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友情スキルは友好度と共に!  作者: 生ハム
千里眼の継承者ノ章

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11/11

八岐大蛇と巫女の真実!

 

 すでに日が落ち夜になり月明かりだけを頼りに目的の場所へ向かう。鬱蒼と繁る森の中をかき分けながら五人が気配を消して進んでいく。すでに封印された八岐大蛇(ヤマタノオロチ)の領域に入っているからだ。


 しばらく歩いていると八岐大蛇が封印された滝に辿り着いた。そこでは大きな滝が流れており滝つぼには小さな泉ができていた。滝に向かって突き出した白い岩がある。


 もし貢ぎ物や生贄を捧げる場合あの突き出た岩場に持っていくのだと容易に想像できる。

「ここが八岐大蛇のいる場所ですか?」

「そうじゃ」


「意外と静かな場所ですね。もっと殺伐とした雰囲気なのかと思ってました」


 想像していた場所とは違っていたので僕は思わず虎兵衛さんに確認した。


「ここは元々危険地帯ではなく神聖な儀式をする場所だったんじゃ。滝に向かって出っ張った岩場があるじゃろ。昔は祭壇としても使われていたのじゃ」


 その時だった。滝の中心がゆっくりと二つに割れ巨大な蛇の頭が顔を覗かせた。僕達は虎兵衛さんに促され木陰に隠れる。全員が息を飲んだ。


 暗緑色の鱗が月明かりに照らされて輝いていた。目は縦に割れた瞳はぎょろぎょろと辺りを見まわしていた。


 想像以上の大きさに全員が身をかたくする。滝の中に洞窟があることを考えると全体ではもっと大きいのだろ。洞窟の中でとぐろを巻いている姿を想像し僕は身震いした。


 楽座兄さんの呟きが聞こえた。


「…嘘だろ。なんて桁違いの妖気なんだ。八岐大蛇の首一本だけなら勝負になると思ったんだが…認識が甘かったか」 


 千里眼の能力で八岐大蛇の妖気を見た楽座兄さんが顔を強ばらせる。もしかしたら楽座兄さんのこんな表情をみるのは初めてかもしれない。

 

 あれが八岐大蛇(ヤマタノオロチ)の首の一本と考えると元々の大きさと妖気はどれほどになるのか想像もできない。


 僕達は八岐大蛇に見つからないように静かにその場所を離れる。これ以上ここにいるのは危険と全員が判断した結果だ。


 離れてもなお森の中を巨大な何かが這う音が静寂の森に轟く。遠くで驚いた烏が鳴きながら飛び立ったのがわかる。


 僕達は里への帰路で一言もしゃべらなかった。全員の頭の中ではこれからどうしようかと思案していた。


 千里ノ里に戻ると里の入口で千里 鷹左右衛門(せんり たかざえもん)が腕を組んで待っていた。

「どうやら混沌の蛇の運命は変えられなかったようだな」

「やはり封印が解けていたのじゃ。最悪の場合は里まで八岐大蛇がおりてくるかもしれん」

「そうか…では里の運命も巫女の運命もここまでということか…ところで虎兵衛、お前に話があるが…他の者達を帰らせたらどうだ」

「…みんなすまんのう、先に妹の屋敷に帰ってもらえると助かるんじゃが…今後のことを鷹左右衛門と二人だけで話し合いたいのじゃ」

「わかりました。先に屋敷に帰ってます」


 僕がそう答えてみんなを見ると龍子姉さんと楽座兄さんと牙城さんは疲れた顔をしながら頷いた。


 屋敷への帰り道にみんなが口々にこれからどうするかを話し始めた。

「私はこれ以上は危険だと提案する。巫女に元の世界に帰還する方法を教えてもらう。前に訊いたときは解決以外に帰還する方法をあの巫女は知らないといっていたけど私達をここに留めておくための嘘かもしれない」 

「俺様も龍子に賛成だ。俺様達はこの里に深入りしすぎたかもしれない。自警団団長の猿助に言われたとおりに早々に出ていったほうがいいかもしれない。楽市はどう思う?」 

「三日月さんや里のみんなはどうするの?」

「助けてあげたいけど今の私達では力不足。助けようとして死んだら元も子もない。だから明日にでもこの里をでるべきだといっている」

「俺様と龍子はお前を心配でいっているんだ、それでいいな楽市。俺様達も死にたくはない。もちろんお前にもな牙城。後輩を死なせたら学園のみんなに顔向けできない」

 

