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友情スキルは友好度と共に!  作者: 生ハム
序章

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1/11

友情スキルは友好度と共に!

 

 僕の名前は楽市(らくいち)、平凡な高校2年の16歳の少年だ。いや今の状況を考えると平凡から遠退きつつあるのかもしれない。

僕は家にいる。これの何が問題なのかといえば今日が平日で僕は学生だからだ。


そう、僕は不登校なのだ。しかも新学期が始まってから二週間近くである。


現在自分が置かれた状況を再確認した僕は、殺風景な自分の部屋に視線を走らせる。すると勉強机の上に無造作に置かれた骸峠学園(むくろとうげがくえん)の制服に留まる。

「何故こんなことになったのか」


 独り言を呟くと、僕は改めて今までの人生を軽く振り返ることにした。


 この世界にはスキルというものがある。人類の誰もが持っている力である。しかし僕にはその力が発現しなかった。僕が生まれた当初、両親も能力診断士にそう言われて驚いたそうだ。

「過去に類似する事例がないわけではありません。この子の発現が遅れている可能性もあります。今は様子を見ましょう」


 それから16年、僕は能力が発現することは無かった。


物心ついたころ、最初は僕もそこまで問題に

はしていなかった。「別に能力を使わなくても生きていける」と両親が言っていたからだ。能力診断士も「努力次第で解決できないこともないかもしれない」と言っていたらしい。


 だけどその言葉はただの慰めでしかないと知った。


 小学校、中学校、と進むうちに周囲との差を痛感するのだ。皆は普通のようにできることを自分はできない。これが努力で何とかできるものなら、希望は持てたかもしれない。しかし最近になって〈発現の見込み無し〉、と能力診断協会から通知が届き絶望した。


 そして不登校という状態になってしまった。でもいつかは行かなくてはいけない。


 僕は時計を見る。

(…今日は無理そうだな。よし明日行こう…いや待て、これではまた昨日の繰り返しではないか)

 僕は制服に袖を通す。

(…いやいや待て!そういえば必要な文房具を勝手なかったような気がする…やっぱりやめるか?)

 僕は制服を脱ぎ捨てた。

(…いやいやいや違うだろ。無いなら買いに行けばいいじゃないか。馬鹿だな僕は)

今買いに行けば昼の授業には間に合う。外にでかければ気分転換にもなっていいだろう。僕は文房具を買いに街に出かけた。


 ★▼▽△▼★

 

 別に学校が嫌いなわけじゃない。確かに僕は人付き合いは苦手だし、授業でスキルの話がでるとげんなりすることもある。でも少なくともクラスメートと一緒にいるときは――ほんの少しだが――楽しかった。

 これは本当に不思議なことだが――特に友達はいないが――クラスメートは僕に偏見も持たずに分け隔てなく接してくれたし、差別されることもなく、―たまにイジられたりするが―いじめに遭うこともなかった。スキルがないことで生じる大きな問題も特になかった。

 

 でもあるとき僕はこう思ったのだ。

皆の足を引っ張っているのではないか?

お荷物になってはいないか?

切磋琢磨の筈が、おんぶにだっこになってないか? 


 要するに不登校という状態になっているのは、僕が勝手に抱いた罪悪感が原因だと言うことだ。きっとクラスメートはこのことを知ったら呆れかえるだろう。


僕は買った文房具を確認すると店を出る。

(たまには外に出るのもいいもんだな)

 空気がおいしいなとしみじみ感じながら歩いていると、背後から声をかけられた。


「おい、楽市じゃないか?」


この声は聞き覚えがあった。

「あ、狩屋さん…」


振り返ると、うちのSクラスのクラスメートにして、剣道部の副主将の狩屋 刀魔(かりや とうま)が制服姿で駆け寄ってくる。

だがおかしい。授業はとっくに始まっているはず。何故ここにいる。


「久しぶりじゃないか、1年振りか?」

「始業式の時に会ったから2週間振りじゃないですか?」


「ハハハ冗談だよ。もしかしたら落ち込んでるんじゃないかと思ってな。突然学園に来なくなったから、なんかあったんじゃないかって、クラスでちょっとした騒ぎになってな。元気そうで良かったよ」

狩屋さんはそういうと親指を立てて笑っていた。


「そうですか…クラスメートの皆さんには心配をおかけしてすいませんでした。明日からはちゃんと行こうと思っているので…よろしくお願いします」

 散々人に迷惑をかけておいて何が、よろしくお願いします、なのか?自分で言っていて呆れてしまう。

 

