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友情スキルは友好度と共に!  作者: 生ハム
妖魔連合ノ章

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5/11

妖魔連合会議!

 

 荒蜘蛛市(あらくもし)の郊外に向かう一人の男がいた。牙城 友樹(がじょう ともき)。骸峠学園二年Sクラスの生徒の一人である。しかしその足どりは重い。


 これから会いたくもない奴らと会わなくてはいけないからだ。だがこれは定期的に行わなくてはならない大事な会議だ。もし行かなかった場合は背信行為とみなされ刺客が送り込まれる可能性もある。


 気が進まない牙城だが、今回はどうしても言わなくてはならない相手がいる。


 牙城は郊外にひっそり建つ寂れた倉庫の前に着いた。倉庫の扉を開けようとすると肩に乗った白い狼、雪丸が怯えている。


 雪丸は牙城の特殊技術(スキル)で生み出した獣である。【魂の獣(ソウルビースト)】は自身の感情が色濃く反映される。おそらく雪丸に自身の恐怖が伝染したのかもしれない。


 扉を一枚を隔てて内部の妖気が滲み出ているのが分かる。中は妖気で充満していることだろう。


 牙城は倉庫の扉を開けた。


 目的の妖魔が牙城を待つように立っていた。


「牙城くん、久しぶり元気だったかな」


 妖魔連合参謀の凶狐(きょうこ)が腕を広げて歓迎する。黒を基調とした奇術師のような恰好の妖狐だ。狐顔にある薄く開けた細目は知性と狡猾さを感じる。腰からは小麦色の狐の尻尾が伸びている。


 凶狐は手袋をはめた手でシルクハットの位置を調整するような動きをする。


「君は私に何か言いにきたのではないのかな?」


 さすがに見抜かれているようだ。だったら遠慮することもないと牙城は言う。


「暗堂家に悪魔が封印された危険な魔導書を売ったのはお前だろ」


 入院していた暗堂から聞き取り調査をした結果、牙城が心当たりがある妖魔に行き着いたのだ。


「何を考えてやがる。荒蜘蛛市と学園周辺は俺の管轄だったはずだろ」


 凶狐はわざとらしい溜息をつくと口を開く。


「牙城くん私にも言い訳をさせてくれ」

「言い訳?」


「まず悪魔の件だがね、あれは事故のようなものなんだ。ちょうど五年前だったかな?私が暗堂家に魔導書を売ったんだ…」


 「でも」と凶狐は続ける。


「契約書にサインしたのは彼らだ。その後に何が起ころうと私の預かり知らぬ話だし、契約書にも書いてある。ほら、ここに書いてあるでしょ―当社は一切の責任を負わないと―」


 凶狐は暗堂家のサインがされた契約書を懐から出し牙城に見せる。牙城はその紙をひったくるとビリビリに破り捨てる。

 本当にふざけた奴だ。なぜ平然とそんなことができる?


「遊戯姫!!てめぇイカサマしやがっただろ、ゴラァ!!」


 突如倉庫内が震えるような怒声が轟いた。


 怒声の発生原はトランプをしていた五人の妖魔連合幹部からだった。


 山賊のような獣の毛皮を着て、額からは鬼の証である一本角が生えている。妖魔連合の獄門 修羅鬼(ごくもん しゅらき)である。


「私が遊戯(ゲーム)でイカサマなんてする分けないでしょ」

 桃色髪の少女が不快に顔を歪める。


「それもそうか…じゃあ森羅てめぇか!ゴラァ!!」


「わっちは勝負ごとでイカサマなどしんせん」

「ガハハハッ、ワシも右に同じく」

 化け狸の大吉と元花魁の森羅万象という妖魔が言った。 


「そうか…じゃあウマシカてめぇか!ゴラァ!!」

「なぜじゃ?なぜ余は負けたんじゃ?」

 銀髪の野良犬妖魔、ウマシカが地団駄を踏む。


 そのやりとりを近くでジッと見つめている妖魔もいる。

 (からす)という名前の妖魔で、奇妙な木製の仮面を着用し漆黒のローブとフードで肌を一切出していない。妖魔連合の古参で、金庫番 兼 情報屋でもある謎の多い妖魔である。