「……わかった。でも三日月さんには僕から話すよ」

「それがいいな、巫女の姉ちゃんはお前になついてるみたいだしな」


 里の巫女、三日月の屋敷に戻る。使用人の人に訊くと三日月さんは用事があり屋敷を空けているとのことだった。


 全員がそれぞれ用意された部屋に戻っていった。部屋にはすでに布団が敷いてあった。寝間着も綺麗に畳んで置いてある。その横で目が止まる。


 手紙が置いてあった。楽市様へ と宛名が書いてある。僕は手紙を広げて読むことにした。


《楽市様へ》


 手紙という古風な方法で何を伝えるかどうかを迷ったのですが私は決心がつきました。まず里の騒動に巻き込んでしまった楽市様、姉の龍子様、兄の楽座様、牙城様に謝罪しなければなりません。私は嘘をついてしまいました。私はそのことを直接会って話したいので今日はここまでにします。明日には巫女の仕事も終わり屋敷に戻れそうなのでその時にお話したいと思います。里の為に奔走する皆様には重ね重ね御迷惑をおかけして申し訳なく思います。


 《三日月より》


 追伸 


 全てが解決したら私の秘密をお話するという約束でしたね。それも楽市様にお伝えしたいと思います。


 

 手紙を読み終わった僕はすぐに寝間着に着替えると布団に入り込んだ。目が冴えて眠れないので僕は千里ノ里で起きたことを振り返ることにした。


 

 まずは千里ノ里だ。この世界に飛ばされた時はどうなるかと思ったけど巫女の三日月さんや虎兵衛さんはいい人だし、多分鷹左右衛門さんや猿助さんも根はいい人だと僕は思う。


 あとは八咫烏(やたがらす)の遺跡か。そういえば山の主の件で詳しく遺跡を見れなかったけど明日三日月さんに訊いてみるか。


 三日月さんといえば生贄のこともどうするんだろう。山の主を討伐したから話は一時的に保留になるかもしれないけど、八岐大蛇が動き出していることを考えるとまた生贄の話が再燃するかもしれない。


 とりあえず難しいことは明日の自分に任せればいい。僕は突然訪れた眠気に身を任せた。


****** ―思い出の夏祭り―   

 