 狩屋さんはこの謝罪をどう受け取ったのか何度も頷いている。

「うむ、そうだぞ。クラスメートは皆心配していた。生徒会長や水月(すいげつ)も心配していたぞ」


「水月も…ですか?」

 生徒会長は分からなくもないが水月が心配か。想像もつかないな。


「我も意外に思ったのだが、同じクラスの仲間が欠ければ当然の反応ともいえるな。まぁとにかく戻ってこい。皆は楽市のことを悪く思ってるわけじゃないからな」


 悪く思ってるわけじゃない、本当にそうだろうか。そうじゃなくても煙たがってはいるのではないか。…いや違う。この期に及んでまだクラスメートに責任を押しつけようとする自分に嫌悪感がわいてくる。


 こんな考えは僕の被害妄想だ。本当に自分のことが嫌いになってくる。


―狩屋 刀魔の友好度が10ポイントアップしました―


「え?」

「ん?どうした楽市」

「いや…何でも無い」


 何だ、今の脳内に響いた声は?


…まぁいいか。疲れていて幻聴が聞こえたんだ。僕はそう納得することにした。


 ★△▼▽▲★ 

 

 狩屋さんと別れたあと適当に街を散策することにした。

「そういえば僕が言えたことじゃないけど、どうして狩屋さんは学園に行ってないんだ?臨時休校?」


 狩屋さんは剣道部の副主将。スキルもかなり強力なもので引く手数多だろ。特に生徒会とか警邏するのに欲しがりそう。

(狩屋さんがスキルを発動させて、甲冑と刀を具現化させた時は驚いたな)


 

 特に何も考えずに歩いていると、路地裏から金属同士が擦れるような不協和音が響いてきた。耳を澄まして聞くと、先程まで一緒にいた人物の声が微かだが聞こえてきた。


 僕は急いで路地裏に入って行く。何故かは分からない。ただ行かないと後悔すると思ったからだ。

 

 路地裏は意外に入り組んでいて、金属音を頼りに音の発生源に向かう。目的地に着くとそこには予想通りの人物がいた。

 

 刀で武装した狩屋さんだ。そして相対している相手は異形の者だった。


 異形は丸みを帯びた黒い球体の塊から、頭部から羊のような角が生えており、腕と足が靄から突き出している。双眸は赤く爛々と輝いており顔には悲壮を貼り付けていた。


「う~ん食事の邪魔をしないでほしいんだけどな。うわ~また人間が来た」


「楽市、来るな!こいつは妖魔だ!!」


 狩屋は腹の底から叫ぶ。それを聞いた妖魔は眉間にしわを寄せる。

「ボクチンをそこら辺の妖魔と一緒にしてほしくないな。ボクチンは新世代の悪魔ドジィーだよ」


「悪魔…だと!?」

「悪魔!」

 

 聞いたことがある。確か欧州の方で存在が確認されている。でもどうしてそんな奴が日本にいるんだ。


「そうボクチンは悪魔なんだ。だから無駄なことはやめてくれないかな。なまくら刀でボクチンは斬れないんだよ。それより人間の家族が逃げちゃったでしょ。どう責任取ってくれるの?訴訟モノだよこれは。人間の父親と人間の母親と人間の兄妹が揃ってるのは今時珍しいんだよ。レアなんだ。新世代悪魔のボクチンは温厚で寛容だけど、我慢の限界というものがあるよ。ねぇ、知ってた?悪魔にも堪忍袋はあるんだよ。それにね、ボクチンはマナーをちゃんと守るんだよ。普通の悪魔だったら死なないように苦しませて先端からバリバリ噛み砕いて食べるところを、サクッと殺してあげるんだ。だって可哀想でしょ。ボクチンは悪魔だけど優しさというものはあるんだよ。慈悲というやつだね。ねぇ、知ってた?悪魔にも善意はあるんだよ。人間はいつも悪魔を邪悪に語りたがるんだ。でも分からなくもないかなぁ~て、ボクチン思うんだよね。わかりやすい悪役がいた方が邪悪を語り安いからね。だからボクチンはそんな偏見にも目を瞑るんだ。だってボクチンは温厚で寛容な悪魔だから。自分から悪役になってザクザク殺して、人間にも献身的なボクチンは偉いね。…おっといけない自画自賛になってしまった。慎みは大事だよね。ねぇ、知ってた?悪魔はお喋りが好きなんだよ」