 こんなふざけた連中が妖魔の代表で妖魔連合の幹部だというのだから世も末だ。


 遊戯姫が牙城に気付く。


「久しぶり元気だった。そうそう私、牙城に幾つか話したい事があったの」


「俺に話したい事?」

「あの死狂(しきょう)が人間に()()()()の」


「確かにすごい話ではあるが…」


 黄泉越 死狂 (よみごえ しきょう)は妖魔連合の幹部の一人で、おそらく妖魔連合の首領である(ぬえ)様に次ぐ強さを持っている。


 この国の社会では妖魔は1~5の危険度でランクされている。死狂のランクは一番上位の危険度5だ。


 そんな死狂が()()()()のだから確かにすごい。もしかしたら妖魔連合の幹部が倒されたのは初めてかもしれない。しかし…


「死ッ死ッ死ッ…その人間は私が斬り殺してしまったけどね」


 倉庫の入り口から()()()()はずの死狂が歩いてくる。


 白髪で痩けた血色の悪い肌はまるで死体のようで、紫色の着物を着ている。腰には刀が差してあった。


 【不死身】の死狂(しきょう)、それが奴の二つ名だ。


 肩に乗っていた雪丸が怯えていた。とてつもない妖気と殺気に当てられた結果だ。


 隣にいた凶狐が片手を上げて言った。


「やぁ~死狂くんこの言葉が適切かどうかは分からないけど元気してた…あらッ!?」


 凶狐の頭がはね飛んだ。ドチァッと気味の悪い音を立て凶狐の首が落ちた。首から上を失った凶狐の胴体が血飛沫を上げて崩れ落ちた。


「死ッ死ッ死ッ…今のは情報を出し惜しみした対価ですよ」


「死狂くん違うんだよ。サプライズで強い人間を用意していただけなんだ」


 牙城の真横から何事も無かったように言い訳している凶狐が現れた。おそらく【幻術】を使ったのだろう。


 床に落ちた凶狐の首も胴体も消えている。まるで初めから惨劇も死体も無かったように消えていた。


 凶狐の言動を聞いて倉庫の隅で反応した妖魔がいた。

 青月(せいげつ)という鎧兜の妖魔だ。牙城も詳しくは知らないが青い刀の使い手だとか。


「…何故…それがし…言わない」


 断片的な事しか言わない青月は牙城が苦手とする妖魔の一人だった。


「決まっておるじゃろう。そうやって麻呂達を困らす事がそこの妖狐の考え。愉悦に浸って楽しんでおるのよ」


 (かんむり)をかぶり白い(ほう)を纏った平安貴族の妖魔が(しゃく)で口を覆いながら、倉庫の入口に立っていた。牙城も知らない妖魔だ。


「…誰だ?」


 凶狐が牙城の疑問に嬉しそうに答える。


「紹介するよ、妖魔連合に新しく入った闇麻呂(やみまろ)くんだ。皆も仲良くしてあげてね」

(この狐はまたわけのわからん妖魔を加入させたのか)