 いろんな屋台が軒を連ねているなか僕は一人で歩いていた。視点はいつもより低い位置にある。これは僕が子供の頃だ。


そうだ、あれは夏祭りの日だった。僕が兄さんと姉さんとはぐれて迷子になって大騒ぎになった日だ。


 でも僕はその日のことをよく覚えていなかった。当時の僕は4歳だった。物心があるかないか微妙な時期だ。無理もない。


 僕は姉さんに手を引かれて歩いていた。でも突然掴んでいた手を離される。姉さんが自分から手を離したのだ。


 人混みに飲まれて途方にくれている僕に話しかける女の子がいた。僕よりも年上で背も僕の頭二つ分くらい高い。頬には三日月の形をした傷跡があった。


『君は迷子かな?一緒にお父さんとお母さんを探しましょうか』

『それ…月みたい』

『これは傷跡なんです。昔色々ありまして…わからないか。三日月という月の形をしているんです。三日月は私の名前でもあるんですよ』 

『三日月…さん?』


 三日月さんと手をつないで歩いていると人混み離れて森の中に向かっていく。


『三日月さん?こっちにお姉ちゃんがいるの?』


 三日月さんは僕の言葉を無視して無言で歩き続ける。そうしていると森が開けた場所に辿り着く。


 そこには石が積まれてできた祠がある。三日月さんが祠を指さす。


『この祠に手をかざしてください』

『ここに?』

『そうです』

『お姉ちゃんは?』


『ここに手をかざしたあとにもう一度探しましょう』


 三日月さんは僕の腕を握り祠に手をかざそうとした。しかし手が祠に近づくと電気が迸るような衝撃が走り弾かれた。


『やっぱり駄目でしたか。八咫烏の加護が強すぎますね。しばらくは千里ノ世界には連れて行けないですか…残念です』

『三日月さん?』


 三日月さんが僕の顔を見つめている。


『……そうですね。少し道草してしまいました。ではお兄さんとお姉さんを改めて一緒に探しましょうか。楽市君』


 名前を知らないはずの三日月さんが僕の名前を呼ぶ。


『もしかしたら家まで送り届ける必要があるかもしれませんね。()()()()()()()()()()()()()?』


******


 僕はあまりの衝撃に布団から飛び起きた。


「僕は夏祭りの日に三日月さんと会っていた?」


 なんで僕はこんな重要なことを忘れていたんだ。夢の可能性もあるけど…三日月さんに確認する必要がある。


 襖を開けて部屋から出るとすでに朝日が差していた。まずはみんなにこのことを伝えて、夏祭りの日に何が起こったのかを詳しく訊こう。考えるのはその後でもいいはずだ。


 姉さんのいる部屋の前までくると、僕は姉さんを呼んだ。しかし返事がない。


「姉さん?…龍子姉さん部屋に入るよ?」


 部屋はもぬけの殻だった。布団が畳まれ端の方に寄せてある。僕は急いで楽座兄さんと牙城さんのいるはずの部屋に向かった。


 二人の部屋も龍子姉さんのいた部屋と同じ光景だった。


「みんなはどこに行ったんだろ?」


 廊下を歩いてくる和服を着た女性の使用人を発見したので僕は声をかけ消えたみんなの所在を尋ねた。


「皆様は楽市様が就寝中のため先に外出されました。楽座様と龍子様は八岐大蛇の様子を見に行くと。牙城様は鷹左右衛門様と山に猪狩りに向かいました」


「僕に何も言わずにですか?」

「はい。疲れて起こすのも悪いとおっしゃっておりました」


 確かにみんなが言いそうなことではあるが、僕に何も言わずに外出するだろうか。使用人の顔を覗きみる。能面のような顔で表情がなく嘘をついているかもわからない。

 

 ここにきてから使用人や里の人達の顔をちゃんと見ていたわけではないが皆同じ顔だったような気がする。


「僕はみんなを探しに行きます。三日月さんが帰ってきたらみんなを探しに行ったと伝えてください」


 屋敷の外に出ようとすると使用人に呼び止められる。


「楽市様、差し出がましいことは承知でいいますが今日中には三日月様もお戻りになられると思うので今日はお部屋でお休みになられてはいかがですか」


 言葉の端々にどこか必死さが伝わってきた。理由は不明だが僕に屋敷を出てもらっては困るらしい。


 元々三日月さんには色々と訊きたいことがあったのだ。行き違いの可能性もあるなら部屋で待つのもいいかもしれない。


「わかりました。僕は部屋で待ちます。姉さん達が帰ってきたら教えてください」


「承知しました」


 使用人が恭しく頭を下げると廊下を歩いていく。僕は部屋に戻って敷いてあった布団に潜り久し振りに二度寝をした。


 

 起きた時はすでに夕方になっていた。夕焼けが障子越しにわかった。屋敷からは何故か人の気配が消えていた。


 僕は布団から起き上がると屋敷の縁側にある障子を開ける。あの夕焼けには見覚えがある。三日月さんと縁側で会った時のことを思い出した。


「おそようございます、楽市様。二度寝とは楽市様も悪い人ですね。起きるまで私、待っていましたよ」


 縁側を三日月さんが歩いてくる。いつもの12(ひとえ)ではなく巫女装束を纏っていた。

「三日月さん…お、おそようございます。その恰好は…」


「この恰好が気になりますか。これが本来の私の仕事服なんです。綺麗ですか?12単の方も綺麗なんですが少し重くて動きづらくて…やっぱりいつもの恰好が一番ですね。なんだかしっくりきます」


「とても似合ってますよ」


 三日月さんは嬉しそうに微笑んでいた。だが僕の内心はどこか得体のしれない不安で埋め尽くされていた。


「御世辞でも嬉しいです。()()()()()()()そう言ってくれると思うと私は天にも昇る気持ちでいっぱいです」


 理由はわからないが僕はすぐにここから逃げなくてはいけない焦燥感に駆られていた。


「あの…それで…他のみんなはどこに…」


 僕は意を決して三日月さんに訊いてみた。


「それも含めて楽市様にお知らせをしなくてはならないことがあります。以前に全てが解決したら私の秘密をお話しますといいましたが、今話したいと思います。私の話を聞いてくれますか?」


「はい…聞きたいです」

「ところで楽市様は今特殊技術(スキル)は使えますか?」

「いいえ、使えません。龍子姉さんや楽座兄さん、牙城さんも(マイナス)が消えたんですけど…おかしいな」


 もしかしたら他に原因があるのかもしれない。


「…やっぱりそうですか。では順を追って話します。ついてきてください。途中に見せたいものもありますから」


 三日月さんの案内され縁側を歩いていき母屋から離れに向かった。そこには木製の格子でできた牢屋があった。牢屋の中には壁に鞭が掛けられているだけで他は何も置いていなかった。


