表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
友情スキルは友好度と共に!  作者: 生ハム
妖魔連合ノ章

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

7/11

伝説の不死鳥!


 白髪で紫色の着物を着た妖魔。病人のような青白い肌はさらに幽鬼の如く青白いものになっていた。死狂(しきょう)は骸峠学園の結界の外側まで吹き飛ばされ空き地に不時着した。しかもあの一撃で()()()()()()()


 遠くには大きな竪穴が空いた校舎が見える。

 緑色の髪の女、水月 鏡弥(すいげつ きょうや)。あいつが来てから千里 楽市(せんり らくいち)の戦闘能力が明らかに上昇した。

 校舎の竪穴から水月が姿を現した。水月は|校舎の垂直の壁を歩いて降りてくる。


 あの女は規格外という言葉では表現できない程に強いことが分かる。どういう特殊技術(スキル)かは知らないがもう油断はしない。ここまで来たら確実に殺す。

(私の間合いに入った瞬間、抜刀術でその首刎ねてやる。)


 水月が普通に歩いてくる。隙だらけだが油断はできない。絶対不可避の間合いで斬る。


「結構遠くまで飛んだのに、無傷なのはどういうことかな?」

「死っ死っ死っ無傷なのは私が【不死身】の能力を持っているからだよ。死んだらまた元に再生するのさ」

「へぇー便利な体だね」


「死っ死っ死っそうやって余裕でいられるのも今のうちだ。気付かないか?私の妖気が上がっていることに」


 死狂の体からは妖気がみなぎっている。


「…なるほど。死んだらパワーアップするのか。確かに厄介だな」

「そうだろう。だから君は諦めておとなしく私に斬られるしかないんだ」


「こう見えて僕はものすごく怒ってるんだよ。教えてあげよう」


「ッッ!!?」


 水月は死狂を睨みつける。突風が吹きその刹那、死狂の脳裏に走馬灯が駆け巡った。死狂は一瞬の衝撃によろめく。

「……なんだ?今のは…」

「やっぱり君は強いね、100回は殺したつもりだったけど、70回くらいしか殺せなかったよ」


(馬鹿な!あの一瞬でそんなことが…!?)


 死狂は自身の妖気を確認した。妖気がいまだかつてないほど溢れている。


 どうやら自分が死んだことは確かなようだ。自身の死を認識できないということがありえるのか。


 目の前の水月が得体のしれない怪物に見えた。しかしこれは好機だ。水月は強者ゆえの驕りで油断している。

(今の私にある妖気は、100回分の死に相当する強大な負のエネルギーだ。これを一撃に込める。)

 

「もう終わりにしようか」


 水月が一歩踏み出す。

(まだだ。確実に抜刀術で仕留められる距離まで…)


 死狂は全神経を水月に集中する。


(…一歩…二歩…三歩…今だっ!)


