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友情スキルは友好度と共に!  作者: 生ハム
妖魔連合ノ章

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4/11

夜の学園の妖魔!

 

     《題名 黄昏の思い出》


 凝った装丁に《黄昏の思い出》と題名がついた小説を読み終わった楽市は読んでいた小説を机の上に置いた。


「《黄昏の思い出》というノンフィクション小説を書いてみたんだけど感想を聞かせてくれないかな」


 緑髪のクラスメートの水月 鏡弥(すいげつ きょうや)が創作した小説を読んで衝撃を受けた。自費で装丁まで作る気合いの入れようである。不登校明けで日が浅いのになんてもん読ましてくれたんだ。


 小説のあらすじを一通り読んだけど思い出がかなり美化されていて驚いた。しかも痛過ぎるポエムみたいだった。


「思ったんだけどノンフィクションってドラマにしたらノンフィクションじゃ無くなっちゃうじゃないの?」


 しかも一方的な一人称視点。しかも特殊なフィルターが入ったものだ。


「確かに虚構の物語になってしまうかもしれないな。そこはよう検討だね。二冊あるから楽市に一冊譲るよ」


「いや僕はいいよ。姉さんに見つかったら怖いし」


 一番まずいのが姉を勝手に登場させているところだ。絶対に怒るだろ。水月は姉の怖さを分かってるはずなんだが。


 生徒会長の聖 槐(ひじり さいかち)さんが群青色の長い髪をなびかせながら紙の束を持って歩いてくる。


「楽市くん、これは貴方が休んでいた間に溜まっていた宿題です。ちゃんとやって下さいね。後暗堂くんのお見舞いの件ですが…ん?何ですか、これは?」


 聖 生徒会長が僕の机の上に置いた小説を手に取る。ぱらぱらと読んだ。聖さんの顔が徐々に赤くなっていくのが分かった。


「な?!なんですか…これは?」


 水月が書いた痛すぎるポエムです。


「僕が書いた小説だよ」


 水月が平然と言った。


「貴女はよくこんな破廉恥な物を人前に出せますね」

「心外だな。人前に見せても恥ずかしくない立派なノンフィクション作品だよ。生徒会長が検閲したいなら読んでもいいよ」


「読みます」


 読むんだ。


 聖 生徒会長が台本の頁をぱらぱら捲っていく。そして中盤に差し掛かる。


「どうして…学生…同士が…体育館倉庫で…こんな破廉恥な事ができるんですか?」


 聖さんが小説を持ってわなわな手が震えている。紅い顔に涙を浮かべながら僕と水月を交互に見る。


(僕はあらすじしか読んでないけど、いったい中盤で何が起こったの?)


「やっぱり生徒会長には中盤のシーンは刺激が強すぎたかな?でも後半はもっと凄い事になっちゃうよ。僕と楽市があの日の夏に部活が終わって、お互いに汗を流した後に快楽の果てに堕ちていくのさ」

 

 勝手にあの日の夏を捏造しないで下さい。それに僕達は部活なんて入ってなかったでしょ。


「この件は生徒会に報告させてもらいます」


(待て待て待て!そんなことされたらまた不登校になっちゃうよ!)


「生徒会長、その小説に書かれてる事の説明が難しいですが…つまりノンフィクション風に書かれたフィクションなんですよ」


「…そうだったのですか。私ったらお恥ずかしい…」


 生徒会長は口に手を当てて笑った。


 僕もつられて笑ってしまった。僕は何故か小説を自分の机の引き出しに入れてしまった。



▲△▼▽▲△―夜の学園・正門前―


   

  僕はとんでもない事に気付いてしまった。明日は持ち物検査があるのだ。しかもかなり本格的なもので、机の中までチェックされる。

 校則違反の物が出てくると一ヶ月間、掲示板に名前と違反物が貼り出される。


 このイベント自体は別に問題はない。毎年何回かあることだからだ。問題なのは僕の机の中にある物だ。


 ノンフィクション恋愛小説に見せかけた官能小説を机の中に忘れてしまった。あんな物が教師に発見されたら僕の学園生活が終わる。


 僕は両親が寝静まると家を抜け出す。


 そして現在―僕は学園前にいるということだ。僕はスキル〈光学迷彩〉で学園内に侵入する。友人の特殊技術(スキル)をなんて事に使ってるんだと僕は思う。


 僕は自分のSクラスの教室に入る。僕の机の引き出しの中に例のブツがある筈だ。


「無い!」


 ちゃんとしまった筈だ。まさか…もう教師に例のブツは発見されている?