 これは座敷牢というものだと僕は以前に何かのテレビで見たことがあった。


「遠い昔に私はここにずっと閉じ込められていたんです。頬に三日月形の傷跡ができてからずっとです。子供の頃の思い出はここでの記憶でいっぱいです」


「なんで閉じ込められていたんですか?」

「どうやら大人達はこの傷跡が凶兆の証だということで私を座敷牢に入れたようです」


 三日月さんは自分の頬にある三日月形の傷跡を撫でた。


「酷いですね…人間がやることではないと思います」


 僕は正直に思ったことを言った。三日月さんは相変わらず微笑んでいたが目は光を失っていた。


「楽市様は優しいですね。それで私は外に出たいと必死に願ったんです。そして私は()()()に目覚めたんです。それが〈千里眼(せんりがん)〉でした…ここで立ち話もなんですし続きは私の部屋で話しましょう」


 三日月さんは歩き始め踵を返し母屋に戻る。母屋の奥まった場所にある部屋が三日月さんの部屋らしい。


 三日月さんの部屋に入る。部屋には必要最低限の家具しか置いておらず殺風景だった。三日月さんは静かに障子を閉めると座布団を二人分を置いた。僕と三日月さんは真正面に向き合うように座った。


「千里眼の能力を手に入れた私ですが、そんなものは座敷牢を脱出するのになんの役にもたちませんでした。座敷牢で暇を持て余した私は千里眼でどのようなことができるか実験することにしました。最初は遠くの景色を観賞したり、動物と視野を共有したり、人の気の流れを見たりしました。そして実験を繰り返す中で私は思ったのです。未来を見ることも可能なのではないかと。そして試行錯誤の末に未来を見る力を手に入れたのです」


「もしかして…それが三日月さんの予言の力ですか」


「その通りです。ですが未来というのは不確実性に満ちています。つまり幾通りもの未来が枝分かれした分水嶺のようなものなので、些細な行動が未来を変えることもあります。私はそれを俯瞰して見られるだけなのです」 


 三日月さんは僕を見つめてまた微笑んだ。それを見て僕は何故か背筋が凍る思いがした。


「私は〈千里眼〉を使い千年先の未来まで見ました。そして私は運命の人を見つけたのです。聡い楽市様にはもうおわかりかと思いますがあえて言います。運命の人とは楽市様…貴方です。…私は遂に告白することができました。千年間…準備して待った甲斐があったというものです」


「えっ?」


「私は楽市様の存在を知り生きる希望を見いだすことができたのです。私は千里ノ里(せんりのさと)の人々にこの〈千里眼〉のことを話しました。里の人々は私を巫女だと祭り上げました。ですがそれも長くは続きませんでした。封印されていた大蛇が復活したからです」


 三日月さんは一呼吸置くとまた語り始める。

「お兄様も里の皆も掌を返すように私を生贄にしようとしました。その時は派閥もできずにすぐに私の生贄が決まりました。私は事前に生贄になることを察知して里から逃げ出しました。そして大蛇の元に向かったのです」


「大蛇の所に、なんで?」


「私はある未来を見たからです。それは楽市様に出会う機会を得られるという未来でした。しかしそれは残酷なことを実行しなくてはならない修羅の道でもあったのです。ですが私を生贄にしようとした里の人間達を間近で見て私の考え方も変わりました。迷いは吹っ切れたのです」


 僕は息を呑んだ。三日月さんの表情がどこか冷たいものに変わる。


「私は大蛇と契約して千里ノ里の人々を生贄に捧げました。里は一夜にして壊滅しました。そして私は大蛇の保有する莫大な妖気を利用して過去、現在、未来の時空の特異点に観測所として千里ノ世界(せんりのせかい)を作ったのです」


「それが…この世界ですか。でもおかしくありませんか。三日月さんのお兄さんや鷹左右衛門さん、猿助さんに他の千里ノ里の人達は皆生きてましたよ」


 ここに来た当初は驚いたが里の皆は普通に暮らしていたし生きていた。


()()()は全部私が八岐大蛇の妖気で作った人形達。元々の千里ノ里の住人や歴代の〈千里眼〉継承者達をモデルに造形しました。その過程で私の劣化版になりますが、〈千里眼〉の移植にも成功しました。私は観測所から千里の系譜に連なる者に〈千里眼〉を移植していきました」


 ということはそもそも生贄の話自体が無かったことになる。それなら三日月さんはどうして僕達に助けを求めたんだ。それと千里の系譜に連なる者に〈千里眼〉の移植?まさか…


「…僕が〈千里眼〉を継承しなかったのは…」

「私が〈千里眼〉をあえて譲渡しなかったからです。所詮は私の劣化版の能力ですから」


「じゃあ今僕が持っている特殊技術(スキル)も三日月さんが?」


 三日月さんは首をかしげると困った顔をする。


「楽市様はご自身の〈八咫烏(やたがらす)〉の加護をご存知ないのですか?」


 僕は首を横に振る。


「八咫烏は千里の一族が分裂するきっかけになった幻獣です。元々八咫烏の遺跡も外の世界にあったもので、私が千年前に千里ノ世界を作る時にここに移しました。不思議なことに同じ名前を持つ町が遺跡があった場所に自然とできていました。八咫烏が今でもあの土地にいたということでしょう」