 刀を鞘から高速で抜き放った。水月の首元まで刃が迫った。死狂も戸惑う程の過去に類のない最高速度の抜刀術が水月の首を刎ねた。 


 水月の頭がゴトッと落ち、胴体も糸の切れた人形のように崩れ落ちた。


「死っ死っ死っ終わってみると意外と呆気ないものですね。ん?」


 死んでいる水月の身体が動いた。だが動けるはずがない。奴は死んだのだ。脊髄反射か何かだろう。

「人の死とはどんな意味を持つのか?僕は本気で考えたことがある。この【不死鳥】の力を持つとそんな哲学的なことを日常的に考えるようになってしまうだ」


「っ!!?しゃべるだと!首を刎ねたんだぞ!」


 地面に転がる水月の頭が唇を動かして喋っていた。

「驚くことはないだろう。君だって不死身なんだ。この世界にもうひとり不死身の人間がいたって不思議じゃない」


「それは私が妖魔だからだ!人間の身でそんな事ができるわけがない!」

「僕はできるんだよ」


 水月の身体が灼熱の業火に包まれた。燃え盛る火炎の中でむくりと何かが起き上がる。頭と胴体が繋がった水月がこちらを見据えていた。

「じゃあ、次は僕の番だ。本当は国家機密なんだけど、特別に見せてあげるよ」


 水月の姿が炎を纏った巨大な鳥の姿に変わる。背中の一対の炎の翼をはためかせる。


「どうだい僕の真の姿は。美しいだろ。楽市にも見せたいんだけど、火事になりそうだからね」

「なんだ…その姿は…」


「僕は不死身だ。だから不死身の倒し方も分かってる」


 不死鳥は死狂を鉤爪でわしづかみにすると、火の粉を舞わせながら天空へと飛翔した。


▼▽▲△▼▽―学園 剣道場―


 剣道場では鉄と鉄がぶつかり合う残響が奏でられていた。


「…面白い…面白いぞ…人間!」

「我も久しぶりに面白い妖魔と出会ったな」


(あまり我はこういう作戦は好きではないが皆は逃げられただろうか。)


 狩屋 刀魔(かりや とうま)も初めは時間稼ぎのつもりだったが、少し楽しくなってしまった。不謹慎だろうか。


 もし武人の妖魔がいたら前から戦ってみたいとは思っていたが、まさか向こうからやってくるとは…人生とは分からないものだな。


 剣を交えて分かった事だがおそらく純粋な力では青月(せいげつ)殿と我は互角だ。では技術はどうかというと、お互いに決定打がないのが現状だ。


 つまり先に体力が尽きた方の負けになるのだが、妙なことに長いこと死闘を演じているにもかかわらず、鎧兜を着た青月の体力が一向に衰える気配がない。


 妖魔とは体力も無限なのだろうか?


 青月が青い刀を振り下ろす。狩屋はそれを紙一重でかわす。


(とにかく我は絶対に負けるわけにはいかん!)


 狩屋は雑念を振り払うと愛刀の【虎徹】振るう。


■□◆◇■□―学園 中央広場―


 

 中央広場で闇原 燐(やみはら りん)はただの鉄屑と化した付喪神(つくもがみ)の瓦礫の山の上にいた。


「あれぇ夢中でガラクタ人形ぶっ壊しまくってたらあの麻呂麻呂言ってた奴どっかいちゃった」


 遠くの方で金属製の何かが擦れ合う音が聞こえる。今まで倒した付喪神が磁力を持ったように互いにくっつき始めた。


「麻呂の付喪神を全滅させるとはやるのう」


 平安貴族の妖魔、闇麻呂(やみまろ)四阿(あずまや)の上で高みの見物をしていた。

「これは麻呂の実験につきあってもらった礼だえ」


 鉄屑で作られた津波が闇原を飲み込もうとうねりをあげる。

(あの質量を耐えられかわからないけど…)


 特殊技術(スキル)【粘土】でドーム型の壁を作り出す。粘土で作り出されたドームは鉄屑の波に飲まれ、幾つもの金属音を立てながら埋もれていった。

「では麻呂はこれにて失礼させてもらおうかのう」


 闇麻呂は中央広場に創り出された鉄屑の山を見ながら悠然と去って行った。


▼▽▲△▼▽―海岸から離れた沖合の海の上空―



 不死鳥となった水月は死狂と、途中で拾った大岩を持って太平洋上空を飛行していた。


「私に何をするつもりだ!」

「君にふさわしい罰を与えるのさ。…そろそろこの辺でいいかな」


 水月は死狂を大海原に投げ飛ばす。死狂は水面をバウンドして水しぶきを上げて着水した。炎の不死鳥となった水月を見上げる。

「まさか…待て!!」


 水月は持っていた大岩を死狂に投擲した。

大岩は死狂と水面に直撃し巨大な水柱を作った。


「あの不死身の力を発動するには2秒~3秒のインターバルが必要みたいだから、殺し続けるくらいしか無力化する方法が思いつかなかったよ。拘束する方法も考えたけど楽市をいじめたからね、自業自得さ。世界の終わりまで圧死と溺死を繰り返すといいよ」