 目の前の悪魔ドジィーは饒舌に邪悪を語っていく。


「隙あり!!うおおおぉぉぉぉ!!」

「!?」 

 狩屋はドジィーに斬り込む。

 

 狩屋が話が終わるまでおとなしく聞いていたのは、情報を得る為か、それとも援軍が来るのを待っていたのか。楽市はどれも違うと思った。

(狩屋さんは正々堂々と戦いたいだけだ。でもそれが通じるのは同じ信念を持っている者だけ)

 

 その考えが狡猾な悪魔に通じるとは思えない。もちろん狩屋が負けるとは楽市は思っていない。ただ一抹の不安がある。


 だが杞憂に終わることはなかった。

刀が無防備に仁王立ちしているドジィーの眉間に振り下ろされる。だがそれは硬質な音を立て弾かれた。

「ボクチンもさすがに驚いたよ。隙ありとか言って大声を出して斬りかかって来るのは冗談でやってるの?」


「ぐはぁ!」

 ドジィーの拳が狩屋の腹部にめり込むように入る。そのまま吹き飛ばされ後方にある建物に衝突する。

「ねぇ、知ってた?悪魔はね、強いんだよ」


 楽市は壁にもたれかかる狩屋に駆け寄る。狩屋の口の端から血が垂れている。

 楽市が近づくと狩屋が気づき口を開く。意識はあるようだ。


「ははは…我もやきがまわったな。楽市…逃げるんだ。そして水月を呼んでこい。あいつは生徒会に呼ばれてこの辺を国の命令で警邏しているはずだ」

「狩屋さんは?」


「我は…ここで足止めする」

「見捨てろと?」

狩屋は微笑を浮かべる。


―狩屋 刀魔の友好度20ポイントアップしました―

友好度上昇によりスキルが開放されました。

虎徹(こてつ)


「そうは言っていない。我は負けるつもりはない」


(見捨てろと言ってるようなもんじゃないか。あれ?シリアスな場面なのに場違いな音声が流れてなかった?友好度?とあと確か…)


「虎徹?」

「う!?…何故我の刀の名前を知っている!学園によって秘匿されているはず!」

 狩屋は目を見開き驚愕の表情を浮かべる。


「あの…なんかスキルらしくて」

「何!使えるようになったのか!」

「いや使えるようになったかいまいちよくわからないです」


「あの~お別れはもういいよね。ボクチンは感動的で良かったと思うよ。感動的過ぎて涙がちょちょぎれる…なんてことはないからね。これでも悪魔だからボクチンは。でも、もしかしたら、万が一にも、君達人間がボクチンに惨たらしく殺されたら、感動で胸が震えるかもしれない。そんな悲劇的な結末が見たいんだよ。そしてそれを見た君達を愛する人間達の曇った表情を見て愉悦に浸るのさ。想像しただけで甘美だね。悪魔は殺すのが大好きなんだよ。でも安心してボクチンは優しいからなるべく苦しまないように殺してあげるから」

 

 背筋に冷たいものが走る。この悪魔は冗談ではなく本気で言っているのだ。


「バイバイ、さようなら」


 悪魔ドジィーは腕を振り上げる。よく見ると爪が鋭く輝いている。あの鋭利な爪と人外じみた腕力を使って切り裂かれたら、僕達はバラバラの肉片になることだろう。


 ドジィーは腕を振り下ろす。そして哀れな肉塊になる―突如現出した刀がそれを防ぐ。硬質な金属音が響き渡り火花が散る。いつの間にか楽市の手には刀が握られていた。


「「え?」」


 その場所にいる誰も理解できなかった。刀を具現化させた本人でさえも。


 悪魔ドジィーが突然現れた刀に警戒し後退る。

「虎徹…ではないな。我の刀とは少し違うようだ」

「なんだいその刀は?ボクチンの爪を弾くなんて…聖なる力でも宿っているのかい?」


 ドジィーは攻撃を防がれて不快だったのか、眉間に皺を寄せた。

「まぁ、いいけどね。どうせまぐれで防いだだけでしょ?変則的な攻撃には対応できない」


(悔しいがあの悪魔の言うとおりだ。僕が防げたのは偶然、刀が現れた場所が爪が通過する軌道上にあったからだ。刀の訓練もしてないし、何故か狩屋さんのような甲冑も着用していない。次の攻撃を防げる自信がない)


「じゃあ今度こそさようなら。楽しかったよ」

 悪魔ドジィーは腕を横に振りかぶる。今度は横に薙ぐつもりだ。避けられない。たとえ防げたとしても手負いの狩屋に確実に当てにくるだろう。

(どうすればいい。もう…駄目なのか?)