 凶狐が「全員揃ったかな」と言うと手を軽く叩く。妖魔連合の幹部達がそれに反応した。


「最近は形骸化しつつある妖魔連合の集会に皆さんよく集まってくれました。妖狐を代表して御礼を申し上げます」


「嘘つけ!」と倉庫内からヤジがとぶ。凶狐はそれを気にせず続ける。


「それと大変残念なお知らせを最初に言わなくてはなりません。(ぬえ)様は今回の集会を欠席で御不在ですので妖魔連合参謀のこの凶狐が進行役を務めさせてもらいます」


 ()()()だろ、と牙城は思った。


 牙城が妖魔連合に加入してから一度も鵺様には会ったことはない。多分他の幹部達もそうだろう。いつも指示だけ出して姿を見せない。

 用心深いのか、臆病なのかよく分からない妖魔だ。ただその影響力は絶大で、名前を出しただけでこれだけの妖魔を集めることができるのだからすごい妖魔なのだろう。


「では早速今回の議題を発表しましょう」


 どうせ今回もたいした内容ではないと牙城は思っていた。どこぞの妖魔がどっかの妖魔の領域を侵した。そんなとこだろうと。


 だが聞いた議題は牙城の想像を超えるものだった。


「…荒蜘蛛市にある骸峠学園に攻撃をしかける件についてです」


 牙城は今聞いたこと信じられなかった。

(…この狐は今なんて言った?学園を攻撃?)

「知っての通り骸峠学園は特殊技術(スキル)養成を是とする学園です。ここを攻撃すれば人間社会に衝撃を与え、妖魔連合の名が世間に轟くでしょう」


 確かにあの学園は特殊技術(スキル)を養成する学園だ。そこを攻撃すれば社会への衝撃も大きいだろ。だがリスクが高すぎる。


 何故ならあそこはこの国の中枢とも繋がっている。しかも生徒のひとりひとりが強力な武力を備えているのだ。下手するとそこら辺の警察官より強いかもしれない。


 それがさらに国家権力に守られているのだ。無謀にも程がある。

「…と、鵺様からの命令です」


「…鵺様は正気なのか?戦争でも始めるつもりか?」

 鵺様に対する不敬に取られるかもしれないが、牙城は聞かずにはいられなかった。しかし幸か不幸か、その質問は修羅鬼に遮られた。

「学園を攻撃するのは分かったけどよぉー今回は何人で出るんだよぉ?ゴラァ」


 シルクハットをいじりながら凶狐が修羅鬼を見据える。その細目が見開かれ凶狐が冷たく言い放つ。


「…全員だ」

 

 一瞬の沈黙の後、修羅鬼が反応した。


「おいおい全員ってマジかよッゴラァ!」

 修羅鬼の口の端が邪悪につり上がっていた。

「死ッ死ッ死ッ…楽しみだ。また大量の人間を斬り殺せる」

「おい死狂てめぇゴラァ!!量よりも質だろがよゴラァ!!」


 修羅鬼が死狂に食ってかかる。そこに青月も加わる。

「…修羅鬼…同感だ。死狂は…論外だ」


「死ッ死ッ死ッ…君達はどうやら死にたいようだね」

 妖気が混じりあった殺気が死狂と修羅鬼と青月の間でぶつかり辺りにまき散らす。


「もうここで殺っちまうかゴラァ!!」


「はーいストップ!ストップ!そこまでにしようか」

 手を出そうとする修羅鬼を見て凶狐が両者の間に入る。


「今から学園襲撃の作戦をざっくり説明するから落ち着いてよ」


 凶狐が咳払いをすると説明の続きを始める。


「さて我々の作戦の目的は三つだ。まず一つ目は学園への攻撃。二つ目は聖剣の奪取。三つ目は妖魔連合による人間社会への宣戦布告だ」


 牙城の頭には最悪の二文字が過っていた。別に学園のみんな…Sクラスのみんなに死んでほしいわけじゃない。

(俺はただ俺を拾ってくれた妖魔連合に義理を果たしたいだけだった。それがこんなことになるとは…なにがなんでも止めなくては!)


「待て!学園にはあの水月 鏡弥(すいげつ きょうや)がいる!アイツはどうするつもりだ!」

(からす)の情報にあった人間だね。鴉と相談して算段はついてるから大丈夫だよ」

(算段はついてる?あの水月をどうやって?)