******


 黄泉越 死狂(よみごえ しきょう)は元々普通の人間だった。だがある時人斬りの快感に目覚めた。それからは辻斬りを繰り返す日々だった。


 しかしそれが長く続くこともなく通りすがりの奉行所の岡っ引きに捕まってしまう。白州の上に座らせられた時はもう駄目だと思った。だが彼が一番残念なのは死んだら辻斬りがもうできないという事実だった。


 そんな時だった。()()()に会ったのは。(ぬえ)様は私を奉行所の牢屋から救い出し私を妖魔に変えたのだ。


(私はこれから死ぬこともなく未来永劫辻斬りができると思っていたのに…こんな所で…鵺様…)


 黄泉越 死狂は大岩に押されながら海の底に沈んでいった。



■□◆◇■□―学園 北門―



「弱いぞゴラァ!」


 聖 槐(ひじり さいかち)は鬼の妖魔、修羅鬼(しゅらき)の連撃を剣で受け流していた。だが受け流しきれずにくらってしまった攻撃もあり、全身痣だらけだ。


「聖剣にばっか頼ってるからこんな弱いんだよゴラァ!」

「それは…否定できませんね」


 突きの構えをして一気に剣を修羅鬼に向けて押し出す。修羅鬼に簡単に躱されると剣を拳ではじき飛ばされる。


「終わりだゴラァ!」


 修羅鬼の拳が聖の顔面を捉えた。聖は思わず目をつぶってしまった。この局面で目をつぶるのは致命的であり、自殺行為に等しかった。


 自分は痛みへの恐怖に負けてしまったのだ。だからこそ痛みを受け入れようと自分は目をつぶってしまったのだ。

(私はなんて弱いんだろうか)


 聖は衝撃に身構える。だがいくら待っても衝撃がこない。おそるおそる目を開ける。そこには聖剣を取りに行っていた日ノ宮 優(ひのみや まさる)が修羅鬼の拳を受け止めていた。


「なっ!?誰だてめぇはゴラァ!」


「生徒会長、遅くなってすいません」


 日ノ宮は特殊技術(スキル)【加速】をかけた蹴りを修羅鬼の顔面に叩きこんだ。

「クッ!痛ぇぞゴラァ!」


 修羅鬼は勝負に水を差されわなわなと怒りで震えている。

「生徒会長…申し訳ありません。聖剣を奴等に奪われてしまいました」


 日ノ宮は苦渋の色を浮かべて言った。


 聖も修羅鬼の発言を聞いてなんとなく予感していたことではあった。しかしあの日ノ宮から聖剣を奪うとはどんな妖魔なのか。


「てめぇも邪魔すんならぶっ殺すぞゴラァ!」

「修羅鬼くん、そろそろ撤退するからその辺で切り上げてくれると助かるな」


 いつの間にか聖達と修羅鬼との間に奇術師のような恰好をした狐の妖魔が立っていた。


「貴方は何者ですか?」

「おぉーこれはこれは、聖剣の持ち主である聖さんではありませんか。お初にお目にかかります。私は妖魔連合で参謀をしております凶狐(きょうこ)という妖魔です。以後お見知りおきを」


