00絶望
薄暗い部屋の中、エリザベス・フォンテーヌは窓辺に佇んでいた。華やかな宮廷生活とは対照的な、静寂に包まれた空間。彼女の瞳には、もはや光が宿っていなかった。
「なぜ...」
か細い声が、重苦しい空気を切り裂く。
つい先ほどまで、エリザベスは幸せの絶頂にいた。侯爵家の令嬢として生まれ、王太子殿下との婚約が幼少期から決まり、未来は輝かしいものに思えた。しかし、それはあまりにも脆くも崩れ去った。
「理由さえ...まともに説明してくれれば...」
王太子殿下からの一方的な婚約破棄。その背後には、かつて友人だと思っていた男爵令嬢の影があった。嫉妬と策略が彼女の人生を狂わせたのだ。
突如、エリザベスの体から不思議な光が溢れ出す。それは彼女の絶望と怒りが具現化したかのようだった。光は部屋中に広がり、やがて床が崩れ落ちる。
「これは...」
エリザベスの足元に、深淵が広がっていく。それは単なる穴ではなく、複雑な通路と部屋からなる迷宮——ダンジョンだった。
彼女の中で何かが目覚める。これが運命の悪戯か、それとも神の恵みか。エリザベスの瞳に、再び光が宿った。
「ふふ...面白い」
薄く笑みを浮かべる彼女。もはやそこには、か弱い貴族令嬢の姿はない。
「待っていなさい。あなたたちに、この屈辱の代償を払ってもらうわ」
ダンジョンマスターとなったエリザベス。彼女の復讐劇は、ここから始まるのだった。