「楽市をいじめるのはその辺にしてもらえないかな。見ててとても不快だよ」


 緑の短髪に中性的で整った顔立ちの人物が路地裏の暗がりから歩いてくる。服装は骸峠学園の学生服である。


「水月…来てくれたか」

「勘違いしてほしくないから言うけど、僕は楽市を助けに来たのであって、むさい剣道馬鹿を助けに来たわけじゃないんだ、誤解なきようにね」

「そうか…」


水月 鏡弥(すいげつ きょうや)は骸峠学園始まって以来の秀才であり、スキルも強力という文武両道である。

 彼女はSクラスでつまり僕のクラスメートである。言動や名前からよく男と間違われるが女性である。


「楽市、二週間も不登校なのはどういう気分だい?」

 開口一番に返答に困る質問をされる。水月は上げて落とすを平気でやる人物であることは、知り合いであれば誰もが知っている事実である。


「ゴメンゴメンあまりにも君が焦らすもんだから意地悪したくなってね。僕に会いたくて学園に戻ってきてくれるんだろ」


「え?まぁ…そうでもある」


 学園のクラスメートに会いたくて行くというのは間違ってはいない気がする。


「あぁ感無量だ。とても幸せだよ」

「あ…ありがとう」


 自分で言って何が「ありがとう」なのか?超然的な水月の謎の圧で何故かお礼を言ってしまう。


「さてと、楽市と話せたし今日は記念すべき日だ。さっさと仕事を終わらせて、一緒にお茶でもしようじゃないか」


 水月は悪魔ドジィーと相対する。


「お、お前はボクチンに勝てると思ってるのか?」

「勝てるよ」


 水月は断言する。


「そんな事が人間に…」

「100パーセントの確率で僕が勝つ。圧勝だよ」


 水月は断言する。


「そんなはずが…」


「もう察してるんだろ。僕には勝てないって」

 悪魔ドジィーはぐうの音も出ない。事実だからだろ。


「さっき君は楽市を殺すと言った。愛する人間が曇る姿が甘美だとも。考えただけでも恐ろしい、僕には凄く効果がある精神攻撃である事は間違いないだろうね。もしそんな事が起こったら…いやそんな事させないが仮に起こってしまったら僕は世界を滅ぼすだろう。彼がいない世界に何の価値も無いから。分かるかい、僕にこんな不快なことを考えさせた悪魔は万死に値する。知ってるかい?僕にも堪忍袋はあるんだよ。ドジィーだっけ?君に本当に善意というものがあるなら、この世界から消えてくれないか。無理なら滅ぼして魔界に還してあげるよ」


 水月が殺気と怒気を含んだオーラを悪魔に放つ。それを浴びた悪魔は気圧される。先程の余裕はひとかけらも無い。


「あ、相棒がいれば…お前…なんて」


「負け惜しみかい?仮にその相棒とやらが、いても勝てるとは思えないけどね。さぁさっさと消え去るといい!」


 悪魔ドジィーの足元に魔方陣が展開される。

「神聖なる力!何故、純粋な人間のお前が使える!」

「驚いたかい?西洋の魔法だよ。ちょっとかじった程度だけどね」


「魔法でこんなことが出来るわけがない!天使でもないお前が神聖なる力を使うなど不可能だ!」


「信じるも信じないも事実なんだ。魔方陣を何回か組み替えて神聖なる力を再現したんだ。でも解釈によっては偽物になっちゃうのかな。神学とか宗教とか色々面倒そうだから、あまり使わないんだけどね」


 悪魔ドジィーは恐怖する。目の前の人間が踏み込んでいるのは、絶対に触れることも見ることも許されない、神聖なる神の領域の世界。万物の根源に触れようなど、神が定めた禁忌に抵触する行為だ。


「お前は…怖くないのか?」

「怖いよ。凄く怖い。でも大切な人を想うと不思議と耐えられるのさ」


 この人間は狂っている。悪魔ドジィーはそう結論づける。


「そろそろ終わりだ。もう二度と会わないことを願うよ」


「!?」 


 魔方陣を中心に光の柱が立つ。神聖な力が悪魔ドジィーの肉体を焼く。肉片すらも残さず少しずつ確実に消滅させていく。そして最後の肉片が燃え尽きる。この世界からあの悪魔は完全に消えたのだった。