 千里家や僕の町が八咫烏と関わりがある。町の名前からして何かしらゆかりはあるとは思っていたけど、そんなこと初めて聞いた。 


「〈八咫烏〉の能力は人間を導く力。つまり魂で結びついた人間に力を与え同時にそれが相手にも相互作用するのです。楽市様の身近にいませんでしたか?異常に強くなったり、能力が覚醒した者がいたと思うのですが」


 確かに僕には心当たりがあった。学園にいるSクラスのクラスメート達だ。あと家族でいえば楽座兄さんや龍子姉さんだっている。ありえるのか。そんな話が信じられるわけがない。

 だって僕が強くなったのは皆のおかげであって自分の力じゃない。特殊技術(スキル)を勝手に拝借して使っていただけだ。


「友好度の数値化は楽市様がわかりやすいように後から私が加えたものですが〈八咫烏〉の加護は楽市様が元々持っていたものです。だから御自分をあまり卑下しないで下さい。貴方の体にはその八咫烏が魂と結びつき宿っているのです」


 僕は胸に手を置く。しかし何も感じなかった。


「なんでそんなことが三日月さんにわかるんですか。僕のことを何も知らないじゃないか」


 触れられたくない傷に無神経に触れられた気がして僕は語気を強めにして言った。言い過ぎたと思ったが、次の三日月さんの言葉の衝撃で僕は言おうとした言葉が全部吹き飛んでしまった。


「私にはわかりますよ。だって楽市様のお母様、お兄様やお姉様の〈千里眼〉を通して生まれた時から見ていたんですから」


 三日月さんはさっきから何を言っているのか僕は理解できなくなってきていた。


「時々見られていることに気配で気付いて楽市様からお兄様とお姉様が離れたこともありましたね」


 そういえば千里ノ里に来る前に楽座兄さんと龍子姉さんが僕を見る度にイライラすると言っていたけど、それは三日月さんが兄さんや姉さんの〈千里眼〉を通して僕を覗いていたからなのか。


「でもこれからはここで皆ずっと一緒です。楽市様もここでずっとずぅーとずぅーーと永遠にこの楽園で暮らしていくんです。時が来たら外の世界の人類を滅ぼして二人だけのユートピアを作りましょう」


 赤黒い波紋が視界に広がり空間が歪んでいく。いつか聞いた不協和音が耳鳴りのようになっていた。





 千里 三日月(せんり みかづき) (マイナス)9999 



「なっ!?」

 

「私は初代千里眼の継承者 千里 三日月(せんり みかづき)です。貴方は永遠に私のモノです。だから一緒に幸せを築いて行きましょう」

 

 三日月は右の頬にある傷跡を人差し指の指先でなぞり始めた。そして驚愕を浮かべる楽市に花開くように笑いかけるのだった。


******


八咫烏(やたがらす)〉の特殊技術(スキル)

〈友情〉特殊技術(スキル)の正式名称。周囲の者達を導く力がある。



―千里ノ世界の登場人物―友好度メーター


千里 三日月(せんり みかづき)― 友好度(マイナス)9999 ―

 千里ノ世界の巫女にして初代千里眼の継承者。八岐大蛇と契約して千里ノ世界を作りあげた。〈千里眼〉の力を持つ。千里ノ世界にいる間は過去 現在 未来を広範囲まで見ることができる。


千里 虎兵衛(せんり とらべえ)― 友好度(マイナス)260 ―

 八岐大蛇の妖気で作られた三日月の配下。〈千里眼〉で10秒先の未来が見れる。


千里 鷹左右衛門(せんり たかざえもん)― 友好度(マイナス)110 ―

 八岐大蛇の妖気で作られた三日月の配下。〈千里眼〉で目を合わせた動物を使役できる。


千里 猿助(せんり さるすけ)― 友好度(マイナス)10 ―

 八岐大蛇の妖気で作られた三日月の配下。〈千里眼〉で相手の思考を読める。


八岐大蛇(ヤマタノオロチ)―危険度10以上―

 八つの蛇の頭を持つ神話の怪物。三日月と契約して完全体に復活するため時空の特異点に千里ノ世界を作りあげた。


剣歯虎(サーベルタイガー)―危険度5―

八咫烏の遺跡の守護獣。三日月のペット。

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