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03記憶

エリザベスは水晶の間から自室に戻り、柔らかなベッドに身を沈めた。ダンジョンの冷たい空気から解放され、彼女の体は徐々に温まっていく。しかし、その心は依然として冷たいままだった。


彼女は天井を見つめながら、あの瞬間を思い返した。足元に深淵が広がり、ダンジョンが出現した瞬間。そして、それと同時に彼女の中で何かが目覚めたのだ。


「前世の記憶...」


エリザベスは小さくつぶやいた。突如として蘇った記憶の断片が、彼女の頭の中で渦を巻いている。前世では、彼女は大人の女性だった。そして、この世界とは全く異なる現代社会で生きていた。


「ああ、そうか。だからこそ、私はこんなにも冷静でいられるのね」


彼女は自嘲気味に笑った。前世の経験が、今の彼女の判断力と冷静さを支えているのだろう。幼い頃からの婚約者に裏切られ、親友だと思っていた相手に裏切られた。そんな状況で、普通の17歳の少女なら、きっと取り乱してしまうはずだ。


しかし、エリザベスは違った。彼女の中には、大人の女性としての経験と知恵が宿っている。それが、この状況を冷静に分析し、最適な復讐の方法を考える力を与えてくれているのだ。


「前世では...そうね、平凡な会社員だったわ」


彼女は目を閉じ、前世の記憶を整理していく。特別な能力も才能もない、ごく普通の人生だった。しかし、その平凡な日々の中で培った経験や知識が、今の彼女を支えている。


「面白いわね。前世では平凡だった私が、この世界では侯爵令嬢で、しかもダンジョンマスター…いや、元悪役令嬢かもしれないわ」


エリザベスは微笑んだ。運命の皮肉とも言えるこの状況に、彼女は奇妙な面白さを感じていた。()()()()()()()()()()()が、あの男爵令嬢から見たら私はきっと悪役に映っていたことだろう。


「ダンジョンマスターとしての力...現世で学んだ知識、そして前世の知恵。これらを組み合わせれば、きっと面白いことができるはず」


瞳を閉じて思案する。その横顔は、真剣そのもので彼女の造形美を際立てていた。

―――どれほどの時間が経っただろうか。エリザベスは魔力の気配を感じてふと目を開く。


「まあ!」


その表情はまるで新しい玩具を手にした少女のようだった。

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