 あり得ない話ではない。この学園は抜き打ち検査が存在するのだから。実際予定日の前日に持ち物検査を実施したこともある。


 でもさすがに夜に持ち物検査はやらないだろ。まさか生徒会長が気をきかせて例のブツを持っていってくれた?


 それはないか。じゃあ例のブツはどこに行ったんだ?


 他の場所を探そうとした時だった。教室の外を桃色髪の人物が横切った。


「え?こんな時間に誰かいるのか?」


 一瞬見た感じだと生徒にも見えなくもなかった。僕は後を追いかけることにした。不法侵入なら捕まえる義務がある。


「あれ?待てよ。今僕も不法侵入してることにならないか?」


 僕は自分のことを棚に上げて不法侵入者を追いかけることにした。


 


 桃色髪の人物は体育館に入って行った。


 体育館の中は薄暗い。電気を点けようと思ったが学園内には校舎から離れているとはいえ寮もあるのでやめた。


 僕は体育館の内部を見まわすが桃色髪の人物は見当たらない。諦めて帰ろうかと思った瞬間、体育館にある舞台の幕が上がる。舞台の中央がライトアップされ一人の少女が現れた。


「私の【遊戯空間】に、ようこそいらっしゃいましたぁー!!今宵はとてもいい遊戯日和ですねぇー!!」


 その桃色髪の少女はドクロのワッペンがついたベースキャップに、キラキラ輝く装飾をつけたショートパンツ、へそだしトップスを着ていた。


 少女の手にはマイクが握られており体育館中に声が響いていた。


「えーと…君は誰?」

「私ですかぁー!?私はポップカルチャーから生まれた妖魔にして、妖魔界のアイドル、遊戯姫です!!ウェェーイ!!」


 マイクで声量が増幅されているせいで耳がキンキンする。いやその前に…


「あの…ご機嫌なとこ大変申し訳ないんですけど声をもう少し抑えてもらえませんか?ほらご近所に迷惑だし」

「それは御心配なく、私の【遊戯空間】は外と完全に遮断されているため、校舎内部の音はすべてもれません」


「そうなんですか、それはよかった」

(いや待て!よくないだろ!)


 相手はおそらく妖魔だ。少女の見た目をしているが人語を解する人型の妖魔は強力な妖気を持っていると聞く。対応を間違えれば、危険かもしれない。


「あの僕そろそろ家に帰りたいんですけど…帰っていいですか?」


「普通に帰してあげるのはやぶさかではないのですが…それじゃ少しつまらないですよねー。だから私とゲームをしませんか?」


「ゲーム?」

「はい!私とゲームをしてくれたら家に帰してあげます!」

「それは勝敗に関係なく?」

「はい!あっ、でもただ勝負するだけじゃ面白くないんで、負けた場合は(ペナルティ)を受けてもらいます」


 (ペナルティ)?まさか…


「負けたら死ぬとか?」


 遊戯姫は首を横に振る。


「私はデスゲームはしません。普通の健全なゲームです」

「そうなんだ」


「では早速ゲームの説明をしますね…と、その前に今回ゲームに参加する妖魔さんに来てもらいました!では出てきて下さい!」


 舞台の袖から三人の妖魔が出てきた。


「では紹介します。まずは化け狸の大吉(だいきち)さんです。大吉さんは大昔に山で遭難して、空腹で歩いてたところを、たまたま通りかかった狸を狸鍋にして食べて、狸の祟りにかかり妖魔化してしまった、元人間の妖魔です」

「ガハハハ、狸鍋食ってこんな姿になってしもうたわーガハハハ」


 赤いふんどし姿の巨大な狸が巨体を揺らしながら登場し笑っている。


「続きまして、元花魁にして元人間の妖魔、森羅万象(しんらばんしょう)さんです」


「なんでわっちがこんなことを…」

 艶やかな着物を着崩している妖艶な美女が困惑した表情で登場した。

「ガハハハッいいではないか、人間との余興もまた一興。ガハハハッ」


 大吉は何がおかしいのかまだ笑っている。


「最後に紹介するのは自称最強の野良犬獣人妖魔。ウマシカさんです」

「最強の余の出番がきたようだな」


 銀髪で頭から生えた銀色の犬耳。道着に袴をはいた妖魔が登場した。よく見ると袴の後ろから銀色の尻尾が見える。銀髪や尻尾が癖っ毛なのか全体的にモフモフしており、遠目に見ると毛玉のように見える。