「水月 鏡弥?誰だゴラァ」

「わっちも聞いたことがない」

「ガハハハッワシもじゃ」

「麻呂も初めて聞く名だのう」

 

 妖魔連合の幹部達が顔を見合わせる。


「死ッ死ッ死ッその男は強いのか?」

 その疑問に凶狐が答える。


「強いよ。学園どころかこの国の最強なんじゃないかな。あと補足すると水月 鏡弥は男みたいな名前だけど女性だよ」

「そんなに強ぇのかよ。俺と水月どっちが強いんだゴラァ」


「彼女と一対一で戦ってはダメだ。作戦を立てて罠に嵌めるか、妖魔連合全員でかかるかしないとね。最終手段としては鵺様に出ていただく必要もあるかもしれません」


「あっ!私思い出した!朝のワイドショーに出てた緑髪の奴だ!」

「わっちも今思い出しんした。確か妖魔退治のスペシャリストだとか…」


「死ッ死ッ死ッ…私としては人が斬り殺せれば何も問題じゃない。まぁ興味があるとすれば楽市という男かな」


 その名前に牙城は、ビクッと反射的に身体が反応した。

「…何で死狂が楽市の名前を知っている?」


楽市。Sクラスどころか学園で何かと話題になっているクラスメートだ。特殊技術(スキル)がないことに悩んでいたようだが、遅咲きだったのか特殊技術(スキル)が発現して今では力をつけはじめている。


「死ッ死ッ死ッ…友達かな?(からす)から聞いたのだよ」


 牙城は奇妙な木製仮面を被った黒ずくめの妖魔をにらみつける。仮面を被っているため鴉の表情を窺い知れない。

(お喋りな奴め。しかしこいつはどうやって学園の情報を入手しているんだ?)

 

「あーあ楽市死んじゃうだ。私好きだったのに…かわいそう」

「ガハハハッワシらが先に見つけて回収すればいいのではないか?」

 幹部達が各々勝手に喋り始めた。それを見て凶狐が話を締めに入る。


「学園襲撃作戦は一週間後だ。作戦の詳細は明日改めて話そう。では次の議題だ。ここからは楽に聞いていいよ。喉が渇いたら言ってね。ウォーターサーバーがあるから。最近妖魔の統制がとれていない件だね。これは…」


 まるで世間話でもしていたような流れで次の議題に移った。


 暗澹たる思いを抱きながら牙城は倉庫の天井を仰ぎ見た。


▲△▼▽▲△▼▽▲△▼▽▲△▼▽▲△▼▽▲△▼


 


    ―登場人物紹介―妖魔連合―


(ぬえ)様―危険度???―

妖魔連合の首領にして妖魔の頂点の妖魔王。


凶狐(きょうこ)―危険度5―

妖魔連合参謀の妖狐。奇術師の恰好を好んでしている。〈幻術〉を使うことができる。


黄泉越 死狂(よみごえ しきょう)―危険度5―

妖魔連合幹部。元人間の人斬り妖魔。白髪で病人のような白い肌に紫の着物を着ている。


闇麻呂(やみまろ)―危険度???―

平安貴族のような恰好をした妖魔。


大吉(だいきち)―危険度4―

元人間の妖魔化した化け狸。


森羅万象(しんらばんしょう)―危険度4―

元花魁で元人間の妖魔。


獄門 修羅鬼(ごくもん しゅらき)―危険度4―

闘争を好む鬼の妖魔。


青月(せいげつ)―危険度4―

鎧兜を身に纏った妖魔。青い刀の使い手。


遊戯姫(ゆうぎひめ)―危険度3―

この国のポップカルチャーから生まれた妖魔。ゲームをこよなく愛する。必殺技は【遊戯空間(ゆうぎくうかん)】。


(からす)―危険度2―

金庫番 兼 情報屋で奇妙な木製の仮面を被り、肌を一切見せない漆黒のローブとフードをした謎の妖魔。


―ウマシカ―危険度1以下―

道着に袴をはいた銀髪の獣人。野良犬の妖魔で自称 最強の妖魔。妖魔連合の愛すべきマスコットキャラ。

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