05味方
フォンテーヌ侯爵とヘンリーが書斎で話し合いを続けていると、突如として館全体が揺れ、強烈な魔力の波動が二人を襲った。
「これは...!」
侯爵が驚愕の表情を浮かべる。
「エリザベスの魔力です!」
ヘンリーが叫んだ。
二人は即座に立ち上がり、エリザベスの部屋へと急いだ。廊下を駆け抜ける途中、侍女たちが混乱した様子で右往左往していた。
エリザベスの部屋の前に到着すると、ドアの周囲に不気味な紫色の光が漂っていた。侯爵が恐る恐るドアノブに手をかけると、まるで電流に触れたかのように痺れを感じた。
「エリザベス!大丈夫か!?」
侯爵が叫ぶ。しかし、返事はない。
ヘンリーが決意を固めた表情で一歩前に出る。
「父上、下がってください」
彼は魔力を纏った拳でドアを打ち砕いた。中から溢れ出す魔力の波動に、二人は思わず目を細める。
霧が晴れるように視界が開けると、そこにはエリザベスの姿があった。しかし、彼女の周りには見たこともない光景が広がっていた。
足元には深い穴が開き、複雑な通路が幾重にも連なっている。エリザベスは穴の縁に立ち、下を見下ろしていた。
「エリザベス...これは一体...」
侯爵が絶句する。
エリザベスがゆっくりと振り返る。その瞳には、今までに見たことのない強い意志の光が宿っていた。
「お父様、お兄様」
彼女の声は落ち着いていた。
「私に素晴らしい力が宿りました」
「どういうことだ?」
「これは...私のダンジョンです」
侯爵とヘンリーは言葉を失った。エリザベスは再び穴を覗き込む。
「私はもう、誰にも屈しません。王太子にも、男爵令嬢にも...」
彼女の声には決意が滲んでいた。
「待ちなさい、エリザベス。何をするつもりだ?」
「心配しないでください。私は正しいことをするだけです」
侯爵が静かに声をかける。
「エリザベス、私はいつだってお前の味方だ。―-それにつらい思いをさせてしまった責任もある。だから私にも一緒に考えさせてくれないか」
「そうだ、妹よ。我々も君の味方だ」
エリザベスは深く息を吐き、穴から少し離れた。
「わかりました。お二人に説明します」
彼女は父と兄に向き直り、ダンジョンの力と自身の決意について語り始めた。三人の間で真剣な議論が交わされる中、新たな家族の絆が形成されていくのだった。