「モフモフした妖魔が出てきた」

「じゃろじゃろ!分かるではないか人間。余の最強にぷりてぃーで最強のモフモフの凄さが。今日は気分がいいので特別に御利益のある尻尾を触らせてやってもよいぞ」


 白銀の尻尾のモフモフを触らしてくれた。


「ありがとうございました。これで僕明日からも頑張っていけると思います」

「じゃろじゃろ分かるではないか人間」


「…あのーそろそろゲームの説明に入ってもよろしいでしょうか?」

「すいません気持ちよくて夢中になってました」

 遊戯姫さん達が僕がモフモフタイムが終わるまで待っていてくれていた。


「ではゲーム内容を説明します。ずばりこの校舎を舞台にした(かくれんぼ)です」


「かくれんぼ?」

「はい。補足すると、この【遊戯空間】の中では特殊技術(スキル)の使用はできません。暴力も禁止です、というより不可能です。貴方は…あの名前はなんて言うですか?」


「楽市です」


「楽市くんは自分の力だけで隠れた妖魔達を探しだすのです。制限時間は一時間、そして一時間以内に見つける事ができれば楽市くんが求める豪華賞品も手に入ります」


 遊戯姫が一冊の小説を掲げた。

(あれ?あの装丁すごく見覚えがあるんだけど)


「これこそ貴方が求めている物ですね。そして貴方が敗北した場合は屈辱という名の(ペナルティ)を受けてもらいます」


 遊戯姫が顔に邪悪な笑みを浮かべる。遊戯姫は手に持っていた小説を読み始めた。

 

「え?なにしてんの?」


 遊戯姫の顔が徐々に赤が差し始める。遊戯姫が一通り読んだのか、隣にいた大吉に小説を渡す。妖魔達で回し読みするつもりだ。

(ちょっともうやめて、充分屈辱だから)


「ガハハハッ最近の人間は進んでいるなーガハハハッ」

(大吉さん読むのやめて、勘弁してください。)

「わっちが一番気になるのは体育館倉庫の表現と描写のところじゃな。ちゃんと爪は整えていたのかとか、マットは敷いたのかとか、女をいたわったのかとか、表現と描写がされていないのでそこが気になるな」

(森羅さん論点違うでしょ。そもそも体育館倉庫そんなことするとこじゃないよ。)


「楽市は鏡弥の○○(ピー)○○(ピー)して○○(ピー)した」

(ウマシカさん…音読しないで…)


 遊戯姫が手を叩く。乾いた音が響いた。


「貴方が負けた場合はこれ以上の屈辱を与えます、いいですね」


 これ以上の屈辱が存在するのか!僕はどうなってしまうんだ。


「では大吉さん、森羅さん、ウマシカさんは校舎のどこかに隠れて下さい。五分後に始めます」


 妖魔達が校舎に散っていった。


「あれ?遊戯姫さんは隠れないんですか?」

「私はここで小説を読んでるから気にしないで」


 遊戯姫さんは 水月 鏡弥 作、黄昏の思い出を読み始めた。

(この妖魔は本当になにしてんの?)


 

 五分が経過したので僕は校舎に隠れた妖魔達を探し始めた。まずは校舎の一番上の階の四階から探すことにした。


 四階の教室の扉を順番に一つずつ開けていく。僕は妖魔達を見て気付いたことがある。

(あの妖魔達はめちゃくちゃ目立つ。)


 おそらく隠れるにしても限度があるだろ。教室といっても夜で人もいないから殺風景で探すのにそこまで時間はかからない。


 三階の教室に来た。四階は誰もいなかった。FクラスからSクラスの教室の扉を開けていく。Sクラスの扉を開ける。いつもの馴染みのある風景が広がっていた。


 ここも誰もいない。隣の教室に行こうとした時だった。教室の奥にあった掃除用具ロッカーがガタガタと揺れていた。


 僕はおそるおそる掃除用具ロッカーに近寄って行く。そして把手に手を引っかけて開ける。僕はそれを見たとき悲鳴を上げそうになった。


 そこにはギッチギチに詰まった大吉さんがいた。


「ガハハハッ見つかってしもうた」

「大吉さん…何やってるんですか?」


 その時掃除用具ロッカーが前方に傾いだ。盛大な音を立ててロッカーが倒れた。


「ガハハハッ、アカン!出られなくなってしもうた!助けてくれ!」

「もう何やってるんですか!」


 僕は大吉さんをロッカーから救出した。


 