 シルクハットを取り綺麗なお辞儀をする。聖に対する何かの皮肉なのだろうか。この妖魔が慇懃無礼な妖魔だということがよく分かった。


「こんな大事件を起こして、ただで済むと思ってるんですか?」

「ただで済むとは思ってませんよ。元々妖魔連合は人間社会に宣戦布告するつもりでしたからね」


「貴方達は何が目的なんですか?」


 凶狐の細目が見開かれ邪悪な笑みがこぼれる。

「我々の目的は人間社会を崩壊させ、妖魔の国を建国することです」

「そんなことさせない」


「人間の許可など求めていません。人間を淘汰し、我々妖魔による、妖魔の為の、妖魔だけの、完璧な国を建国してみせます」


「なんの大義名分があってそんなことするつもりなんですか!」


 凶狐はわざとらしい溜息をつくと説明を始めた。

「大昔、この国は我々妖魔のものだったのですよ。それなのに突然よそから人間が来て簒奪したんです。妖魔が平和に暮らしていたのにもかかわらずです。信じられますか?」


「それだから人間は殺すと?」

「はい、一人も残さず殺処分です。妖魔の国には不要ですから」


「それも(ぬえ)からの指示なの?」

「鵺様は気分屋であらせられるので方針が変わることも多々ありますが、建国に関しては楽しみにしているようなので本気だと私は解釈しています」


 聖の頭には鵺という自由奔放な王様と鵺に忖度する凶狐という宰相のイメージができあがっていた。

 人の命をなんとも思わない妖魔にまともな国を作れるとはとても思えなかった。妖魔連合の企みを絶対に止めなくてはいけない。この妖魔達を倒すには学園の力だけではなく国家の力も必要だ。


「おっと、もうこんな時間だ。では我々は引き揚げますので、さようなら」


「逃がすか!」


 日ノ宮は【加速】を使った蹴りを凶狐の首めがけて放つが空を切る。凶狐と修羅鬼が木の葉となって消えてしまった。


「では人間の皆さん、またお会いましょう」


 残った木の葉が嘲笑うかのように空に舞っていった。



▼▽▲△▼▽―襲撃事件から一週間後―



 楽市と水月は病院に入院しているクラスメートのお見舞いをした帰路だった。


「いやー皆死なずに助かってよかったね。夏休みが少し早まったのもよかったけど」


 水月が他人事のように言った。

(クラスの皆は死んでないだけでかなり重傷だったんだけど心配じゃないのかな?)


「刀魔もまた入院しちゃったし。前から思ってたんだけど、刀魔は本当に病院が好きだよね」

(別に狩屋さんは好きで入院してるわけじゃないと思うだけど…)


「あの妖魔達、僕が学園に帰ってきたときには姿を消しちゃってたし、不安要素が残っちゃったな」

「僕はもう関わりたくはないかな。というか僕とはまったく無関係だし」


「それは分からないよ。だって死狂が君のことを知ってたんだろ?まったくの無関係とは言い切れないんじゃないか?」


「そういえば(からす)がどうたらこうたらとか言ってたな」


「カラス?」

「僕も意味が分からないんだけど、さすがに無関係でしょう。それよりも僕の姉さんだよ。海外留学から帰って来るんだ」


「楽市のお姉さんか。1年くらいなのに久しぶりな感じがするな」


 学園側の働きかけで姉さんの帰国がだいぶ早まったという話だ。どうやらこの国は妖魔との全面戦争に備えて戦力を集めているらしい。

 Sクラスにいると感覚が麻痺するが、うちのクラスの特殊技術(スキル)持ちはかなり優秀で、特殊技術(スキル)を保有している軍人や警察など軽く凌駕する力を持っているらしい。

(クラスの皆があんなに強いわけだよ)


 学園側が意図的にSクラスに集めたふしすらある。


 こうなるとSクラスになったのは必然だったのかな。…忘れてた。僕は特別推薦だった。


 姉さんはどういう意図を持って僕を特別推薦にしたんだろう。当時はまだ特殊技術(スキル)すら持っていなかったのに。


 …帰ってきたら思い切って聞いてみようかな。


 楽市はどこまでも澄み渡る青空を仰ぎ見た。


★□■◇◆□■★―飛行機の機内―


 飛行機の窓外を眺めながら黒髪の少女が呟く。

「…兄さんと弟は元気かな」

 

 それだけ呟くと旅の疲れから微睡みの中に落ちていった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