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第2話 三光鮮魚店

 まきがはら商店街は駅から車で20分ほどの住宅と田んぼに囲まれた郊外に並んでいる。商店街の通りはいつもガラガラ。なのにこの13件だけが静かにたたずんでいる。

そう佇んでいる という言葉が合うように 

いや 見る人によっては蜃気楼に見えるかもしれない


 まだ夜中の3時 

「じゃあ 行ってくるよ」

と店主の光雄が太い枯声で店の木戸を開けた。

「あんた 今日は風がつよいから やめといたら」

と妻の栄子が布団の中から心配そうに声を掛ける。 

「いいや 今日は漁に行かなくちゃ 割烹の注文があるからね」


三光鮮魚店の若い主人 漁師の顔をもつ腕の良い魚屋さん 

三光の主人がさばく切り身は舌触りがたまらない と評判だ

もっと大きな町に店を出せば良いのにと思うが、本人はこの商店街が好きでたまらないらしい。


 「あーやっぱり海が荒れてるなー どうしても生きのよいタイが欲しい」

お世話になっている割烹で祝い事の大切な客があるらしい。 

「三光さん 今日はきいつけていけや」

漁師なかまの爺さんが心配で声をかけた。

「ああ じっさん このぐらいは大丈夫だ」

光雄は普段より大きく揺られる船上でエンジンをかけた。


 漁港横のテトラポット上、いかにも私がこの漁港のボスという感じで陣とる黒猫と周りには5,6匹の猫がたむろしている。 

 そこにやせ細り、片目が潰れたキジトラ猫が近づいてきた。

気が付いた黒猫ボス “ふー“とうめきしっぽを立て威嚇した。

「なんだおみゃー」

 しかしそのキジトラ猫 それを無視して、テトラポットにあった魚をがぶがぶっと食い始めた。 

「こここここいつ 勝手に何るすだにゃ」

でもボス猫もそのキジトラが尋常ではないことに気が付き、強気の鳴き声は出すが近づけない。 

「なんだい おまえさん 食われちまうじゃないかよ

とメスの三毛が目を釣り上げながらボス猫を責める。

「オーおー 分てるわい  おめーらはあぶねえからあっちにいってな

雌猫にせかされるボス猫、そろそろっと近づいていく。  

「おおおおおい それはおれっちのなんだよ ててててめー何勝手に」

と言いかけたとき、キジトラ猫の片目がぎょろっと睨んだ! 

「ひひひひえー」 

ボス猫 もうそれだけでひるんでしまった。 

その時だ、今日は荒れた海 大きな波が二匹の猫を襲った。 

ギャー 二匹の猫はあっという間に波にさらわれてしまった。 

「ひゃーおれは泳げねんだよー 助けてくれー ぶくぶくぶくぶく」

ボスの黒猫が波の間に沈んで行った。



バチ! バチ! バチ! 

「おい 起きやがれ!」

と先ほどのキジトラ猫が溺れたボス猫を叩きながら介抱している。  

「ひゃーワーワー 俺はたすかったのか」

とボス猫は目を白黒させながら濡れてか細く見える体を震わせている。  

「チ! だらしねえな  おい 海辺のボスなら泳ぎぐらい覚えろや! なあ 今回は餌代代わりに助けってやったよ まったくよー」 

と、」キジトラ猫がドスの効いた太い声で言った。

「ああああ ありがとう ございます」

「へん 礼などいらんわ  じゃあな あばよ」

颯爽と走り出したキジトラ猫 ポーンとテトラポットに飛び移ったかとおもったら足を滑らせ 海にどぼーん 

「ありゃー 流されるー ・・・・・・・・」    


「ボス!」 

「あんたー 大丈夫だったニャー」   

寝ぐらに戻ってきたボス黒猫に

「オーーオー大したことねいや あんな痩せキジトラ 海に投げ落としてやったよ ははははははは・・・」

「オーやっぱり 俺らのボスだぜ なああ」



 その頃、海上にぷかぷかと腹を上に漂うキジトラ猫

「イヤーまいたった また海に流されちまったーこのままじゃ沖に出ちゃうなーどうすっかなー」

と慌てる風でも無くただただ漂って周りを見回していた。


ぽ ぽ ぽ ぽ ・・・・・

漁船の上でしかめっ面の三光水産の光雄 

「うーん このままじゃ帰れねー」

荒れてるとはいえ、どうにか一匹でもタイが欲しいと荒れる釣り糸を見つめていた。   


「あーなんだ ありゃー  なんだンんだ ウミネコかよー」

100メートルほど向こうから猫がこっちに向かって泳いでくる いや 泳いでいというより何かに乗って向かってくる。

「なんだ  よーし 今助けてやるぞ」 

と 網を出しその猫をええーい!引き上げた。

「うー重いーおりゃー!」      

どさ!ドさ! と二つの物体が船に挙げられた。 

「ありゃまー お前 でっけえタイに乗ってたのかい わはははは  猫と一緒に タイまで連れたー  すげーなお前」

光雄は歓喜と驚きで叫び声をあげビショビショのキジトラ猫を天高く持ち上げた。

「おおー大漁にゃんこー 福の猫〜!」   

と 嘘みたいな話で 魚屋の兄ちゃん そのキジトラにゃんこを連れ帰りましたとさ。


にゃにゃにゃにゃ これでうまい餌には困らないぜ にゃははははははは

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