 二階の教室を順番に開けていく。


 僕は教室の扉を開けながらふと思った。僕は夜の学園で何でこんなことをしているのかと?まるで夢の中の話みたいだ。



 一階の放送室の扉を開ける。


 そこには森羅万象さんが隠れていた。いや正確に言うなら待っていたの方が正しい。森羅さんは椅子に座り僕が来るのを待っていた。

「よくわっちを見つけたな。まぁ疲れただろそこに座れ」


 僕は森羅さんの前にあった椅子に座る。


「ぬしに聞きたいことがあったのだ。あの小説についてのことじゃ」

「あの小説は本当のことではなくてですね…」


「貴様はとぼけるつもりか!ぬしは女を舐め腐っておる!!」


 そこから森羅万象さんの説教が始まった。水月は本当に何を書いたんだ?風評被害が酷すぎる。


 

 森羅さんのお説教でだいぶ時間をロスしてしまった。僕はかくれんぼを再開する。


「はーい!!終ー了ーでーす!!」


 脳内に声が響く。これも遊戯姫の能力なのだろう。


 僕は体育館に戻った。舞台の上には遊戯姫と長方形に加工された大吉と、何故かむすっとしている森羅万象がいた。


 そういえばウマシカさんはどこにいるんだ?


 体育館倉庫のスライド式の扉が開く。


「最強参上じゃ!それにしてもおかしいのぉー楽市と水月がここで戯れてたはずなのに全然匂いがしないのはなぜじゃ?」

(この妖魔達はどこまで僕をイジり倒せば気が済むんだ?)


「はい!それでは楽市くん、私達はお別れの時間になりました。ゲームにご協力ありがとうございます。私はお腹いっぱいです。また機会があればまた会いましょう。ではさらば!」


 閃光が体育館を包む。僕は眩しさに目を細めると光が減少していき、辺りは静寂に包まれた。愉快な妖魔達は完全に姿を消していた。


「本当になんだったの?」


 まるで夢を見ていたような現実感がない出来事だった。


「コラァーそこで何してる!!もうとっくに下校の時間は過ぎているぞ!!」


 振り向くと体育館の入り口に立っていた狐顔の教師に怒鳴られ僕は我に帰る。


「す、すみませんでした!すぐに帰ります!」


 僕は何か忘れているような気がしたが、急いで家に帰ることにした。




「…やっと帰りましたか。皆さん出てきていいですよ」


 遊戯姫、大吉、森羅万象、ウマシカが体育館の舞台の袖から現れた。


「まったく何を遊んでいるんですか?今日は下見に来ただけと言ったでしょ。学園の生徒との接触は御法度ですよ」


 狐顔の教師が言った。


「ガハハハッそんな堅いこと言うな、ワシは久しぶりに楽しかったぞ」


「あの者、楽市と言ったか?余はまた遊んでほしいのぉ~」


「わっちも楽市を気に入りんした、あの人間だけは殺さなくいいのでは?」


「私もそれに賛成かな。あまり見ないタイプの人間だし」


「いいえ例外は認めません、我々の邪魔をする者は誰であろうと消します。死んでほしくないのならせいぜい我々の前に立ちはだからないことを願うだけですね。では引き揚げましょう。下見も終わらせたことですしね」


 狐顔の教師と妖魔達は夜の闇の中へ溶けて消えた。



■□◆◇■□ ―翌日 学園にて―



 僕は掲示板に貼り出された名前と小説に絶句した。なるほど、これは確かにかなり屈辱的な(ペナルティ)だ。


 僕はあの妖魔達を愉快な妖魔達と思っていたが考えを改めないといけない。愉快犯で凶悪な妖魔達と。


 少なくとも僕は社会的に抹殺されたのだ。きっとこれからの学園生活は過酷なものになると予想される。


 だが僕は負けない。究極のスルー特殊技術(スキル)を僕は身につけて見せる。


 だって僕の学園生活はまだまだ続いていくのだから。


 僕は掲示板を見て覚悟を決めた。


―友情特殊技術(スキル)― ―スキル一覧―


〈選ばれし者〉〈加速〉〈粘土〉〈光学迷彩〉〈回復〉〈虎徹(こてつ)〉〈魔術〉

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