「ふぅ~終わった。さぁ楽市、お茶でも飲みに行かないかい。デートと洒落込もうじゃないか。こんな辛気くさい路地裏からさっさとでよう」



 楽市はハッ、と我に返る。

(え?何が起きた?この短時間で知った情報量が多すぎて、というか衝撃的過ぎて理解が追いつかないんだけど…とりあえず路地裏から出るか)


「分かった」


「…待って…くれ。二人とも…我を忘れてないか?」


 声の方を向くとボロボロの狩屋さんが壁にもたれかかっていた。

「すいません、忘れてました」

「我の扱い酷くないか」


 僕は狩屋さんに肩を貸す。そのまま路地裏を抜けて街道沿いの通りにでる。


 水月は唇を尖らせていた。

「刀魔、ちゃんと楽市を守りなよ。今回は特別に守ってあげたけど今度はないからね。あくまで君は楽市のオマケなんだから」

「我の扱い酷くないか」


「刀魔、冗談だよ。ちゃんと理由がある。もしあそこに君を放置して、僕と楽市が逃避行したら、僕は楽市に嫌われてしまう。僕は楽市に薄情者だと思われたくなかったんだ」


「理解したくはないが理解した。ところで水月に聞きたいことがあるんだがいいか」

「うん、刀魔は何を聞きたいの?」


「水月は…我らがピンチになるまで待っていただろ」

 

 狩屋は水月を睨む。


「…ほら、あれだよ、ヒロインがピンチの時に颯爽と現れる、白馬の王子様みたいなことをやりたかったんだよ。楽市の好感度が上がるかなーと思って」


 その楽市が目の前にいるんですけどとは言わない。


「水月がもう少し早く参戦してくれてたら、我はここまで傷を負うことはなかった」


「おっと、それ以上言わない方がいい。刀魔は自分の未熟を他人のせいにするのかい?それは君の信念に反するじゃないか?」


「むう!?確かに、そう…だな」


 狩屋さんは何か言いたそうであったが、飲み込んだようだ。


「明日から楽しくなりそうだ。そうだ楽市、遅れたけど特殊技術(スキル)発現おめでとう」


特殊技術(スキル)はこの世界のほぼ全ての人間が発現してるから、手放しに喜べないんだけどね。つまり僕はやっとスタートラインに立てたということだ。だけど今は喜んでおくか)


「ありがとう」

「家に帰ったらスキルを試してみるといい」

「スキルについて二人にちょっと相談したいんだけど…」


 僕は自分のスキルについて説明した。


「…つまり友好度を上げたことで刀が現出したということだ」

「我の刀とは少し違った形のようだったが?」

「単に友好度が足りなかっただけではないかな。能力を遜色なしに複製して、さらにその能力を昇華する。そんな能力は僕は聞いた事がない。楽市は刀を上手く扱えなかった。つまり訓練で得た技術や経験までは複製できない。これがこのスキルの弱点なんじゃないかな。もちろん友好度という未知数な部分もあるけどね」


 水月は「大体こんな感じかな」と締めくくった。「僕はなるほど」と納得する。


 スキル経験者は着眼点が違うなと思う。


「では我らは今日は解散という事でいいな。我は少し病院によろう。身体中が痛い」

「お大事に」

「ああ、また明日」


「楽市も明日学園で…ここまで期待させてまた不登校は無しだからね」


「うん、明日は絶対に行くから」


 こうして今日は解散になり僕の平和と不登校の日々が終わりを告げるのだった。


★□■◇◆□■★ 


【友情】特殊技術(スキル)

 このスキルの保有者は他のスキル保有者と友好度メーターの数値を上昇させることでその人物の保有するスキルを使用できる。スキルの正式名称は不明のため友情スキルと呼称される。


―登場人物紹介― 友好度メーター


水月 鏡弥(すいげつ きょうや)―友好度― 現在は測定不能 ―

 学園の秀才で楽市の幼馴染み。優秀な人材を輩出する名門水月家の娘。家の方針で男として育てられた。中性的で端正な顔をしている。


狩屋 刀魔(かりや とうま)―友好度30―

 学園の生徒で剣道部の副主将。特殊技術(スキル)で刀〈虎徹(こてつ)〉を現出させることができる。

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