き続ける。
急に、その人の足が止まった。
「やはり聞こえる・・・・。
あの音楽が・・・・・。」
その人は聖橋で聞こえたあの音楽を耳にした。
あたりを見渡したが、他の誰もいない。
心地よい風が、吹いているだけだ。
再び歩き出そうとした時、
ふと思い出したように大きな荷物を肩から降ろした。
その荷物の中を、ゴソゴソと探り出した。
その動きがピタッと止まった。
その人の手には、小さなオルゴールがあった。
その風貌からは、どう見ても似合わないかわいいオルゴールだった。
笑みがもれた。
少なくとも私にはそう見えた。
大きな荷物に腰を下ろし、オルゴールのねじを巻き、
その流れるメロディを聴いている。
目の前には妻恋坂・・。
昔、別れた優しい恋人の笑顔も浮かんでくる。
その人の回想が静かに進んでいく・・。
この物語のでだしは、私の書いた物ではありません。
しかし、一応作者の了解は得ています。